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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦中篇 その12
しおりを挟む話し合うことも無くなり、【暗殺王】である彼女には一度退散してもらうことに。
いつまでもここに留まっていても、特にやることなど……まあ、レベリングぐらいしかやることなどないわけだし。
「それじゃあ、あとは自由だ。同盟相手への依頼を受けないなら、好きにしてくれて構わない。あっ、お土産は要るか?」
《わかりました……それと、いただきます》
まだまだ余っていたマカロンを渡し、再び外へ送りだす。
意外と気に入ってくれたみたいだし、作った甲斐があるというものだ。
職業スキルを使い、気配を完全に消し去りこの場を去る少女。
その気配を掴むことはできないし、見ていたはずなのに認識することもできない。
そういうスキルだからな。
スキルを全部使える状態ならまだしも、縛り中となると……それでも見抜けるようになるのが、これからの目標の一つだ。
「──さて、御客人もいなくなった。そろそろ始めるとしよう」
礼装に意識を集中させ、力を借り受けるための準備を行う。
そして、詠う──
「邪に堕ちし骨の王。呪と詛を以って、死の理を司る。屍の傀儡を操る者よ、彷徨う魂を導け。数多の骸を従え、我が道を阻む生者へ悪夢を齎せ──“骨王魂魄”」
死者の手が俺を抱擁し、衣装のデザインと化していく。
禍々しくも、引き寄せられる……歪な美を漂わせる。
「来い──“死体作製”」
魂魄から力を引き出すことで操ることができるのは、詠唱通り死の理。
この地で死んでいった魔物たち、そこに施されたこの魔法は死体を生みだしていく。
積み重ねられた死体の数は膨大、それらがすべて再び蘇る。
まあ、それらすべてが俺の味方になるわけではない……そういうスキルを持ってない。
「けど、こっちには頼もしい死者の王様が居るから問題なし。俺がやらないなら誰かがやる、だからそっちにお任せだ」
場所を移動し、再び都市の外。
土属性魔法で建てたもう一つの町並みは、現在死者たちで溢れている。
そんな中、人肌を持つ女が手腕を振るう。
彼女の指示するがままに、死者たちは動き配置に就く。
彼女こそがネロ、元は死者の王にして魂魄の探究者。
それ故に俺と契約し、その身のすべてを捧げた……まあ、魂魄バカである。
「むっ、メルス……もう来たのか。先の起こし、なかなか見事だったぞ」
「ネロ、お前の方でもやっていたのか。それで、どれくらいできている?」
「メルスたちの殺した魔物の数が多かったのでな。肉体、霊体、魂魄体の三つに分けて不死族へバランスよく変えておいたぞ。それでもそれぞれ、千を超える軍勢を生みだせた」
「……うわぁ、凄い数が居るな」
都市の外まで目を凝らせば、そこには遺志亡き(誤字に非ず)アンデッドたちが大量に並んでいた。
術者の技量によって弱体化することの多いアンデッドへの加工だが、熟練者であるネロだからこそ最低限に抑えられている。
とはいえ、最初から現在に至るまでの魔物の中には弱かった魔物も含まれていた。
そういった個体に関しては、あまり戦力には入れられない。
なので、別の策を考えておく。
「贄にするか──“死改糧工”」
魔法を発動した途端、俺が戦闘に耐えられないと考えていた魔物が粒子になる。
それらはすべて俺の下に集い、体内へ取り込まれていく。
脳内ではこの魔法専用のポイントが加算され、それを消費することで何ができるのかを鮮明に理解させられる。
「ネロ、少し弄らせてもらうぞ」
「吾にはそういった才が無い。なので、その辺りはメルスに任せよう」
ネロに才が無いわけではない……ないのだが、これまでに作ったアンデッドがだいたいそのままの利用でしかなかった。
あくまで魂魄について調べるのが目的なのであって、アンデッドの使役を主にしていたわけではないのだから、わざわざ工夫せずとも本人が動けば死体は用意できたからな。
「じゃあ、やってみるか」
今回の“死改糧工”で行えるのは──アンデッドの強化や進化、そして複数体の融合など……ただし、かなり膨大な量を消費する。
位階が高ければ高いほど、ポイントは還元や使用時に多く表示されるのだ。
今回の場合、数は多いがほとんどが位階の低めなアンデッド……あまり稼げていない。
「ここで錬金術の“生体錬成”を使って、別のパーツをくっつけます」
「なるほど……するとどうなるのだ?」
「可動部が増える。ただ、いきなり使える部分が増えて、あっさりと使いこなせるはずがない。それを可能にするのは、膨大な時間か強化による魂魄の学習能力の向上。魔法とかの補助が無いならどっちか二つが必要だ」
「……こうも奥が深かったのだな」
子供たちに見せることもできないという理由もあり、ネロとのアンデッド談義は理論や目に優しいものばかりで、こういった魔改造みたいな実験をやったことはなかった。
が、今回。
意外と国民たちにも馴染んでいるネロの願いということもあり、このような場を設けてみることに。
だいぶやっていることは違うが、これもまた生産の一種。
というか、『死霊使い』みたいな感じで俺もテンションが上がっている。
──その結果生まれたアンデッドが、とんでもなくなるのだが……それはまた別の話。
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