ＡｌｌＦｒｅｅＯｎｌｉｎｅ〜才能は凡人な最強プレイヤーが、ＶＲＭＭＯで偽善者を自称します

偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦中篇 その08

　とまあ、そんなわけで滞在することを決めた俺とリッカ。
　彼女に関しては時間が来れば、他の眷属と交代することになるだろうけど。


「…………」

「この地の主自ら監視か、殊勝なことだ。わざわざせずとも、例のクリスタルを使えばそれでよかろうに」

「何かあったときに対処できない」

「なるほど、信じきれないのであればそれも仕方ない。こちらも接客をしに来たわけでもない、わざわざ貴様を懐柔する気も無いから構わぬよ」


　時間があったので、少年の固有スキルの摸倣は完了している。
　ハーレム系『主人公候補』のフレイ君のモノとは違い、ずいぶんと使いやすかった。

　──【廸虹盛土】、七大属性を土や石に付与することができる能力だ。

　これを使って彼は、自分の人形や傀児たちに属性を付与していたらしい。
　あとは魔力を適当に、外へ放出できるようにすれば……魔法っぽくなるわけだ。


「だが、使い方がつまらんな。貴様のその力は、己のためにしか使えぬのか？」

「…………」

「金属に属性を与えることができるのであれば、それは希少な金属となろう。それを生みだすだけでも、技術的にも金銭的にもこの地の者たちのためとなる」

「……もうやってる」


　属性武具が祈念者の手に行き渡っているのは、ここで作られているからかな？
　お蔭で路地裏で商人プレイをしていても、属性武具が注目されなかったわけだ。


「ふむ……まだ足りぬな」

「……え？」

「創作物でも定番であろう？　付与とは段階的に行えるもの、貴様の場合は素材の段階から付与を行える。素材、加工、完成。この三つで異なる属性を付与できるのであれば、より強大な力を得ることができるだろう」

「三つ……二つじゃなくて？」


　二つは知っていたみたいだ。
　だからこそ、それよりも上があることを知り少しだけ態度が軟化した。


「問題は魔力量……であるな。貴様は魔力を扱える狐獣人とはいえ、生産に干渉する分の魔力が足りていない。これまで二種の属性を籠めた武具が、世に出ていないのはそれが原因ではないか？」

「な、なんで……」

「なぜ分かるか、当然の疑問だ。答えは単純だ──我が鍛冶師でもあるからだ」


　取りだすのは神鉄鉱の小槌オリハルコンハンマー。
　鍛冶用のそれを見せると、少年は訝しむようにこちらを魔力の籠もった目かんていスキルで視てくる。


「無職……」

「腕で証明するのが一番だが、そこの工場こうばを使わせてはもらえぬか？」

「…………」


　無言ではあるが、傀児たちを使って鍛冶場の火を付けてくれる。
　そういうヤツなのか、と独りで納得しながら準備を行う。


「貴様の能力、おそらくは籠められる属性に限度があるのだろう？　最後にこの地を守護した人形には、複数の属性が籠められていたのが何よりの証拠。肯定せずとも良いが、おそらく己の魔力であれば無制限だろう？」

「うん、合ってる」

「この辺りはバレても困らぬ部分だな。他の者に行うのであれば、抵抗やらさまざまな要因から付与できる属性にも制限が……いや、違うな。ならばわざわざ限定をしなくてもよいのか……」

「────」


　スキル名を知っている俺には、ある種ネタバレ情報がある。
　説明文もあるので、答えは最初から分かっているのが……まあ、知ったかぶろう。


「土属性に属する触媒に限り、貴様は属性を付与できるのであろう？　そこに内包された魔力量によって、付与できる属性に制限があるという枷を背負って」

「！」

「当たりか……さて、そろそろ炉も温まった頃だ。始めるとしようか」


　生産神の加護は機能していないし、鍛冶系のスキルも使用不可能。
　それでも鍛冶に自信があるのは、ある程度スキル無しでも作れるよう技を磨いていた。

　作るのはシンプルに銅の剣。
　初心者が経験値稼ぎにやるような作業だからこそ、その者の技量が問われる。

　……なんてことを考えて何度も何度も補助付きでやり続けていた結果、称号の補正が働くので高品質の剣が打てるようになった。


「品質がＳ……こんなすぐに？　ドム爺……里長さんでも、もっとじっくりやるのに」

「視ての通り、スキルも加護も無くとも技だけでこれぐらいはできる。魔王といっても、その存在は千差万別だからな」

「す、凄い……」


　設備がきちんと管理されていたのが、最高品質にできた主な理由ではあるが。
　何より、使っている槌に付けてあるスキルが便利なのが一番の理由だな。


「というわけでだ。貴様に鍛冶の技術を伝授してやろうではないか」

「……えっ、なんで？」

「先ほどの話の続きだ。三つの段階で貴様の能力を使えば、それなりに役立つ物が作れるだろう。我はそれを見てみたい、貴様はそれに協力する……悪い話では無かろう？」


　鍛冶スキルは持っていないとのこと。
　そのことは訊きだしていたが、俺の面白いことを追及するためにはぜひとも武器を打てるぐらいには成長してもらいたい。


「何より、貴様にはこれを受けるメリットがある。それを聞けば、すぐに受けるということになる」

「め、メリット？」

「──暇だろ、この時間」

「……うん」


　ただ待って、魔物を処理するだけの単純な作業……そこに面白さを見出せるのは、一種の才能を持っているだろう。

　少年はそれを持っていなかったようで……コクリと頷き、それを了承するのだった。