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偽善者と試されし練度 二十二月目
偽善者と自己紹介 その41
しおりを挟む夢現空間 居間
「……今さらながら、男でこれやるのお前が初なんだよな? 正確には──現在の性別が男のまま、だけれど」
「ケッ、好かれてるんだな」
「まあまあ、お前以外にもちゃんと男の眷属は居るんだぞ。頼んだ仕事が思いのほか面倒臭くて、全然帰ってこないだけで……そのうち紹介するからさ」
「おうっ、オメェに関する愚痴でも話せば盛り上がりそうだ」
気兼ねない口調で話せるのも、同性ならではのことではないだろうか?
TSダークエルフも居るが、アレはキマシの塔を築くレベルで汚せ……浄化されたし。
そんなこんなで、今回の相手とは軽い口調でこれまでのことを話したりしていた。
そして思いだした、最初の男だったという事実を言い……今に至るわけだ。
「……インタビューに入れたくないから先に訊いておくけどさ、これからなんやかんやで女性になる予定とかって無いよな?」
「んなっ、そんなもんあるわけねぇだろ!」
「でもさ、お前たしか別ルートの運命だとお婆さんを喰って化けてただろう? つまり、その気になれば女性になれるってことになるが……できるのか?」
「……その世界の俺とやらをぶん殴りてぇ」
まあ、コイツのスキルは解析してあるし、理論上はできることを把握しているけど。
問題は倫理的に、実行するのはなかなか難しいってことなんだが。
「まああれだ、喰いたいものがあったら言ってくれ。仮初でいいならどんな肉体でも用意できるし、それが姫様……じゃないや、シャルを守るためになるなら俺の肉体でも捧げてやるからさ」
「……ハッ、オメェには頼らねぇよ!」
任せて安心、の騎士様だよ。
俺なんかとは違って、常日頃から守れているのだ……ちゃんと信頼しているさ。
「じゃあ、そろそろ始めるぞ──第四十一回質問のお時間だ。今回のゲストはコイツ──インタビュー初、男のヴァーイ君だ」
「……ったく、アイツが頼まなきゃバックレても良かったんだけどよぉ」
「ありがとうございます、シャル。それじゃあ、どんどん訊いていくぞ──!」
いずれ、ちゃんとあの四人組にも質問しないといけないな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「ヴァーイ・アティエノだ」
「苗字、有ったんだな」
「うちの故郷にはあったんだよ。あとで思いだした」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「男、どこにあったか覚えてねぇ狼人族だけが住む村、何も覚えてねぇ」
「思いだしたいなら、こっちで試してみることもできるが?」
「……あのときみたいにか? もうあんな目に遭うのはごめんだ」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「獣人の特徴として、灰色の狼耳と尻尾だ。条件を満たせば銀色になる」
「問04:あなたの職業は?」
「『孤餓狼』、独りでいて腹が減ればそれだけで強くなる」
「今は使えなさそうだな。そのうち変えた方がいいんじゃないか?」
「……煩ェ」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「すぐに腹が減るからな、短気だってアイツによく言われる」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「飯を喰うことだ。あと、どういう風に喰うか考えること」
「後半について詳しく」
「喰い方を考えて、それが上手かったら気持ちイイだろうが」
「問07:座右の銘は?」
「爛腸之食、だったか? 喰べすぎるなんてことはねぇが、それぐらい喰ってみてぇって目標だ」
「……なんか違う」
「問08:自分の長所・短所は?」
「何でも喰えること、何でも喰わなければならねぇこと」
「……まっ、いろいろあったしな。そういえば、今は衝動とかあんのか?」
「オメェが時々持ってくる料理が旨すぎるからな。最近は何もねぇよ」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなことは喰べること、嫌いなことは喰べる時間を邪魔されることだな」
「問10:ストレスの解消法は?」
「そういうときは何か喰べるな」
「問11:尊敬している人は?」
「……あの犬娘、グラとか言ったか? アイツには次こそ負けねぇ」
「補足すると、大食い勝負があってグラが優勝しました」
「あぁああ! 思い出させんじゃねぇよ!」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「さっきも言ったが喰べることだ。ただ喰らうよりも、味わうことが大切だろ」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「喰うことだ。これまで散々糧にしてきたんだ、その分生きるために喰らわねぇとな」
「問14:あなたの信念は?」
「一度殺したものは、責任を持って全部喰うことだ……今はどうするか知らねぇけど」
「シャルの前以外なら、好きにしていい。そうじゃないときは……任せよう」
「問15:癖があったら教えてください」
「喰う時は『いただきます』って言うな」
「そういえば、井島でも言ってたっけ? そこの奴から学んだのか?」
「まぁな。文字通り、教わったよ」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコミだろ……お前らのせいでな」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「……なんだったかな。思いだせねぇぐらい前のこと、何か旨いものを食ったときだな」
「問18:一番困ったことは?」
「…………思いだしたくても思いだせねぇ、そういう記憶があることだ」
「だから、やりたきゃやるぞ……というか、無理やりやってもいいんだぞ?」
「お断りだっつってんだろ! 俺の記憶だ、本当に必要ならやってる!」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「飲めるには飲めるが、料理に混ぜてもらった方がイイんだよな。フランベ? とかいうヤツは最高だったぜ」
「なぜにそれをチョイスした。それ、味付けとかだからな」
「問20:自分を動物に例えると?」
「……狼だろ」
「まあ、それ一択だよな獣人って」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「……ガロウって呼ばれるの、なんでだ?」
「…………さぁな」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「あのクソ女神の言うことを聞いたことか。腹減ってたからって、あんな面倒なことを聞かなければ……こうならなかっただろぉよ」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「あれだ、人生のフルコース? みてぇなヤツを見つける!」
「……捕獲が大変だろうから、頑張れよ」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「……何かに利用されてばっかりだよな。最初はスキル、次はクソ女神、そしてオメェ。ロクなもんじゃねぇよ」
「でも、今は楽しいだろう?」
「…………チッ!」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「その全部だよ。全部で覆せば、少しはマシになるだろぉよ」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「旨い物掻き集めて喰いまくって、いちおうは抗う。それでダメなら、また集めて喰いまくるだけだ」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「……あるけど言わねぇ」
「まあ、いいか。ただ、シャルに関係することなら、ちゃんと言っておけよ」
「……言いたくなったら言うよ」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「まったくねぇ!」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「生まれ変わるなら……ねぇ。まっ、どうせならあの頃、生まれたときに【貪食】を持ってなかったらって思うことはあるな」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「喰いすぎて死にてぇ!」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「あー、姫。やっぱヤメねぇか?」
「……ん、何のことだ?」
「オメェには特に、関係ねぇことだよ!」
「問32:最後に何か一言」
「ああもう、なんか旨い物持ってこい!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はい、カット―! じゃあこれ、最近倒した犬で作った料理……ここは素直に{感情}の精神補正に感謝したな」
「なんでもいい、イタダキマス!」
「はいはい、ちゃんと食べてくれよー」
ヴァーイの悩みに関しては、最悪シャルに訊けば教えてもらえるだろう。
何を止めるのかはさっぱりだが……まあ、悪いようにはならないだろうしな。
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