1,506 / 2,518
偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦前篇 その18
しおりを挟む祈念者の権能は、運営神が創った肉体に依存して発動する。
なので、俺という存在も『挑む者の指輪』が無ければ使うことができない。
今の俺は、祈念者であり祈念者ではない。
だからこそ、一部の権能を使えはするけれど正規の使用者では無くなっていた。
権能は運営神、運営によって管理されているのだ……その気になれば開示されてしまう情報が、洩れるかもしれない可能性がある。
「──というわけだったんだ」
「どうにかできない……?」
「全部、リオン任せだからな。というか、関わりたくない部分だし。視覚情報は比較的安全らしいから、文章で届けた。直接会うほど時間も無いからな」
運営は基本、干渉してこないので気にする必要は無い。
問題は運営神……終焉の島組への干渉から察するに、別大陸だと動いているようだし。
帝国でも一柱、暗躍している。
リオンの友人(神)である一柱を除き、すべての運営神に存在がバレるのは危険だ。
という事情もあり、書状である。
これでもかとアイテムとしての情報は偽装してあるし、問題ないはずだ。
「リラ、これからどうする? 一度帰って休みにしてくれてもいいけど」
「参加を希望する……」
「まあ、そう言うとは思っていたけどさ。美術館、最初に居た場所に休憩所を用意してあるから、そこで休んでいてくれ。貢献するにも、万全な状態の方がいいから」
「分かった……」
リラは都市へ戻り、クリスタルの鎮座する美術館モドキに帰還する。
俺もそうしようか……と思ったそのとき、遠くの方で祈念者の反応を察知した。
「あー、もう来てくれたのか。アイツだけだと思ったんだけどな」
自分で撒いた種なので、処理……というか責任は持たねばなるまい。
頑張って走ってくる二刀流の剣士、彼のためにもご褒美くらいは用意してやらないと。
◆ □ ◆ □ ◆
息切れをしながら、用意したポーションを摂取して体を癒させておく。
……ロールがずいぶんと忘れられているものの、ナースと良い戦いをした男だし。
「ぜひゅー、こひゅー……な、なんなんだよあの魔物のレベルは!?」
「実は、『無限砲台』がここに来ててな。偶発レイドの方でやらかした結果、尋常じゃないレベルで魔物の強さが上がった」
「マジかよ……前に一度見たけど、そんなに強いんだな」
「お前の魔剣、両方とも意味ないからな。半端ない魔力と複合属性、どんだけ吸収しても相殺しきれないレベルの腕だし」
こいつ──リヴェルの固有スキルで増幅しようと、それ以上の火力でぶっ放してくるのだからどうしようもない。
アルカという存在は、個の力で挑むにはあまりにも強大になりすぎていた。
それでも疎まれずにいるのは、おそらく彼女の人徳ゆえだろうな……俺の扱い以外は。
「で、調べてほしかった情報はどうだ?」
「おおっ、そうだった。どうせアイツが一番乗りで来ただろうし、目立つ情報は言ってあるだろうから、小ネタ扱いされていた情報をできる限り集めておいた」
「ふんふん、詳しく」
「聞いて驚けよ──」
以降、説明が続く。
その例を挙げるとすれば、普段入れない場所に入れるかと試した結果……やっぱりダメだという話が多く上がったらしい。
しかし、特定の条件を満たしさえすればそういう場所にも上がり込めるんだとか。
「で、始まりの町だと地下から魔物たちが溢れだしてな。それで地下迷宮の存在が明らかになったらしい」
「……遅かったな、割と」
「……知ってたのかよ」
「お前ら風に言うと、あそこの関係者の好感度を稼ぐと入れるようになる。ただ、下に行くと普通じゃ勝てない……いわゆるクリア後に入った方がいいエクストラステージみたいな場所だぞ」
そこを管理して、町に被害が及ばないようにしているのが『ボス』たちこと一家だ。
ただならぬ事情もあるようだが、そこら辺はまだ訊けていない。
「中はどんな感じか、そういう情報は?」
「延々と続く地下迷宮らしいが……何か問題でもあったのか?」
「前にレイドボスと戦えるってイベントをしてただろう? たぶん、あそこのどこかに全部眠っているぞ」
「……貴様、本当になんでも知ってるな」
そういう場所なんだとか。
迷宮とは一種の別世界、だからそんな無茶なことができる。
リオンは発狂しそうだが、リソースをふんだんに使えば迷宮の機能を拡張してイベントエリアぐらいなら格納可能だ。
俺が入ったときは見つけられなかったが、そういう歪な場所があるということだけは、中に入ったボスの配下から確認済みである。
「……クソ運営神どもめ。というかそこまで解放しやがったのかよ」
「なんか今、言ったか?」
「クソ運営(神)どもめ。あの迷宮を解放しやがってと言っただけだが?」
「……せっかく知らないふりをしてやったんだから。気のせいとか、なんでもないとかを求めていたんだよ、おれは」
気遣いのできる男だったリヴェルだが、隠すようなことでもなかったので言っておく。
ちなみにその迷宮、最終階層には絶対に行かないでくれとボスも言ってたな。
人はそういうの、フラグっていうんだよ。
もし、誰かがそこに辿り着いたら……何が起こるのだろう。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる