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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦前篇 その06

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「──ん? 誰か来たみたいだな」


 クリスタルが警告するのは、都市から離れた場所に祈念者の反応があったということ。
 最低でも中に入れば分かるシステムだったので、強化したら外でも分かるように。

 同じく強化したことで遠隔操作でも分かるようになった警告を受け、とりあえず高い建物の上へ登る。

 そこから視覚を強化して、曲者がどの辺りに居るかをクリスタルの情報を基に探す……と、すぐに見つけることに成功した。


「あれは……飛んでいるな」


 翼を生やしたその物体は、勢いよくこちらへと向かっている。
 真っ黒な鎧、そして背中から生えた白と黒の羽……知っている祈念者であった。


「おーい、ペルソナー」

《あっ、メルスさん!》

「速度を落とせ! 防衛機構が働いて、面倒なことに……あっ」

《どうして……って、きゃ──》


 どうやら俺の忠告は間に合わなかったみたいで、勝手に発射されたナニカと繋がっていた念話から響く悲鳴。

 うん、魔改造の結果一定速度で突っ込んできた場合に結界が生成されるように。
 そんな自分の速度が仇となる罠によって、彼女──ペルソナはダメージを受けた。


「同じギルドだから、とりあえず解除できるみたいだ……よし、できた」

《うぅ……申し訳ありません》

「ああ、そのままにしていた俺も悪いんだ。ただなあ、最初から解除しておくと……アルカが来た時が怖いんだよ」

《ああ……》


 彼女でも、アルカがどれだけ本気で攻めて来そうなのかを予想できるようだ。
 翼を背中から消し去り、俺の隣に着地したペルソナと会話を行う。


「ほい、ポーションだぞ。今の俺は縛りで回復魔法ができないからな、これで我慢しておいてくれ」

《いえ、貰えるだけで充分です》

「しかしまあ、正直アルカが突っ込んでくると思っていたよ。ペルソナはいったい、なぜここに来たんだ?」

《えっと……伝言です?》


 なぜ疑問形なんだろう、と思うけど。
 転移が使えない今、飛行魔法を使うアルカよりも翼を生成して移動できるペルソナの方が伝言役に向いているのはたしかだ。


「伝言、誰からなんだ?」

《アルカさんはすぐに行くと、首を洗ってそこで待っているとのことです。ユウさんはどうにか粘るから逃げて、みたいなことをこっそり言っていました》

「……アイツら、本当変わらないな」


 ナックルが二人を攻城戦に巻き込んでいただろうし、ユウが抑えている。
 アルカが来るのは最低でも翌日、そこはとりあえず確定だ。

 ……しかしながら、真の敵は味方っていうのは本当なんだなー。


《ティンスさんとオブリさん、イアさんは自由に行動すると。ノロジーさんとセイラさんは『ユニーク』を手伝うそうです。そして、シャインさんは……あの……》

「訊きたくない気もするけど、仕方ないんだよな……言ってくれ」

《お呼びになってくだされば、ギルドの全軍で援軍に向かうそうです》

「一生無さそうだな。眷属からの伝言はこれで全部か?」


 クラーレとは自分で話したし、伝えたいことはすべて話しただろう。
 シャインの妄言はさておき、ペルソナは目的を果たしたわけだ。


《眷属の皆さんからの伝言は、これで全部となります。ただ……不思議な三人組から、メルスさんに伝えてほしいことがあると》

「黒い奴らか? なら、言ってくれ」

《はい、そうです。えっと……Cの3? と仰っていました》

「Cの3……了解した。なるほど、事は思った以上に面倒だってわけか」


 黒い三人組とは、もちろん彼らのこと。
 予め情報収集をするように言っておいたので、ペルソナのことも知っていて伝言をさせたのだろう。

 ちなみに『Cの3』とは、始まりの町がどのように複製されたかの報告である。
 ギルドハウスなど、祈念者の介入で創りだされた物をどう反映したか……調べたのだ。


「ちなみに一悶着とかあったのか? いちおう戦わないようにって、目印としてギルドのマークは渡してあったけど」

《はい、だから気づけました。双剣使いの方が出しました》

「アイツ、本当苦労しているな……任せているの俺だけど」

《いろいろと罵っていました。たぶん、シャインさんが相手だったら、面倒事になっていたかもしれません》


 立場の問題なので、どうにもならないな。
 雇われたヤツと(自称)下僕、そりゃあ俺への態度に差があって当然だ。

 ギルドってのは本来、そういうのも纏め上げる必要があるのかもしれない。
 俺はギルドマスターじゃないし、まったく気にしないけどな!


「そういえば忘れてた、サブリーダー就任おめでとう。やっぱりリーダーとサブリーダーには、ご褒美とかあげた方がいいのかな?」

《……あんまり強すぎる武器はちょっと》

「あははっ、そんなことを言われるなんてまだまだだったな。悪い悪い、じゃあ便利な魔道具……ぐらいならどうだ?」

《それぐらいなら……》


 魔道具であれば直接戦闘に関わらないし、ペルソナに欠けている部分を補える。

 特にそれが何というわけでもないが、あればあるで便利なモノというのはあっても損はしないだろう。


「──というわけで、これをやろう」

《……腕輪?》


 俺が渡したのは──ビーズサイズの色付き魔石が七つ付いた腕輪であった。


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