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偽善者と再憶のレイドイベント 十九月目

偽善者とレイドラリー後篇 その05

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 周りで歓声が上がる中、やる気の無い俺を無視して男たちはヒートアップしていく。
 気づいていないようだが、本来従魔の分際で[PvP]を受けることはできない。

 従魔に挑むって、そもそもその時点でおかしい気もするけど。
 あくまで従魔を持つのは主の力で、挑むのはそちらなのが筋というものだろうに。


「おい、成立したぜ。あのクラーレってヤツはずいぶんとバカなんだな!」

「ははっ、違ぇねぇな!」


 なんて会話があるのは、従魔に向けられた申請を受けるのが、本来は主だからだ。

 クラーレが俺の主だと思っている彼らは、この場に居ないのにそれを受けたことを笑っているわけだな。


「ますたーのことを、あまり悪く言わないでほしいなぁ。とにかく、許可されたんだからもう始まるよ?」


 結界が俺と当たり屋たちを囲み、脱出不可能な状態となる。
 ……まあ、その気になれば破壊できるが、そうなると厄介事が降るので無しだ。


「へっ、武技も使わねぇし魔法も一種類しか使わねぇんだろう? 知ってんだぜ、お前が器用貧乏だってことはよぉ!」

「……ふーん、バレてたんだ」

「なのにそんな条件で、いったいどうやって勝つってんだよ!」

「まあ、やってみないと分からないよ。それにさ、そもそもそれって弱い相手だったからやることを絞っていただけだよ。そう、たとえばこんなときみたいにね」


 おっと、ただただ本当のことを言ってやっただけなのに、怒り始めたぞ。
 いったい何が悪いのか……ああ、また失言してしまったか?


「舐めんじゃねぇ! ったく……テメェら、さっさと殺すぞ!」

『おうっ!』


 音が鳴り響き、戦いの始まりを告げる。
 今回のルールは『デスマッチ』、ルールが無いのがルールな殺し合いだ。


「それじゃあ始めようか──“剣器創造クリエイトソード”」

「固有魔法か……だがまあ、つまりコイツは武器を創る魔法しか使えねぇ! 属性魔法で潰すぞ!」

『へいっ!』


 そんなこんなでわざわざ作戦を話してくれたうえで、その通りの行動を取ってくれる。
 無数に放たれる魔法の数々──俺はそれを剣で斬り裂いていく。


「……ハッ?」

「魔力で創った剣なんだから、魔力で生みだされたモノを斬れてもおかしくないよ。どうしたの、まさかそれだけやっていれば勝てると思ったの?」


 辺りで笑いが起きる。
 見た目は幼女の俺を相手に、圧倒されているのだからしょうがないけれど。


「くそがぁあ──“圧縮断刃ストームブレード”!」


 そんな中、魔法職の男が魔力マシマシで発動した暴風魔法の“圧縮断刃”。
 鋭さを増した風の刃を以って、俺を斬り裂こうとする。


「じゃあ、それ借りるよ──“一剣密封ソードシール”」


 俺が手を前に突きだすと、一本の真っ新なデザインの剣が生みだされる。
 そこに“圧縮断刃”が命中し……吸い込まれていく。


「完成、暴風剣! そいやっと!」


 この魔法“一剣密封”は、対象を封じることができる剣を生みだす。
 今回は魔法を封印したため、擬似的な魔剣として振るうことができるのだ。


「おい、お前! 属性は一つしか使わねぇんじゃなかったのか!」

「借りただけだよ。私だけじゃこの剣は作れなかった……ありがとうね、お兄さん」

「お、おう……」

「惑わされるんじゃねぇよ!」


 中身が偽善者であろうと、外側は眷属たちの顔を参考にして作った妖女である。
 ふっ、惚れてしまっても仕方がない。


「まだまだ行くよ──“放射剣レディエートソード”!」


 剣を無数に生みだし、男たちへ飛ばす。
 あえて直接突き刺さる場所へ放っていないので、彼らは自分の薄皮を剣が通過していくことに恐怖していく。


「降参できるけど……する?」

「す、するわけねぇだろう! テメェら、こうなったら接近戦だ! 数で囲めば、きっと隙ができる!」

『……お、おう!』


 一瞬間の空いた返事だったなー。
 なんてことを思いながら、整えた魔法を発動する。


「まずは一人──“二剣入替ソードスイッチ”」

「んなっ、転移……ぐはっ!」

「剣の場所を入れ替えただけだよ。それじゃあ次に行くよ──“剣器創造クリエイトソード隼敏剣ファルコン”」


 転位した場所からもっとも近かった男を斬り裂き、そこで新たな剣を生みだす。
 隼を模した柄が付いた、やや細身の剣だ。


「これを持っている間、私は通常攻撃が二回攻撃になるよ」

「速ッ! ふ、防げな……ぐあぁあ!」

「こっちの暴風の剣があれば、全体攻撃もできるね……そいやっ!」


 救援に来ようとする奴らに暴風剣を振るって牽制し、確実に二人目を殺す。
 そして彼が粒子となり、この場から消えたことを確認して……呟く。


「よーし、これで二人目っと。あと四人もやらなきゃいけないのか……面倒だなー」

「め、面倒だと!?」

「うん、面倒だよ。そろそろますたーたちも合流するみたいだし、早くトドメを刺そうかなー? 観客の皆さん、ぜひこのショーを楽しんでいってねー!」


 男なら誰もが憧れるとある力。
 この魔法を生みだしたモノも、心のどこかで発現を願っていたのかもしれない。

 魔力消費が膨大故に、きっとまだ使えていないかもしれない……ならば、俺が代わりにそれを魅せてやろう。


「並び立て──“百剣戦場ソードフィールド”」


 体は剣でできていなくとも、生みだせる。
 さぁやってみせよう──無限の剣技を。


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