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偽善者と暗躍の日々 十八月目

偽善者と自己紹介 その32

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 夢現空間 居間


 井島に行って、『術』を理解した。
 特に忍術は職業スキルで得ていた能力と近しいモノがあったので、片方がもう片方を模しているのかも……なんて考えていると、時間が早く過ぎ去っていく。


「──というわけです。ちなみにこの話をカナタにしたところ、理屈は良いからさっさと使えるようにしてくれと言われたな」

「まったく、マスターらしいです。昔からいつもそうなのですよ、自分のやりたいことを言うだけ言って……面倒になったらワタシに丸投げ。もう、困ったマスターです」

「とても嬉しそうだな。なんだか尽くすことに生き甲斐を感じているみたいだ」

「ふふっ、たしかに。そもそもそういった風に生みだされた存在ですので。たとえ人型になろうと、本質は変わりません」


 仕えるために生みだされた彼女は、本来無機質な球体でしかない。
 それを人形に押し込み、人としての姿を与えたのは俺の身勝手である。


「本質といえば……カナタって、時々どっちとして扱っていいか分からなくなるときがあるんだよなー」

「ワタシからすれば、どんなマスターであれマスターはマスターですけど……どちらでも構いませんし」

「俺はさすがに気にするからな。ときどきだが、こう……怒鳴ってくるんだよ、顔を真っ赤にして。ちょっとからかっているときなんかが多くて、いきなりそうなるから俺にも責があるのかなーなんて」

「……ああ、なるほど。マスターを少しばかり調きょ……教育しますので、お時間を頂けないかと」


 なんでそんな発想に至ったかは分からないが、俺にはそれを放置せざるを得ない。
 二人の関係は俺とのモノよりも深いものだし、互いに信頼しきっている。

 ──色んな意味で、無粋な真似はしない。


「さぁ、それでは始めましょう──第三十二回質問ターイム! 今回のゲストはこの方、カナタの腹心にして迷宮の意思──迷宮核ダンジョンコアのコアさんです!」

「はい、コアです。名前の由来などと深いモノはなく、ただマスターがコアだからコアと名付けられたコアでございます」

「わざわざご説明ありがとうございます。それではさっそく、始めましょうか!」

「よろしくお願いします」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「問01:あなたの名前は?」

「改めて……コアです」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「もともとは無性で今は女性型、出身地はマスターの迷宮『天獄の塔』、生年月日はこの世界基準で神歴1908年12月20日と記憶しております」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「真っ白な肌と黒髪、それに鸚緑色の瞳。マスターのアバターが少女のエルフであれば、ワタシの素体は大人のエルフです」


「問04:あなたの職業は?」

「マスターと同じ【迷宮塔主】です」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「冷静沈着です。マスターと違い、ワタシにはそれを言う資格があるかと」

「まあ、ずっとカナタを支えていたからな」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「迷宮の管理です。マスターが築き上げたモノ、それだけで愛おしいですので」


「問07:座右の銘は?」

「縁の下の力持ち。マスターの支えとなるよう慢心していきたいです」


「問08:自分の長所・短所は?」

「元無機質なコアのため、時に考えが非情となることです。この世界に来て、マスターも変わられましたので……同じようにワタシも変わる必要ができました」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「好きなものはマスター、嫌いなものはマスターの迷宮に近づく侵入者です」


「問10:ストレスの解消法は?」

「マスターをからかいます」


「問11:尊敬している人は?」

「マスターですね」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「そうですね……マスターをからかう際、怒られるギリギリを見極めることでしょうか」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「マスターです」


「問14:あなたの信念は?」

「どんなことがあろうと、マスターを迷宮と死を共にさせないことです」


「問15:癖があったら教えてください」

「マスターを前提に何かしらの物事を考えてしまうことでしょうか?」

「そういう存在だからだな」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ツッコミですね。ただ、マスターとの会話に限りボケです」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「マスターがワタシにコアと名前をお与えになられたときです」


「問18:一番困ったことは?」

「メルスさんが迷宮の最上階に現れたときです。あれが初めてでしたので」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「マスターに合わせ、お酒は呑んでません。マスターはアルコールが入っていると、気づいていませんでしたけどね」


「問20:自分を動物に例えると?」

「そもそも無機物だったのですが……」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「ありませんね。コアという名前がとても分かりやすいので」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「マスターを守り切れず、メルスさんの最上階への侵入を許してしまったことです」

「なんでだ?」

「相手が悪意を持っていれば、あの時点でマスターは死んでいました」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「メルスさんでも踏破困難な迷宮を築き上げることです……マスターといっしょに」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「マスターに捧げるものです」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「より迷宮を強化したいです」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「先ほどの質問と同じです」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「その方法が見つかっていないことです」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?」

「ありません」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「マスターといっしょの学校に行ってみたいですね」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「これまでと矛盾していますが、マスターと共に死にたいです」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「マスター。ワタシはマスターのために存在し、マスターを心の底から愛しております。ですが、マスターはワタシを心の底から受け入れてはいただけませんね」


「問32:最後に何か一言」

「どうかぜひ、受け入れてください。きっと悪いモノではありませんよ?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はい、カット! ……コアさんや、それってもしかして……」

「もちろん、マスターをお救いしてくださったメルスさんにも感謝しております。さすがにマスターよりも好き、とは言えませんがその次ぐらいには。マスターと二人でお世話をするのであれば、いつでも構いませんよ」

「…………カナタ次第だな」


 アイツがそういう夢を見たいのであれば、俺も協力はしよう。
 たとえどんな結果になろうと、コアさんとカナタの絆は絶対なのだから。


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