1,159 / 2,518
偽善者と還る理 十七月目
偽善者と死者の都 その06
しおりを挟むアイが戻ってくる前までに、アンデッドたちの種族や職業の情報などはある程度収集が終わっていた。
中には伝承が途絶えていた英雄に関する情報を提供してくれた者が居たな……ネロとそのうち漁ってみるつもりだ。
さて、現在はアイと会話中。
話の流れで『超越種』の役割について訊けるようになったので、もののついでで他の存在について訊いてみたところ──
「私たち全員が繋がっているわけではありませんよ。ただ、接触したことのある方が少しだけおります。そういった情報でも構わないでしょうか?」
「うん、どんなささいなことでも教えてもらえると嬉しいな。取り捨てはこっちの方でやるからさ」
「分かりました。では、ご説明しますね」
それから聞いた情報は驚きの連続だ。
アイが別の『超越種』と接触した際、現在神から役割を賜った『超越種』の数を明確に伝えられたんだとか。
その数──七体。
アイ同様に運営神が乗っ取ったこの世界を維持するため、陰ながら頑張っていると。
まあ、『超越種』は種族限界レベルである250を突破したうえで、なんだか特殊な力が使えればいいみたいだしな。
今回の七という数字は、あくまでもお仕事に励んでいる者の数なだけだ。
俺やリアなどの『超越者』はそこにカウントされてはおらず、あくまで魔物型の存在だけで構成されているんだとか。
「私のことである『還魂』に加え、直接会った『神判』、『救世』、『融蝕』。あとは彼らから聞いた『夢幻』、『宙艦』、『無双』が居ます」
「なんだか凄そうな名前ばっかりだね」
俺個人としては、どれもこれも気になるのだが……『夢幻』が一番だな。
スキルとして{夢現空間}を持つ者として、なんだかピンとくるものがある気がする。
「アイちゃんが会った三人(?)はどんな性格だったの? アイちゃんは優しいし、みんなそんな感じなの?」
「いいえ、そうでもありませんよ。『神判』は自己中心的、『融蝕』は傲慢不遜でしたので……。『救世』だけは、それなりに話が合いましたけど」
「へ、へぇ……そ、そうなんだ」
「そうなんです、そうなんですよ!」
それから始まるのは愚痴の嵐。
やれまったく話を聞かないだの、やれ止めても聞いてくれないだの……色物ばかりで構成されていると思ってしまうのは、俺の感性がおかしいからだろうか?
けど、そもそも俺に『神々の注目』などといういかにも観ていますという称号を与える集団なので、一つ考えが浮かぶ。
もしかして『超越種』って、何かしらの問題を備えているんじゃないか?
「…………」
「どうかしましたか?」
「う、ううん! な、なんでもないよ……ところでアイちゃん、この街ってどういう経緯で造られたの? アイちゃんが造ろうって指示したってのは聞いたんだけど」
「ええ、それは──」
とりあえず、こういうときは話を逸らすに限るだろう。
見た限りアイに問題は見受けられないが、俺の感性からしたらというだけで、もしかしたらあるかもしれないし。
盛り上がった祭り騒ぎは幕を閉じた。
俺も出せる限りの食材を出し尽くし、自然解散と言う形に持っていった……もちろん食材云々は適当だが。
そのあともかなり街に居たのだが、異なる時間の速さで生活しているプレイヤーたちにとって、間もなく学校終わり頃の時間となったので別れることにした。
「メルちゃんもそういえば祈念者でしたね。あまりに共に居る時間が長かったので、つい忘れていました」
「私も自覚がだんだん薄れてきちゃっているけど、たしかにそうだったね。アイちゃんたちは、祈念者のことをどう思っているの?」
「……ごめんなさい。禁則事項に反しているので、メルちゃんにも教えてあげられないようです。そう考えると、やっぱりメルちゃんは祈念者なんですね」
「本当にそうだったんだね。私個人として、あんまりそう認識できないことばっかりだったし……」
思い返せば、『AFO中毒』などという称号が手に入ったな。
一定時間プレイしていると強制ログアウトとなる制限があるなか、なんらかの方法でそれを突破すると手に入るのこの称号。
──これもマーキングだったのでは?
手に入れる奴は確実に限られている。
そして称号とは、その者の経歴そのものと言っても過言ではない。
今さら気にすることでもないが、祈念者に関する認識って何で知るのだろうか。
「アイちゃん、アイちゃんは私のことを殺そうとはしないの?」
「──はい? えっと、なぜですか?」
「私は運営神から邪縛を受けているし、終焉の島からいろんな人を解放しているよ?」
「そうですね……あの候補を解き放ったことだけは問題ですが、世界に悪影響を及ぼしたわけでもありませんし、咎めることでもありませんよ。それに、私個人もメルちゃんを気に入っていますので」
候補? 思い当たるのは、異常個体である三人のうち誰かだな。
リアは童話クエストの候補だったし、該当しないだろう。
その中で、レベルが異常だったのは……どうやらドMのことらしい。
「ありがとう、アイちゃん!」
「ふふふっ、いずれまた逢うことになるかもしれません。そのときは──私の試練を受けてくださいね」
「試練?」
「それは次に会ったときにご説明しますよ。また逢える日を、楽しみにしています」
試練、試練ねぇ……また面倒なフラグが勝手に立ちやがったよ。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる