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偽善者と切り拓かれる世界 二十月目
偽善者と橙色の世界 その14
しおりを挟む説明は記憶したものをイメージ化し、映像として投影しながら行う。
神なのに状況を理解していないようだったので、観て理解させる必要があった。
『グレッドもグレッドでいろいろとあったんだねー。ふむふむ、そしてすでに界廊が繋がれているなんて……これまで開いたことなんて、一度も無かったんだよ』
「……はっ、一度も?」
『うん。だって、開けさせる気が無かったみたいだからね。もともとは一つだった世界がバラバラにされて、今じゃ九つになった。やることも無くなって寝ていたんだけど……いつの間にか乗っ取られていたみたい』
赤から……おそらく紫までの八つの世界、それに加えて万色の世界で合計九つか。
虹は七色ではなくそれ以上やそれ以下の数で描く地域があるみたいだが、今回は八色で構成されているようだし。
「じゃあ、あのシステム……『勇者』とかそれぞれの『王』とかはどういうことだ? 開ける気が無いなら、もっと難易度を上げておいてもよかっただろうに」
『それは……言えないみたい。カカにもそういうことがあったんじゃないの? 私みたいに神族は、言うことができないことがあるからね。悪気はないんだよ』
「ああ、なら構わないさ。それで……どうして寝ていたんだ?」
カカの場合、邪神に貶められても世界の迷惑にならないように転生を選ぶ。
そして何の因果か少女の肉体に宿り──カグの中で、封印されていた。
だが、目の前の神は……その身から生みだされる神気が、根こそぎ身に纏う花々によって吸われている。
完全にただの世界維持装置として使われている……扱い的には、運営神であり邪神でもあるリオンと似た感じだ。
『さっきも言ったけど、やることが無かったからだねー。グレッドに居たなら分かると思うけど……ほら、だいぶ平和でしょ?』
「……今は違うみたいだが?」
『少なくとも、前はそうだったんだよ。魔物は居たけど、もともとこの世界の性質はエネルギーの増進だったから。魔物が現れても、結構簡単に倒せていたんだよ』
エネルギーの増進、だから魔術でも問題なく生きられていたわけか。
わざわざ魔力を消費しまくる魔法より、緻密な調整ができる魔術を選んだと。
だが、今はその理を感じたことはない。
つまりは……そういうことだろう。
「で、その花は何が理由でお前の体にくっついているんだ?」
『知ーらない。たぶん、いつ間にか現れた他の神が私の力を奪っているんじゃない?』
「まあ、その通りなんだが……とりあえず、外しておくか?」
『うん、お願ーい』
先ほど同様、魔導を使ってもいいが……魔力が不安だったので、別の物を使う。
取りだしたのは透明な剣、そこに神気を少しだけ籠めて能力を行使する。
「──“神殺滅封”」
『……凄く嫌な感じなんだけど。それ、本当に大丈夫なの?』
「動くなよ──“業魔一刀”」
破邪効果付きの斬撃を振るい、花々のみを正確に斬っていく。
先ほど発動した“神殺滅封”が効果を発揮し、斬った花々は中へ吸い込まれていった。
「はい、これでオッケー。けど、いきなりこれをやって世界がどうこうならないか?」
『やってから言うんだー。けどまあ、大丈夫だと思うよ。たぶん、今の理はもうこの世界に定着している。修正しようにもできないから、一度リセットする気概でいないとどうにもならないよ』
「リセット……住民はどうなる?」
『どうもしない。今使われているシステムで邪魔な部分だけ止めて、元の理をそこに埋め込むだけ。さっき話に出た……『種思』? とかは、そのままにしておいても問題ないみたいだしね』
取り込んだ花を調べる能力があるので、それを解析しているのだが……花がもたらす理は──花々の活性と強化だった。
エネルギーの増進が元の理だったことから考えると、その増進される分を独占しようとした結果なのだろう。
「そういえば、あのデッカイ花とかはどうして浮いていて人族の拠点にできているのか分かるか? 花にもスタンスの違いとか、そういうのがあるのか?」
『あれは浮遊花っていう、もともと私が暇潰しに創った花。たぶん、私が創った方は新しい理に影響されていないんじゃないかな』
「そのまんまだな……まあ、理由が分かったから別にいいが。なるほど、だから影響下にない花には敵対的なんだな」
『それもあるだろうけど、魔粉は魔物の性質も持っているんでしょ? 神の創った花だから、邪魔したいんじゃない』
AFO世界において、そんな話がある。
魔物は神々が創りたもうた人族を妬み、嫉み、恨み、憎み……まあ、それで殺そうとしているとかなんとか。
こっちの世界だとそのターゲットが、同朋である花々に向いているわけだな。
「……とまあ、ここまで質問してきたけどそろそろ帰るか」
『えっ、もう行っちゃうの? 他の神族とも連絡が取れなくなっちゃったし、他の子と話すのもだいぶ久しぶりだったんだよ』
「じゃあ、どうしろと」
『……どうにかして、連れてってくれないかな? ほら、ここまで来れたしあんな凄い武器もあるんだからどうにかできない?』
物凄く適当だな……とため息を吐き、いくつかの方法を提案するのだった。
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