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偽善者と切り拓かれる世界 二十月目

偽善者と星の海 その19

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≪──報酬の件、承った。当機もその際は、契約に従うことをここに定めよう≫

「ありがとう。まあ、できるならそんな必要もなく、暇潰しレベルで使いたいだけどな」

≪当機にそのタイミングを選ぶ権限は無い。だが、たしかにその方が好ましい≫


 迷宮神珠ダンジョンオーブ──『宙艦』ミラ・ケートスの心臓とも呼ぶべき区画で、俺はとあることを願い……それを受け入れてもらった。

 スキルやアイテムを欲しがったわけじゃない……ただそれ以上に、便利なモノだな。


「なら、そういうことで。あとは……ノアに部品をくれるんだっけ? 知識は別にしてくれると、こちらとしては助かるんだが」

≪承知した。方舟よ、当機の下へ≫

「は、はい」

≪ただいまより、譲渡の儀を行う。構築される術式の下に方舟を≫


 1キロにも及ぶ巨大な方舟、それを収めることができるほどの超巨大魔法陣が地面に描かれる。

 ノアは本体とも呼べる方舟を遠隔操作し、魔法陣のある場所へ着地させた。


≪接着を確認。構造を解析──当機の部品を最適化≫


 魔法陣からX線のようなモノが伸びると、方舟を上から下まで全部を見通していく。
 ミラの部品は自動調整ではなく、どうやらオーダーメイドタイプのようだ。


≪最適化完了。方舟へ特殊艦装を転送──完了。これで、方舟は星の海を渡れるだろう≫

「ほー、なんか凄くなったな……」


 新装備というのはいつだって、かっこよくなるのが定番だ。
 方舟だろうとその法則に従って、新艦装とやらはかなり決まっていた。

 神眼で全体を俯瞰して把握して視たが、方舟の一部にコーティングが入ったり装備が追加されていたりと……方舟の色に合った強化グッズが盛り沢山だ。


≪使い方は自ずと理解できるはずだ。さて、次は知識だな≫

「できるなら、資料として本に纏めておいてほしい。俺以外のヤツとも、共有したいし」

≪……それで良いのであれば、構わない。すぐに用意しよう──これでいいだろうか?≫

「速ッ!」


 話をして数秒、物凄く分厚い資料……という名の凶器が生成された。
 法律が載っている全書並みにページ数があるのだが……いったい何が載っているのか。

 気になったのですぐさま開き、<千思万考>や{夢現記憶}をフル活用してその膨大な内容に目を通し──すべてを頭に叩き込む。


「……はぁ、宇宙って凄いんだな。けど、これ完全じゃないよな」

≪あくまで、当機が伝えることができるのは彼の世界から知り得ることができる情報のすべて。それ以上を知りたいのであれば、己の船で知らなければならなう≫

「周辺の情報が入っているだけでも、こちらとしては充分だと思うけどな。まあ、気長にやってみるとするさ」

≪初の星海到達者にして、異界より招かれし異端の申し子よ。汝らの活躍、この星海より楽しみにしておこう≫


 ミラはそう言って、アナウンスのような声の伝達を終える。
 迷宮神珠の輝きはそのままだが、気配のようなモノが薄れてどこかへ行った。


「……さて、そろそろ帰ろうか。ノアは送還するから、どんな風になるのか試しておくといい。あと、暇なら上を泳いで何があるのか見てきてくれるか?」

「構わないよ。私も方舟としての使命を果たすため、どこが移住の地なのか探しておく必要があるし」

「それじゃあ、還すぞ──“召者帰還リターンサモンド”」


 方舟共々、魔法陣がノアを呑み込んでここではない空間へ送り返す。
 大型なので少々魔力消費が多い……けど、扉に籠めた魔力に比べれば安い物だ。


「──というわけでだ。ソウ、何もかも全部終わったぞ。この後、どうするか?」

「うむ……主様、一ついいかのう?」

「まあ、内容にもよるが大半のことは了承するぞ……で、いったいなんだ?」


  ◆   □   ◆   □   ◆

 星海


「宇宙改め、星の海。来たときも思ったが、やっぱり綺麗だな……」

「主様は、感性が豊かではないと心得ていたのじゃが……」

「それは否定しない。センスゼロだし……けどさ、ここまでデカいモノなら圧巻ぐらいされるだろう? 少なくとも、俺の魔導で見せる光景なんかより……魅せられるわけだし」


 ソウの願いは、再び宇宙へ行くこと。
 そして、しばらく飛ぶことだった。

 さすがに断るのも悪いと思ったし、俺ももう少し宇宙を観てみたかった……なので了承し、魔法を掛けてミラから出る。


「ミラも行っちゃったな……ミラ製の部品が使われていない宇宙船を使えばまた来るらしいけど、うちの眷属が来たらいったい何回お世話になるんだか」

「極端な話、主様のスキルを借りれば誰でもここに来ることができるしのう」

「空に階段を作ってもいいし、瞬間移動で来てもいいし……オゾン層の壁はあるけど、それ以上も楽に来れちゃうからな」


 そういうヤツらを理不尽と言い、その象徴が宇宙をちょうど今飛んでいるわけだが……まあ、どんなこともこの宇宙の美しさと比べれば詮無きことか。


「主様よ、このまま飛んでいけば主様の世界まで飛ぶことはできるかのう?」

「理論上は可能らしいぞ。ただ、長い年月が掛かるらしい。次元魔法で干渉するんだが、地球の場所が分からない。そうすると、むやみやたらに試し続けるしか無いからだ」

「主様は……それを行ってでも、帰ろうとはしないのかのう?」

「またこういう系か? お前らが居れば、帰ろうとは思わない。焦る必要はないし、そもそも運営神をどうにかすれば邪縛が解かれてログアウトもログインも容易になる」


 そうすれば、地球の座標も把握できるようになる……そして、眷属たちを招く手段も見つかるかもしれない。

 約束のためにもなんとかしないとな……どこまでも続くこの宇宙のどこかに、きっと帰るべき場所はあるのだから。


  □   ◆   □   ◆   □

 輝きは再び取り戻され、闇は失われた
 星々を揺蕩う異形の船は、星の海を泳ぐ

 載せるは迷宮、乗せるは命救
 神代より与えられし使命は、次代へと受け継がれていく

 超越クエスト『星海の闇、遍く輝きは無限を照らす』が達成されました

 評価を総合──『評価:パーフェクト』と認定

 称号『宇宙船舶免許』を入手しました
 称号『星々の放浪者』を入手しました
 称号『星宮の統治者』を入手しました
 称号『開闢の供給者』を入手しました
 称号『新たなる方舟』を入手しました
 称号『超越証:宙艦』を入手しました

 報酬『星海マニュアル』を獲得しました
 報酬『アストロスーツ』を獲得しました
 報酬『迷宮核:星海』を獲得しました
 報酬『迷宮神珠:星海』を獲得しました
 報酬『星泳艦装・真』を獲得しました
 報酬『超越譚:宙艦』を獲得しました

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