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偽善者と試されし練度 二十二月目
偽善者と輪魂穢廻 その04
しおりを挟むさて、今さらながら説明しよう。
今の俺に力を貸している武具っ娘は七人。
聖武具5人、魔武具2人というアンバランスな構成だが、彼女たちに関しては反発とか反作用を気にしなくてもいい。
そして、全員が(自我ノ花)を咲かせ、覚醒しているため自律的な補助をしてくれる。
主人公に与えられそうなチートを七人分、モブでも充分に戦えている理由だ。
「──“暗黒星雲”」
星の力を借りた禁忌系拘束魔法。
黒い靄のようなものが周囲にばら撒かれ、チーの“迎撃反矢”を掻い潜ろうとする複製体たちを縛り上げる。
理論はよく分からないが、高密度の重力とかで吸い込んで捕らえているらしい。
そのため、籠める魔力量を上げると……内側から破裂する、故に禁忌となった魔法だ。
それより何より、禁忌や禁書系の魔法は制御が極めて難しい。
瞬間的に発動できているのは、武具っ娘たちが代理で演算してくれているからだ。
「沈め──“奈落虚沼”」
全然使っていない奈落魔法も、こういう時であれば使用可能になる。
深淵とも呼べるような広く深い穴がポッカリと開き、複製体たちが墜ちていく。
這い上がろうとするが、下から掛かるナニカの力に抗えないことだろう。
そして、下を見たが最後……その個体は、二度と戻ってこない。
しかし複製体は、本体である『輪魂穢廻』が健在である限り無尽蔵に生成される。
魔力切れでも尽きるだろうが、神級の相手にそれを期待するのはバカのやることだ。
「けど、それでもやるしかないってときがある──“魔喰弾丸”、“魔力弾丸:聖”!」
『……ッ!』
「行くぞ、二人とも──“聖魔共合”! からの必殺“双極”!!」
瘴気を削り、祓い清めることで表皮ぐらいには届くようにしたうえで……聖銃と魔銃を一つに束ね、聖魔銃をぶっ放す。
極太のレーザーのような一撃を叩き込み、瘴気の壁を強引に破壊する。
残された『輪魂穢廻』はこちらを睨み付けるが、俺は気にせず直進を始めた。
「グー、そろそろできたか?」
《バッチリだよ。使ってみてくれ》
「あいよ──“真理究明”、“魔法創造”」
一つ目のスキルがグーの生みだした魔法に関する情報を、一気に脳内へ押し込む。
すると白い腕輪が輝き、さまざまなスキルで補助を行いすべてを理解させてくれる。
そのうえで、二つ目のスキルを発動した。
制限によって禁忌級のものしか創れないのだが、代わりに尋常ではない魔法だろうと自在に創造可能だ。
「──“破邪瘴換”」
『──ッ!?』
近づいて発動した魔法。
それは俺の掌周辺に漂う瘴気を、問答無用で魔力に還元するというモノ。
それはつまり──相手が瘴気で動く場合、エネルギーを根こそぎ奪い去るのだ。
これまでは存在しなかった瘴気を糧としてしまう魔法、故に禁忌級として扱われた。
《うん、どうやら当たりみたいだね。前に実験用として創っていた“運参霧瘴”の術式、それを“魔力変換”の術式の一部に組み込んでみたよ。ただ、問題は射程だね……これをどうにかするのは、マスター次第だよ》
「ああ、分かっている──“万喰空間”」
それは魔銃が喰らったものを送り込む胃袋で、聖銃が弾丸を取りだす弾倉でもある。
裏技として、予めそこに弾を補充しておけばどんなものでも放つことが可能なのだ。
今回籠めるのはもちろん、“破邪瘴換”。
それを取りだして、銃弾として放つ。
「──“暴食弾丸”、“広範射撃”」
広範囲に同時に射撃を行う武技で、再び生みだされ始めた複製体や本体に弾を当てる。
先ほど同様、ただ削り取ったり浄化するよりも効果的に消滅させていく。
なので俺もさらなる猛攻を掛ける。
呼吸を整え、体内の魔力と気力の流れを調整して──武技を使う。
「夢現流武具術銃之型──“無尽暴弾”」
グラとセイの性能に依存した、二人でしか使うことのできないオリジナルの武技。
やることは先ほどの“広範射撃”や、その前に使った“乱射撃ち”とほぼ同じ。
だが、放たれる量と撃ちだされる弾丸の威力が桁違いとなっている。
これまでのそれが銃弾の雨なら、今回の武技は銃弾の嵐。
逃げる場所は失われ、本体にまで届きだした大量の銃弾。
力を根源より奪い去り、それらは俺の中へ還元させていく。
「放出っと──“双極”」
多すぎる魔力は銃に籠めて、光の極太レーザーとして放出。
それでも粘ってくる複製体はチーとニーの活躍によって、接近は阻止される。
眷属が力を貸してくれる戦いで、苦戦をしてはいけない。
そんな覚悟もあって、勝負は圧倒的に俺の方が優位だった。
「どうした、もう終わりか? なら、そろそろ左目に触らせてもらうぞ」
「…………」
「ふーん、カッコイイ眼帯だな。それを構成する瘴気も払わないと、俺は勝利できないと言いたいわけか」
ならばやってやろうと言わんばかりに、銃弾と矢の雨を降り注いでいく。
一方の『輪魂穢廻』は瘴気の量がもう全然ないせいか、瘴気で身体強化して逃げ惑う。
なんせ、受けただけで自分のエネルギーが相手の糧になるわけだからな。
互いに消費する方を選ぶのは当然だし、俺でもそうする。
「でも、もう終わりだ──“運参霧瘴”」
『ッ──!』
「からの……“万能吸収”」
瘴気を媒介に眼前に移動した俺は、グーが形を変えた腕輪へ残った瘴気を吸わせる。
それだけで、剥き出しになった目玉に容赦なく突きを行う。
「ぐぅ……死ッ!」
俺の突きなのだが、どうやら『機巧乙女』の肉体で生成した魔力で防いでいた。
それでも少しずつ、魔力を籠めていない手の推力でも押せているので……時期に届く。
「──ん? ああ、甘かったな。お前が俺に勝ちたかったなら、もっと頭を使うべきだったわけだ」
「…………」
足元でバチッと火花が散ったと思えば、そこではニーが最後の複製体を迎撃していた。
聖武具である彼女が、瘴気そのものである複製体を防げない方がおかしいんだよな。
そう、何度も言うがこれは勝つのが前提のようがゲームだった。
たとえ不正をしてでも、勝つ……まあ、そもそもルール違反じゃないからな。
「さて、届いたな」
「────ッ!!」
そうこうしている内に魔力も尽き、俺の指先は生温い不快な感覚に襲われる。
痛みに耐えるような声を挙げる彼女の姿、それは化け物ではない女の子のそれだった。
「……普通の回復魔法じゃダメか? まあ、いちおう“心身治癒”っと」
傷つけてしまった左目を治癒し、ついでに心身の状態も治しておく。
これで暴走とかはせずに、ゲーム結果を告げることができるだろう。
ゲームの勝者は俺、敗者は『輪魂穢廻』。
さて、どんな要求にしようかな。
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