1,358 / 2,518
偽善者と切り拓かれる世界 二十月目
偽善者と星の海 その19
しおりを挟む≪──報酬の件、承った。当機もその際は、契約に従うことをここに定めよう≫
「ありがとう。まあ、できるならそんな必要もなく、暇潰しレベルで使いたいだけどな」
≪当機にそのタイミングを選ぶ権限は無い。だが、たしかにその方が好ましい≫
迷宮神珠──『宙艦』ミラ・ケートスの心臓とも呼ぶべき区画で、俺はとあることを願い……それを受け入れてもらった。
スキルやアイテムを欲しがったわけじゃない……ただそれ以上に、便利なモノだな。
「なら、そういうことで。あとは……ノアに部品をくれるんだっけ? 知識は別にしてくれると、こちらとしては助かるんだが」
≪承知した。方舟よ、当機の下へ≫
「は、はい」
≪ただいまより、譲渡の儀を行う。構築される術式の下に方舟を≫
1キロにも及ぶ巨大な方舟、それを収めることができるほどの超巨大魔法陣が地面に描かれる。
ノアは本体とも呼べる方舟を遠隔操作し、魔法陣のある場所へ着地させた。
≪接着を確認。構造を解析──当機の部品を最適化≫
魔法陣からX線のようなモノが伸びると、方舟を上から下まで全部を見通していく。
ミラの部品は自動調整ではなく、どうやらオーダーメイドタイプのようだ。
≪最適化完了。方舟へ特殊艦装を転送──完了。これで、方舟は星の海を渡れるだろう≫
「ほー、なんか凄くなったな……」
新装備というのはいつだって、かっこよくなるのが定番だ。
方舟だろうとその法則に従って、新艦装とやらはかなり決まっていた。
神眼で全体を俯瞰して把握して視たが、方舟の一部にコーティングが入ったり装備が追加されていたりと……方舟の色に合った強化グッズが盛り沢山だ。
≪使い方は自ずと理解できるはずだ。さて、次は知識だな≫
「できるなら、資料として本に纏めておいてほしい。俺以外のヤツとも、共有したいし」
≪……それで良いのであれば、構わない。すぐに用意しよう──これでいいだろうか?≫
「速ッ!」
話をして数秒、物凄く分厚い資料……という名の凶器が生成された。
法律が載っている全書並みにページ数があるのだが……いったい何が載っているのか。
気になったのですぐさま開き、<千思万考>や{夢現記憶}をフル活用してその膨大な内容に目を通し──すべてを頭に叩き込む。
「……はぁ、宇宙って凄いんだな。けど、これ完全じゃないよな」
≪あくまで、当機が伝えることができるのは彼の世界から知り得ることができる情報のすべて。それ以上を知りたいのであれば、己の船で知らなければならなう≫
「周辺の情報が入っているだけでも、こちらとしては充分だと思うけどな。まあ、気長にやってみるとするさ」
≪初の星海到達者にして、異界より招かれし異端の申し子よ。汝らの活躍、この星海より楽しみにしておこう≫
ミラはそう言って、アナウンスのような声の伝達を終える。
迷宮神珠の輝きはそのままだが、気配のようなモノが薄れてどこかへ行った。
「……さて、そろそろ帰ろうか。ノアは送還するから、どんな風になるのか試しておくといい。あと、暇なら上を泳いで何があるのか見てきてくれるか?」
「構わないよ。私も方舟としての使命を果たすため、どこが移住の地なのか探しておく必要があるし」
「それじゃあ、還すぞ──“召者帰還”」
方舟共々、魔法陣がノアを呑み込んでここではない空間へ送り返す。
大型なので少々魔力消費が多い……けど、扉に籠めた魔力に比べれば安い物だ。
「──というわけでだ。ソウ、何もかも全部終わったぞ。この後、どうするか?」
「うむ……主様、一ついいかのう?」
「まあ、内容にもよるが大半のことは了承するぞ……で、いったいなんだ?」
◆ □ ◆ □ ◆
星海
「宇宙改め、星の海。来たときも思ったが、やっぱり綺麗だな……」
「主様は、感性が豊かではないと心得ていたのじゃが……」
「それは否定しない。センスゼロだし……けどさ、ここまでデカいモノなら圧巻ぐらいされるだろう? 少なくとも、俺の魔導で見せる光景なんかより……魅せられるわけだし」
ソウの願いは、再び宇宙へ行くこと。
そして、しばらく飛ぶことだった。
さすがに断るのも悪いと思ったし、俺ももう少し宇宙を観てみたかった……なので了承し、魔法を掛けてミラから出る。
「ミラも行っちゃったな……ミラ製の部品が使われていない宇宙船を使えばまた来るらしいけど、うちの眷属が来たらいったい何回お世話になるんだか」
「極端な話、主様のスキルを借りれば誰でもここに来ることができるしのう」
「空に階段を作ってもいいし、瞬間移動で来てもいいし……オゾン層の壁はあるけど、それ以上も楽に来れちゃうからな」
そういうヤツらを理不尽と言い、その象徴が宇宙をちょうど今飛んでいるわけだが……まあ、どんなこともこの宇宙の美しさと比べれば詮無きことか。
「主様よ、このまま飛んでいけば主様の世界まで飛ぶことはできるかのう?」
「理論上は可能らしいぞ。ただ、長い年月が掛かるらしい。次元魔法で干渉するんだが、地球の場所が分からない。そうすると、むやみやたらに試し続けるしか無いからだ」
「主様は……それを行ってでも、帰ろうとはしないのかのう?」
「またこういう系か? お前らが居れば、帰ろうとは思わない。焦る必要はないし、そもそも運営神をどうにかすれば邪縛が解かれてログアウトもログインも容易になる」
そうすれば、地球の座標も把握できるようになる……そして、眷属たちを招く手段も見つかるかもしれない。
約束のためにもなんとかしないとな……どこまでも続くこの宇宙のどこかに、きっと帰るべき場所はあるのだから。
□ ◆ □ ◆ □
輝きは再び取り戻され、闇は失われた
星々を揺蕩う異形の船は、星の海を泳ぐ
載せるは迷宮、乗せるは命救
神代より与えられし使命は、次代へと受け継がれていく
超越クエスト『星海の闇、遍く輝きは無限を照らす』が達成されました
評価を総合──『評価:P』と認定
称号『宇宙船舶免許』を入手しました
称号『星々の放浪者』を入手しました
称号『星宮の統治者』を入手しました
称号『開闢の供給者』を入手しました
称号『新たなる方舟』を入手しました
称号『超越証:宙艦』を入手しました
報酬『星海マニュアル』を獲得しました
報酬『アストロスーツ』を獲得しました
報酬『迷宮核:星海』を獲得しました
報酬『迷宮神珠:星海』を獲得しました
報酬『星泳艦装・真』を獲得しました
報酬『超越譚:宙艦』を獲得しました
このアナウンスは完全秘匿されます
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺と異世界とチャットアプリ
山田 武
ファンタジー
異世界召喚された主人公──朝政は与えられるチートとして異世界でのチャットアプリの使用許可を得た。
右も左も分からない異世界を、友人たち(異世界経験者)の助言を元に乗り越えていく。
頼れるモノはチートなスマホ(チャットアプリ限定)、そして友人から習った技術や知恵のみ。
レベルアップ不可、通常方法でのスキル習得・成長不可、異世界語翻訳スキル剥奪などなど……襲い掛かるはデメリットの数々(ほとんど無自覚)。
絶対不変な業を背負う少年が送る、それ故に異常な異世界ライフの始まりです。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる