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偽善者と暗躍の日々 十八月目
偽善者と眷属化面接 中篇
しおりを挟む「面接……ですか?」
「面接だ。お前たちが望む眷属には、面接を経ないとなることができない」
「……ユウたちはやってませんよ」
「ああ、言ってなかったな。それはコレに関わることで少しな」
適当に空間から取りだした結晶。
七色に輝くソレをチラつかせ、説明する。
「ユウとアルカの場合、<大罪>の一つである【傲慢】と【憤怒】を与えた。だが、やっぱりリスクが有ってな……二人には、それぞれに合った固有スキルを贈ろうと思う」
「普通、あげられませんよ」
「俺にとって遺憾ではあるが、お前たちとしては俺が理不尽な方がそれっぽいだろ? かなり前に伝えた侵蝕現象もゼロだから、安心してもらって構わない」
分かりやすく言えば、運営製絡みの固有スキルだと侵蝕現象が起きる。
しかし、自前でスキルを発現させれば何も起きない──それは、己にとって適性がある固有スキルを得たからだ。
「面接を通して、俺の眼が未来を視る。集めた情報を基に視るってタイプだ。お前たち二人にとって、どの固有スキルがもっとも最適なのかをな」
「その結果が<大罪>である可能性は?」
「そういうことをいちいち確認できるような人間性があれば、間違いなく無いだろう。逆に<美徳>スキルなんかは出るかもしれない。そこら辺はアンケートによるな」
「美徳……」
職業が【聖女】のセイラにとっては、気になる所であろうか。
侵蝕されても聖人のような献身的なことしかできず、しかも祈念者なので命すらも捧げられるという……ほぼ困らない【聖女】。
相談を受けたことは有ったが、そもそも今のこの世界だと【聖女】の役割ってあんまりないんだよな……神のアンテナ役って感じだし、回復魔法も後天的に入手し放題な祈念者が大量に居るし。
蘇生系や状態異常完全回復、特殊結界生成魔法は貴重だろうが……最後の奴以外は、どうにか祈念者たちが生産技術を伸ばしていけば、可能となってしまう。
「前に言っていた、自分だけのナニカ。今回それが見つかるといいな。ちなみにさっきから挙げている<美徳>と<大罪>、適正が無いとリスクが本当に半端ないから気を付けろよ」
「どんなリスクなんですか? あと、そのことをユウとアルカに言ったんですか?」
「リスクは侵蝕同様、自身の在り方が少しだけ変わる……だがまあ、少し心がオープンになるって感じだし、ゲームだからはっちゃけてますぐらいに認識でいい。問題はそこじゃなくて──俺を意識しだすんだよな」
「「…………」」
おっと、絶対零度の眼差しがこちらへ。
まあ、この言葉だけ聞くとただの自意識過剰野郎でしかないからな。
「最後まで聞けって。今回もだが、渡すスキルはすべて俺が持っているモノだ。そして眷属と言うシステム上、俺との間に薄っすらと縁のような物が繋がれてしまう。意識しなければ気づけないようなものだけどな」
「……その縁とやらが、今の発言に繋がっていると?」
「そうじゃなく、リスクの話だ。侵蝕はほぼゼロだが、俺と接触する時だけ少し侵蝕されると思ってくれ。見たら分かるだろう? ユウもアルカも、なぜか俺に近づいてくる」
「「…………」」
再び沈黙だ。
うーん、難しかっただろうか?
隣に座るナックルも、やれやれといった感じで肩を竦めている……えっ、なんで?
「ユウもアルカも言わずもがな、わざわざ来るだろう? 大胆に、苛烈に……どっちも侵蝕現象が原因のはずだ」
「あー、はいはい分かりました。問題なさそうなので、もしどちらかに適性があればそのままください」
「わ、私も構いません」
まあ、彼女たちにとってどれだけ意識しようと、現実へ帰還できる時点でここはもう一つの世界なのだ。
俺というモブが意気がっていられるのがこちらだけということを、理解しているからこその優しさなのかもしれない。
なのでそのことについて、音を遮断したうえでナックルへ相談してみる──
「なあ、これってどういうことだ?」
「……いや、分かんないのか?」
「さっぱり。まあ、二人が強さのためならどういう代償だろうが構わない……みたいな意気込みなのはよく分かったけどさ」
「全然わかってないな」
そういうことなんじゃないのか?
いつもなら冴え渡る<千思万考>も、情報不足なため似たような答えしか出せずにいる。
いったいどういうことだ? それぐらいしか俺の低スペックな脳では出せない。
「まあ、<美徳>も<大罪>もアンケートで出す適性で出るとは思わないんだけどな。普通に無難な固有スキルが出るだろう」
「そういえば……お前、たしか別の眷属とやらがいたよな? たしか、吸血鬼と妖精の子たちだったか」
「ああ、居るな」
「その子たちはユウとアルカと違い、<美徳>のスキルを持っているんだろう? お前の言うリスクはどんな風に働いているんだ?」
吸血鬼には【忍耐】、妖精には【救恤】を与えたが……どうだったかな?
そういうスキルの性質だったのか、これらもあんまり侵蝕されても困らないんだよな。
「脅しはしたが、<美徳>の方は侵蝕されても俺に絡む必要が無い。たとえば【純潔】なんてのがあるが……逆に絡むと思うか?」
「ああー、そういう考え方なのか」
「何か問題でもあったか?」
「いや、なんでもない。お前も大概鈍感なヤツだなって思っただけだ」
そういうヤツ? なんだか知らないが、無性に否定したくなってくるな。
だがそこは冷静に、<千思万考>を用いて情報の整理を…………ああ、そういうことか。
「やれやれ、ナックルも奥さんと娘が居る身だ。思考が鈍っていてもおかしくはないか」
「はっ? おい、それってどういう──」
「どうせ俺が鈍感とか、そんなことを考えていたんだろう? 勘弁してくれよ、俺がモテるのは自由民の眷属だけだよ……まあ、言うのは恥ずかしいけどな」
「……いや、なんでそれだけの推理力があって、そういうことは分かんないんだか……」
ボソリと言ったナックルの言葉は、通常状態の俺の耳には入ってこなかった。
なので結界を解除して、さっさとアンケートを始めることにする。
──二人にとって最高のスキル、いったいどんなものになるんだろうか?
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