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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦前篇 その18

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 祈念者の権能は、運営神が創った肉体に依存して発動する。
 なので、俺という存在も『挑む者の指輪』が無ければ使うことができない。

 今の俺は、祈念者であり祈念者ではない。
 だからこそ、一部の権能を使えはするけれど正規の使用者では無くなっていた。

 権能は運営神、運営によって管理されているのだ……その気になれば開示されてしまう情報が、洩れるかもしれない可能性がある。


「──というわけだったんだ」

「どうにかできない……?」

「全部、リオン任せだからな。というか、関わりたくない部分だし。視覚情報は比較的安全らしいから、文章で届けた。直接会うほど時間も無いからな」


 運営は基本、干渉してこないので気にする必要は無い。
 問題は運営神……終焉の島組への干渉から察するに、別大陸だと動いているようだし。

 帝国でも一柱、暗躍している。
 リオンの友人(神)である一柱を除き、すべての運営神に存在がバレるのは危険だ。

 という事情もあり、書状である。
 これでもかとアイテムとしての情報は偽装してあるし、問題ないはずだ。


「リラ、これからどうする? 一度帰って休みにしてくれてもいいけど」

「参加を希望する……」

「まあ、そう言うとは思っていたけどさ。美術館、最初に居た場所に休憩所を用意してあるから、そこで休んでいてくれ。貢献するにも、万全な状態の方がいいから」

「分かった……」


 リラは都市へ戻り、クリスタルの鎮座する美術館モドキに帰還する。
 俺もそうしようか……と思ったそのとき、遠くの方で祈念者の反応を察知した。


「あー、もう来てくれたのか。アイツだけだと思ったんだけどな」


 自分で撒いた種なので、処理……というか責任は持たねばなるまい。
 頑張って走ってくる二刀流の剣士、彼のためにもご褒美くらいは用意してやらないと。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 息切れをしながら、用意したポーションを摂取して体を癒させておく。
 ……ロールがずいぶんと忘れられているものの、ナースと良い戦いをした男だし。


「ぜひゅー、こひゅー……な、なんなんだよあの魔物のレベルは!?」

「実は、『無限砲台』がここに来ててな。偶発レイドの方でやらかした結果、尋常じゃないレベルで魔物の強さが上がった」

「マジかよ……前に一度見たけど、そんなに強いんだな」

「お前の魔剣、両方とも意味ないからな。半端ない魔力と複合属性、どんだけ吸収しても相殺しきれないレベルの腕だし」


 こいつ──リヴェルの固有スキルで増幅しようと、それ以上の火力でぶっ放してくるのだからどうしようもない。

 アルカという存在は、個の力で挑むにはあまりにも強大になりすぎていた。
 それでも疎まれずにいるのは、おそらく彼女の人徳ゆえだろうな……俺の扱い以外は。


「で、調べてほしかった情報はどうだ?」

「おおっ、そうだった。どうせアイツが一番乗りで来ただろうし、目立つ情報は言ってあるだろうから、小ネタ扱いされていた情報をできる限り集めておいた」

「ふんふん、詳しく」

「聞いて驚けよ──」


 以降、説明が続く。
 その例を挙げるとすれば、普段入れない場所に入れるかと試した結果……やっぱりダメだという話が多く上がったらしい。

 しかし、特定の条件を満たしさえすればそういう場所にも上がり込めるんだとか。


「で、始まりの町だと地下から魔物たちが溢れだしてな。それで地下迷宮ダンジョンの存在が明らかになったらしい」

「……遅かったな、割と」

「……知ってたのかよ」

「お前ら風に言うと、あそこの関係者の好感度を稼ぐと入れるようになる。ただ、下に行くと普通じゃ勝てない……いわゆるクリア後に入った方がいいエクストラステージみたいな場所だぞ」


 そこを管理して、町に被害が及ばないようにしているのが『ボス』たちこと一家だ。
 ただならぬ事情もあるようだが、そこら辺はまだ訊けていない。


「中はどんな感じか、そういう情報は?」

「延々と続く地下迷宮らしいが……何か問題でもあったのか?」

「前にレイドボスと戦えるってイベントをしてただろう? たぶん、あそこのどこかに全部眠っているぞ」

「……貴様、本当になんでも知ってるな」


 そういう場所なんだとか。
 迷宮とは一種の別世界、だからそんな無茶なことができる。

 リオンは発狂しそうだが、リソースをふんだんに使えば迷宮の機能を拡張してイベントエリアぐらいなら格納可能だ。

 俺が入ったときは見つけられなかったが、そういう歪な場所があるということだけは、中に入ったボスの配下から確認済みである。


「……クソ運営神どもめ。というかそこまで解放しやがったのかよ」

「なんか今、言ったか?」

「クソ運営(神)どもめ。あの迷宮を解放しやがってと言っただけだが?」

「……せっかく知らないふりをしてやったんだから。気のせいとか、なんでもないとかを求めていたんだよ、おれは」


 気遣いのできる男だったリヴェルだが、隠すようなことでもなかったので言っておく。
 ちなみにその迷宮、最終階層には絶対に行かないでくれとボスも言ってたな。

 人はそういうの、フラグっていうんだよ。
 もし、誰かがそこに辿り着いたら……何が起こるのだろう。


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