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偽善者と暗躍の日々 十八月目

偽善者と従魔特訓 中篇

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 それからというものの、イアの従魔たちは何度も死に続けた。
 教官はどいつもこいつも超一流だが、それは教えることではなく戦うことのだ。

 ──全員が全員、教える才能を持ってはいなかった。

 それでも、イアけいやくしゃが居れば蘇るので、再び強くなろうと教官の下へ向かう。
 どうしても自分に合わないのであれば、また別の者の下で異なる術を学ぶだけだ。


「あ~、というわけで無事君たちは強くなったと思う。誇っていいぞ、地獄のような日々のすべてを、君たちは乗り切ったのだ!」

『~~~~!』

「進化をした者も居るだろう、職業を変えた者も居るだろう。変化は千変万化ではあるものの、その旨に秘めた想いは変わらないはずだ──そう、すべては主を守るため!」

『~~~~!』


 声を出さない従魔も含め、テンションが相当上がっている気がする。

 意味も無い演説に顔を赤めるイア、まあ自分の配下が何を言いたいのか……指輪の翻訳機能を作動させれば分かるからな。


「今回はその総仕上げといこう! 生き残ることができれば、間違いなく君たちはイアを守る騎士ナイトとなることができるだろう!」

『…………』

「今こそ試練の時、超えられるモノならば超えてみせよ! ──さぁ、始めよう!!」

『~~~~~~~~~~~!!』


 やる気に満ち溢れた彼ら。
 そこまで召喚獣に慕われているのか、そうイアに【嫉妬】を感じずにはいられないが試練を始めることにした。

 まずはそれぞれが弱点とする分野で戦わせて、その対応を見る。
 そこで問題が発覚すれば、再びトレーニングに逆戻りだ。


「さて、それじゃあ始めるとしようか」

「ええ……けど、それって何?」

「魔武具『アーケイナム』だ。これを振るうと悪魔がほぼノーコストで召喚できる。あとはそれを使って、戦わせるだけだ」


 形状を錫杖モードにして、カンカンと二回地面に打ち付ける。

 輪っかがシャランと妖しい音を立てると、魔法陣が浮かび上がり──悪魔たちが中から出現された。


「さぁ、それぞれが苦手だと思う分野で攻め立てろ! 報酬は俺の魔力を前払いだ!」

『ハッ!』

「……ずいぶんと嫌な悪魔ね」

「そういう認識だろ? 悪魔は契約に忠実、けど残忍だったり人を人とも思わない残虐なことを平気でやったりする……人が小さな虫に、関心を持たず殺すようなものだろう」


 もちろん、全然違うのだけれど。
 悪魔は人を人だと分かっているうえで、そういったことをやっているのだから。

 だが、今回はそれを乗り越えてこその試練なのでむしろウェルカムである。


「悪魔にも種類があるが、見ての通り彼らは中級悪魔だ。さすがにアレを相手にあっさりと破れるようなヤツはいないと思うぞ」

「けど、ちゃんと戦えているわ。ここ数日の特訓は無駄じゃなかったのね」

「そうじゃなきゃ、時間を割いていたこっちが溜まったもんじゃないよ。しっかりとイアに成果をアピールして、授業料を払ってもらわないとな」

「……分かってるわよ」


 ギュッと体を抱きしめだすイア……おいおい、三の女に手は出さないぞ。


「何を勘違いしているかはしらないが、とりあえずイアには他の祈念者の育成を手伝ってもらいたい。従魔も進化して能力に変化が生じている、そういう部分を教えてやることで分かるナニカがあるはずなんだ」

「……例の『月の乙女』って所?」

「知っていたのか。まあ、ユウとかアルカもやっていることだ、せっかくだしどんな奴らか調べに行くのもいいかもな。ただ、召喚獣とはしっかり戦わせてもらうが」

「はいはい、了解了解。あんたの次の口説く女を見てくればいいんでしょう?」


 まったく違った見解をしているイア。
 さっきから何を……って、次?


「あら、まだ眷属にしていなかったの? 本当に力を貸したいって思っているなら、最初の二人──オブリちゃんとティンスちゃんみたいに、結晶でもなんでも押しつけてやればいいじゃないの」

「……ユウとアルカで反省したことだが、一集団の中で特定の誰かだけに干渉するのって不和の原因になるんだよな。だから贔屓に差はあろうとも、可能な限り全員の要望に応えるようにしているんだぞ」

「ふーん、ずいぶんと楽しそうですね。こちとら未だに認識偽装が無いと、街を堂々と歩くこともできない身だっていうのに」


 召喚獣たちの方に視線を向けたまま、イアは俺にそう告げる。
 彼女はどこかの女神に呪いを掛けられ、自分の顔を見た者を魅了してしまう……みたいな感じになっていたんだっけ?

 今さらだが、それって運営神と関係があるのだろうか?

 もしかしたら運営神の配下の神なのかもしれない……そういう存在も居ると、配下ゼロのリオンが言っていたし。


「……おっと、さすがに中級悪魔じゃ眷属の厳しいしごきを受けたアイツらを止めることはできなかったいだな。よしよし、それじゃあ次の試練を始めようか」

「…………バカ」


 後ろで何を言っているのか、とりあえず耳にしなかったことにしておこう。
 というか、こういうことはあんまり言わない方がイイらしいし。

 黒色の魔本を開き、とあるページを見つけて記された召喚陣をそらに描く。
 そしてそこから飛びだすのは──巨大な方舟である。


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