1,493 / 2,518
偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦前篇 その05
しおりを挟む≪せんゆうされたりょういきへ、まものがおくられます。これをふせげずクリスタルをはかいされたばあい、せんゆうはしっぱいされますのでごちゅういください≫
予想通りというかなんというか、攻城戦が始まってから半刻ほど経ったとき……突如アナウンスが、そんなことを告げてきた。
「メルス、なんか来た!」
「さっきまでは獣だったのに……急に種類が変わったわよ」
「そういうイベントだしな。やることもできたし、始めるか。アリィ、トランプ兵を二十体ほど門の辺りに集めてくれ。アリスは敵の詳細は可能な限り見てほしい」
「えっ? う、うん」
「分かったわ」
「準備しておいて正解だった。クリスタルが思いのほか便利でな、素材さえあれば好きなだけ攻城戦で使えるアイテムを用意できるみたいなんだ──[設置]」
ボタンを押して、都市を囲う壁の上に指定したアイテムを並べていく。
それが終わるとほぼ同じとき、アリィが派遣したトランプ兵たちが到着する。
「それって、たしか……大砲だっけ?」
「魔力式らしいがな。魔力を装填し、それを弾として放つ魔道具だ。アリィ、トランプ兵たちだけで魔力を籠められるか?」
「できるにはできるよ。ただ、トランプたちに籠めた魔力が無くなったら消えちゃうよ」
「一定距離まで近づくと再配置ができなくなるからな……増設ユニットと補給ユニットを用意しておこうか。あと、そっちに派遣できる都市の作品も送っておく」
素材を迷宮で集められ、しかも複製できるチート野郎こと俺です。
条件に合ったレア度の素材をクリスタルに入れることで、それらは用意できた。
その地に合った物が召喚できるようだが、ここだと芸術作品っぽいヤツが当て嵌まる。
何を模しているか分からないオブジェクトたちが、今は壁の上に鎮座していた。
おまけに俺が援軍に送ったのも、この都市に暮らす人々が生みだした作品たちだ。
当然、彼らの感性が生みだした作品であるので……なんだかおかしな光景になった。
「これ、あとから観た人がどう思うかな?」
「まあ、そういう未来の話は置いておこう。アリス、どうだった?」
「一回目っていうことみたいだし、そこまで強い個体は居ないわね。黒狼と同じ位階かそれ以上、ただし種類は決まっていないみたいね。魔子鬼やら人形やらお祭り騒ぎよ」
「……なら、特に新しい策は練らなくてもいいかな? というか、最初から使える仕掛け全部を使わなきゃいけないなんて、クソゲーでしかないしな──発射!」
合図に合わせ、大砲に魔力を籠めさせる。
充填が完了した時点で自動的に魔力が精練されて弾となり、外へ射出された。
ドーンと響く音を立てて飛んでいったそれは、地面に墜ちるのと同時に凄まじい衝撃を生みだして魔物たちを一掃していく。
「──ふははははっ、圧倒的ではないか我が軍は!」
「「うわー」」
「……あの、止めてくれない? 俺だって分かっているんだよ、孤軍奮闘なのにこれを言うヤツの残念さぐらい!」
「やらなきゃいいのに、それなら」
「アリィ、それが様式美ってものよ」
そんな会話をしている間にも、状況は着々とこちらに有利なように動いている。
相手は今の祈念者からすれば雑魚ばかり、そうじゃなくとも補正が有れば楽勝だ。
一日目はあくまで体験、占有した時にどうなるかを教えるためのものなのだろう。
大砲が撃ち込まれるたび、どんどん吹き飛ぶ魔物を観ながらそんなことを考える。
「アリィたち、これからどうする? だいぶ消沈していた心も落ち着いてきたし、帰りたいなら帰ってもいいけど」
「えー、その言い方はないんじゃないの? せっかく呼ばれてきてあげたんだから」
「そうよ。アリィだって、せっかく張り切って準備をしてたんだから」
「ちょ、なんで言っちゃうのアリス!?」
「そうだったのか……なんか、ごめ……じゃないや、ありがとうな──アリィ、アリス」
「ほ、褒めてほしかったわけじゃ……こ、こちらこそ、ありがとうごじゃいましゅ……」
「アリスへの気遣いもできるなんて、成長しているわね。ええ、手伝った甲斐があるわ」
顔を真っ赤にして俯くアリィと、ほんのりと赤らめながらも毅然とした表情を保つアリス……二人の性格がよく分かる反応だ。
ちょっと反省し、謝罪ではなく感謝を伝えようという考えを基に行動してみたが、どうやら正解だったみたいだな。
──さて、やる気もチャージされたし、魔物なんてさっさと屠って攻城戦の魔物侵入イベントも終わらせてやろうじゃないか。
◆ □ ◆ □ ◆
≪──いっかいめのこうじょうせんはしゅうりょうとなります。みなさん、おつかれさまでした。じかいもまた、きていのじこくにおこなわれますが、いこうはゲリラてきにまものがはっせいすることがあります≫
≪せんゆうをされたクランのかたは、しょうごでないからといってなにもしないわけにはいきません。どうめいをくんだクランのかたとともに、せんゆうしたりょういきをまもりぬいてください≫
と言ったGM06によって、イベントは再び争いではなく守りへと移行する。
ちなみに都市は防衛できたし、魔物も出てきた分は殲滅できた。
「それじゃあ、そろそろアリィは帰るよ。頑張ってね、メルス」
「ああ、ありがとう」
トランプ兵もアリスもすでに居なくなっており、アリィも帰還したため再びボッチだ。
しかし、やることもできた……次の眷属を呼びだすなら、よりよい環境にしないとな。
「生産神の加護持ちってところを見せつけないと……さて、何から始めようか」
レッツ魔改造!
しばらくは問題ないだろうと、部屋を出て都市中を駆け巡るのだった。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる