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偽善者と再憶のレイドイベント 十九月目
偽善者と自己紹介 その34
しおりを挟む夢現空間 居間
レイドラリーは幕を閉じた。
祈念者たちは再び散り散りとなって、異なる地での活動を要される。
イベント中に手に入れたアイテムは、確実に彼らの活動に影響を及ぼす。
そしてそれが示すのは……さて、善いことか悪いことなんだか。
「──そちが『ザ・グロウス』であるニィナよりリソースを回収したお蔭で、世界により多くのリソースを振るうことができたのだ」
「具体的に、そのリソースってどういう使われ方をしたんだ?」
「雨を降らしたり、土壌を改善したり……苦しむ人々に恵みをもたらしていったのだ」
「もうそれさ、邪神のやることじゃないな。完全に善なる聖神の類いだろう」
どうも今回のゲストは、自身の立ち回りというのを理解できていないようだ。
……いやまあ、だからこそ『邪』──正しくはない、王道ではない神なのだろう。
「聖神も邪神も関係ないのだ。誰かを救いたいと想う心に……それこそ、そちのような偽善であろうと。それさえあれば、結果を好きものにすれば万事解決じゃ」
「…………」
「大概のことは結果がすべてなのだ。過程が重要なこともあるにはある、けれど命を救うことに過程なんて考えていたら救えなくなるのだ。そちにとって、邪神は誰かを救ってはいけないのだ?」
「……そう、だったな。偽善と同じだ。最後さえよければすべてよし!」
たとえカッコイイ台詞を言っている目の前の(見た目は)小さな少女が、たとえ過程を気にして人のことをボッコボコにしてきた過去があろうと……気にしてはいけない。
少々力を籠めてしまったため、割れたお菓子を口に入れてからいつものアレを始める。
「さぁ、それじゃあ始めちゃいましょう──第三十四回質問ターーーイム! 本日のゲストはこのお方──運営神の一柱であり、裏切られて裏切った邪神──リオン様です!」
「……裏切りではなく、反逆なのだ」
「はいはい、そうですね。時間が押しているわけではありませんが、とりあえず急いでみましょう──さぁ、レッツインタビュー!」
「こんなのやるの、初めてなのだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「反逆の邪神、ドミリオンなのだ」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「性別は無く、出身地は神域、生年月日は分からないのだ」
「神って性別ないんだっけ? あと、分からないってのは隠したいからか?」
「……性別を求められる神格以外は、無性なのだ。分からないのは、時間の概念があやふやだったときに生まれたからなのだ」
「……けどそれ、生まれてからどれくらい経過しているとかは分かっているはず──」
[少々お待ちください]
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「黒曜石みたいな髪と瞳ぐらいなのだ」
「前は鎖が絡みついていたよな。いっそのこと、また装備してみるか?」
「……あやつはもう御免なのだ」
「問04:あなたの職業は?」
「現人神のそちと違い、純粋な神族は職業に就けないのだ」
「なのに【○○神】ってのはあるんだよな」
「候補者の選定などに使っているのだ」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「とっても真面目なのだ。他の運営神とも違い、たとえ労働を強要されようと星のために励むだけの──」
「……ぶふっ」
「な、なんで笑うのだ!?」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「リソースを使って、人々を救っていくことなのだ」
「問07:座右の銘は?」
「特にないのだ。ただ、下剋は上等だと常日頃から思っているのだ」
「えっ、何その宣言? いつでも殴る気満々とでも言いたいの……というか、そのジャブ止めてくれ」
「問08:自分の長所・短所は?」
「長所は誰かのためにすぐ動けること、短所はそれが愚直……と、前にスペークに言われたことがあったのだ」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなものは向上意欲のある者、嫌いな者は現状を打破しようとしない者なのだ」
「……要するに、反逆関係か」
「問10:ストレスの解消法は?」
「最近はボクシングで解消するようにしたのだ。一石二鳥なのだ」
「問11:尊敬している人は?」
「大神様なのだ。メルスのようにどうしようもない人間であろうと、ここまで至らせられるその手腕に感動するのだ」
「……なあ、褒められてるの? それとも詰られてるの?」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「リソースの管理なのだ。他の運営神は、だいたいが適当にしかやらないのだ……だからこそ、最初は全部われがやっていたのだ」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「自分が生まれもってきた神髄なのだ。何をすべきか……人族と違って、神族にはそれが明確に分かるのだ」
「問14:あなたの信念は?」
「絶対に折れない反逆の意を、人々に灯し続けることなのだ」
「問15:癖があったら教えてください」
「……右ストレートよりも、ジャブを多用することなのだ?」
「なぜに疑問文。というか、まだボクシングの話なのか」
「特に浮かばないのだ」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコミなのだ」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「神として、位を上げられた時なのだ」
「問18:一番困ったことは?」
「シーバラスらが簒奪を目論み、本当にそれが成功したことなのだ」
「……何かあるのか?」
「今はまだ、言えないのだ」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「ソーマが至高なのだ」
「問20:自分を動物に例えると?」
「……人族なのだ」
「まあ、たしかに神様から見れば下界の存在である人族はそういう扱いか。はいはい、次に行くぞ」
「ちゃ、ちゃんと理由が……」
「分かってる分かってる。自分で猿っていうのもあれだったか──らぶぅっ!」
「ふんっ!」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「そちが『のだ邪神』と言っていたのを耳にしたことがあるのだ」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「……他の運営神たちを信じすぎていたことがあったのだ。それが無ければ、こうはならなかったかもしれないのだ」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「かつての世界を取り戻すことなのだ」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「人ではないが……やりがいは感じるのだ」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「先の件、それをやり直したいのだ」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「間違いなく原因は運営神なのだ。ならばわれがそれを止めるのだ」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「リソース量が少しずつ減っているのだ」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「まったくないのだ」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「普通の人族となり、生を謳歌したいのだ」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「われを必要としなくなった世界で、ひっそりと消えていきたいのだ」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「運営神ども……いつかそちらの野望をメルスたちと共に終わらせてやるのだ。それまで首とリソースを洗っておけなのだ」
「リソースを洗うって……何?」
「問32:最後に何か一言」
「とりあえず……まずそちは一発殴られろなのだ!」
「いやなんでぶぅっ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「か、カット! リオン、なんで最後に俺は殴られたんだ!」
「い、いやー、あれなのだ。やっぱり劇的な変化が必要だと思ったのだ!」
「……ストレス発散、ではないんだな」
「………………そうなのだ」
どうやら嘘を吐くとモジモジしだすクセを持っていたらしい邪神を見て、深いため息を
吐くしかない。
「それにやっぱり、われとそちはそこから始まったとも言えるのだ。初心に帰り、ぜひこの機会にやってみたかったのだ」
「…………ハァ。もうしないでくれよ」
「…………」
そこで黙る辺り、大変真面目である。
そんな邪神だからこそ……俺も運営神だという経歴を気にせず、受け入れることができたのだろうな。
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