上 下
1,302 / 2,518
偽善者と再憶のレイドイベント 十九月目

偽善者と自己紹介 その34

しおりを挟む


 夢現空間 居間


 レイドラリーは幕を閉じた。
 祈念者プレイヤーたちは再び散り散りとなって、異なる地での活動を要される。

 イベント中に手に入れたアイテムは、確実に彼らの活動に影響を及ぼす。
 そしてそれが示すのは……さて、善いことか悪いことなんだか。


「──そちが『ザ・グロウス』であるニィナよりリソースを回収したお蔭で、世界により多くのリソースを振るうことができたのだ」

「具体的に、そのリソースってどういう使われ方をしたんだ?」

「雨を降らしたり、土壌を改善したり……苦しむ人々に恵みをもたらしていったのだ」

「もうそれさ、邪神のやることじゃないな。完全に善なる聖神の類いだろう」


 どうも今回のゲストは、自身の立ち回りというのを理解できていないようだ。
 ……いやまあ、だからこそ『邪』──正しくはない、王道ではない神なのだろう。


「聖神も邪神も関係ないのだ。誰かを救いたいと想う心に……それこそ、そちのような偽善であろうと。それさえあれば、結果をきものにすれば万事解決じゃ」

「…………」

「大概のことは結果がすべてなのだ。過程が重要なこともあるにはある、けれど命を救うことに過程なんて考えていたら救えなくなるのだ。そちにとって、邪神は誰かを救ってはいけないのだ?」

「……そう、だったな。偽善と同じだ。最後さえよければすべてよし!」


 たとえカッコイイ台詞セリフを言っている目の前の(見た目は)小さな少女が、たとえ過程を気にして人のことをボッコボコにしてきた過去があろうと……気にしてはいけない。

 少々力を籠めてしまったため、割れたお菓子を口に入れてからいつものアレを始める。


「さぁ、それじゃあ始めちゃいましょう──第三十四回質問ターーーイム! 本日のゲストはこのお方──運営神の一柱であり、裏切られて裏切った邪神──リオン様です!」

「……裏切りではなく、反逆なのだ」

「はいはい、そうですね。時間が押しているわけではありませんが、とりあえず急いでみましょう──さぁ、レッツインタビュー!」

「こんなのやるの、初めてなのだ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「問01:あなたの名前は?」

「反逆の邪神、ドミリオンなのだ」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「性別は無く、出身地は神域、生年月日は分からないのだ」

「神って性別ないんだっけ? あと、分からないってのは隠したいからか?」

「……性別を求められる神格以外は、無性なのだ。分からないのは、時間の概念があやふやだったときに生まれたからなのだ」

「……けどそれ、生まれてからどれくらい経過しているとかは分かっているはず──」

[少々お待ちください]


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「黒曜石みたいな髪と瞳ぐらいなのだ」

「前は鎖が絡みついていたよな。いっそのこと、また装備してみるか?」

「……あやつはもう御免なのだ」


「問04:あなたの職業は?」

「現人神のそちと違い、純粋な神族は職業に就けないのだ」

「なのに【○○神】ってのはあるんだよな」

「候補者の選定などに使っているのだ」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「とっても真面目なのだ。他の運営神とも違い、たとえ労働を強要されようと星のために励むだけの──」

「……ぶふっ」

「な、なんで笑うのだ!?」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「リソースを使って、人々を救っていくことなのだ」


「問07:座右の銘は?」

「特にないのだ。ただ、下剋は上等だと常日頃から思っているのだ」

「えっ、何その宣言? いつでも殴る気満々とでも言いたいの……というか、そのジャブ止めてくれ」


「問08:自分の長所・短所は?」

「長所は誰かのためにすぐ動けること、短所はそれが愚直……と、前にスペークに言われたことがあったのだ」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「好きなものは向上意欲のある者、嫌いな者は現状を打破しようとしない者なのだ」

「……要するに、反逆関係か」


「問10:ストレスの解消法は?」

「最近はボクシングで解消するようにしたのだ。一石二鳥なのだ」


「問11:尊敬している人は?」

「大神様なのだ。メルスのようにどうしようもない人間であろうと、ここまで至らせられるその手腕に感動するのだ」

「……なあ、褒められてるの? それともなじられてるの?」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「リソースの管理なのだ。他の運営神は、だいたいが適当にしかやらないのだ……だからこそ、最初は全部われがやっていたのだ」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「自分が生まれもってきた神髄なのだ。何をすべきか……人族と違って、神族にはそれが明確に分かるのだ」


「問14:あなたの信念は?」

「絶対に折れない反逆の意を、人々に灯し続けることなのだ」


「問15:癖があったら教えてください」

「……右ストレートよりも、ジャブを多用することなのだ?」

「なぜに疑問文。というか、まだボクシングの話なのか」

「特に浮かばないのだ」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ツッコミなのだ」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「神として、位を上げられた時なのだ」


「問18:一番困ったことは?」

「シーバラスらが簒奪を目論み、本当にそれが成功したことなのだ」

「……何かあるのか?」

「今はまだ、言えないのだ」



「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「ソーマが至高なのだ」


「問20:自分を動物に例えると?」

「……人族なのだ」

「まあ、たしかに神様から見れば下界の存在である人族はそういう扱いか。はいはい、次に行くぞ」

「ちゃ、ちゃんと理由が……」

「分かってる分かってる。自分で猿っていうのもあれだったか──らぶぅっ!」

「ふんっ!」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「そちが『のだ邪神』と言っていたのを耳にしたことがあるのだ」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「……他の運営神たちを信じすぎていたことがあったのだ。それが無ければ、こうはならなかったかもしれないのだ」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「かつての世界を取り戻すことなのだ」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「人ではないが……やりがいは感じるのだ」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「先の件、それをやり直したいのだ」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「間違いなく原因は運営神なのだ。ならばわれがそれを止めるのだ」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「リソース量が少しずつ減っているのだ」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?」

「まったくないのだ」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「普通の人族となり、生を謳歌したいのだ」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「われを必要としなくなった世界で、ひっそりと消えていきたいのだ」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「運営神ども……いつかそちらの野望をメルスたちと共に終わらせてやるのだ。それまで首とリソースを洗っておけなのだ」

「リソースを洗うって……何?」


「問32:最後に何か一言」

「とりあえず……まずそちは一発殴られろなのだ!」

「いやなんでぶぅっ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「か、カット! リオン、なんで最後に俺は殴られたんだ!」

「い、いやー、あれなのだ。やっぱり劇的な変化が必要だと思ったのだ!」

「……ストレス発散、ではないんだな」

「………………そうなのだ」


 どうやら嘘を吐くとモジモジしだすクセを持っていたらしい邪神を見て、深いため息を
吐くしかない。


「それにやっぱり、われとそちはそこから始まったとも言えるのだ。初心に帰り、ぜひこの機会にやってみたかったのだ」

「…………ハァ。もうしないでくれよ」

「…………」


 そこで黙る辺り、大変真面目である。
 そんな邪神だからこそ……俺も運営神だという経歴を気にせず、受け入れることができたのだろうな。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?

破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。 そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。 無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた… 表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと イラストのurlになります 作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)

虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

処理中です...