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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦中篇 その13

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 俺と共にアンデッドの魔改造に励むネロ。
 かつては裸ローブとかそんな無頓着な格好だったが、それもだいぶ改善している。

 ……はずだ、うん、きっとそう。
 たとえ某有名RPGでいうところの、あぶないとかきわどいが付きそうな水着っぽい服の上に、ローブを纏っているだけでも。


「どうした、メルス。そのように吾を舐め回すような視線で眺めて」

「そんな覚えはないが……おい、くっつくな当てるな」

「ふっ、体は正直……おい、何も反応していないではないか」

「そういうことは夢幻の中だけにしておくんだな。それより、魔障の方を辺りに撒き散らしておいてくれ」


 そう伝えると、渋々ながら周辺に負の魔力である瘴気をバラ撒いてくれる。
 その際、瞳は緑色の焔を燈す……もともと彼女は、魔骨スケルトンの魔王(無性)だからな。

 そんな瘴気だが、アンデッドたちに触れると勝手に能力値を向上させてくれる。
 故に不死者は瘴気を好み、瘴気の中で活動するわけだな。

 俺も今は礼装でネロの力をあやかっているので、能力値に補正が入っている。
 闇系のスキルにも補正が入るので、魔法も少し使いやすい。


「もう少し増やすか──“中位死霊創造クリエイト・ゴースト”、“中位魂魄創造クリエイト・ソウル”」


 死霊魔法に属する魔法で、位階が四から六のアンデッドを創ることができる。
 具体的には──『霊動器リビングウェポン』や『首無霊デュラハン』など、それなりに有名なヤツだ。


「ネロ、ついでにあれもやってくれ」

「うむ──“死霊空間”」


 ネロの一言で町に広がる禍々しいオーラ。
 瘴気で強化されていたアンデッドたちが、さらに膨大なエネルギーを宿していく。

 彼女のレベルに応じて強くなる結界、それは魔法よりもさらに強力な効果を発揮する。
 なぜならば、種族と職業の両方が魔に属する王の能力なのだから。


「まあ、これぐらいでいいか」

「しかし、吾が去れば停まる仕掛け。それでも使うのか?」

「ネロが居る間、頼もしくなるんだからいいだろう? それに、新しいシステムで人を増やそうとしていたから、それなりに数が必要だと感じた。戦力は多くて強い方が頼もしいからな、お前に任せたんだ」

「ふむ……この町周辺のみ、をか?」


 ネロにはそこだけを限定して、守ってもらうことになっている。
 そこに都市を囲う壁があるのだから、当然と言えば当然だが。

 今回協力してもらう眷属は四人。
 なのでこれまでとは少し毛色を変え、一生・・懸命ならぬ一所・・懸命してもらうことにした。


「頼りにしているんだぞ。あと、単純に同じ場所をやろうとすると必ず揉める」

「討伐数を競う、などとメルスが言うからではないのか? 無論、吾が優勝するのだから争う必要などないのだが」

「凄い自信だな……まあ、都市まで届かせないならそれでもいいけど。あくまで町に入ろうとした個体だけだからな、それ以上をやってもカウントしないぞ」

「分かっている。それではあまりに他の者が不憫だからな。この軍勢、メルスも協力しているのだ。吾が敗北するはずなかろう!」


 人はそれをフラグと言う。
 ネロもそれは理解しているのか、ハッとそのことに気づきやや台詞を修正しだす。


「……まあ、決して油断はせぬ。褒美が褒美だ、別に本気を出しても構わぬのだろう?」

「それも……別にいいか。ああ、魔物を殲滅してくれさえすれば、それ以上に何かを問うことはない。あと、関係者じゃない祈念者が来たら一時間だけ好きにしていいぞ。それ以上は怪しまれるからな」

「ほ、本当か!? やはり神の創った器と言うだけあって、サンプルはいくらあっても足らんのだ! ぜひとも、奥の者たちにも残してくれるようとりなしてくれ!」

「成績を譲るならいいって言ってくれるかもしれないな。祈念者に関しては……俺も、調べたいことがあるし」


 知りたいのは[メニュー]などの権能。
 俺はコンソール越しに使うことしか今ではできないが、祈念者たちはどういった原理でそれを実行しているのか。

 親しい者では試すことのできない、多少禁忌に触れようと調べておきたい事象。
 それを知っておくのか知らないかでは、対処にも差が生まれてくる。

 ──だからこそ実行する、そのための犠牲ならば死んでも死なない祈念者はうってつけの素体サンプルでしかない。


「前向きにはなれないが、ずいぶんと思考に関してはブラックに染まったよ」

「メルスよ、それはたしかに善ではない。だが、同時に悪でもない。吾らが究明者として真実を追い求めるのみ。そこにあるのは、それらでは問うことのできない叡智への挑戦」

「そのためならば、何をしてもいいと?」

「吾はそう考えていた。が、メルスは違うのであろう? 決して超えてはいけぬ一線、そこを意識するのだ。そして消せ、そこに残らぬものはすべて吾らが道に不要なもの」


 よく分からないが、ネロなりに励ましてくれているのだろう。
 ちなみに俺の脳内イメージでは、消そうとしても消えない者が多かった。


「全然消えないんだが」

「ならば、それがメルスにとって必要なモノなのだろう。吾の場合、そこには輝かしい魂魄の光があったな」

「今度、他の眷属にも試してみようかな?」


 力無き者に守ることなどできない、そんな言葉がある。
 要は切り捨てや割り切りを促すという話だが……今の俺なら、しなくてもいい。

 それを確信にするためにも、やらなければならないことはたくさんある。
 共に眷属と在り続けるため、消えたモノには犠牲になってもらおうか。


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