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偽善者と還る理 十七月目

偽善者と死者の都 その06

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 アイが戻ってくる前までに、アンデッドたちの種族や職業の情報などはある程度収集が終わっていた。
 中には伝承が途絶えていた英雄に関する情報を提供してくれた者が居たな……ネロとそのうち漁ってみるつもりだ。

 さて、現在はアイと会話中。
 話の流れで『超越種スペリオルシリーズ』の役割について訊けるようになったので、もののついでで他の存在について訊いてみたところ──


「私たち全員が繋がっているわけではありませんよ。ただ、接触したことのある方が少しだけおります。そういった情報でも構わないでしょうか?」

「うん、どんなささいなことでも教えてもらえると嬉しいな。取り捨てはこっちの方でやるからさ」

「分かりました。では、ご説明しますね」


 それから聞いた情報は驚きの連続だ。
 アイが別の『超越種』と接触した際、現在神から役割を賜った『超越種』の数を明確に伝えられたんだとか。

 その数──七体。

 アイ同様に運営神が乗っ取ったこの世界を維持するため、陰ながら頑張っていると。
 まあ、『超越種』は種族限界レベルである250を突破したうえで、なんだか特殊な力が使えればいいみたいだしな。

 今回の七という数字は、あくまでもお仕事に励んでいる者の数なだけだ。

 俺やリアなどの『超越者』はそこにカウントされてはおらず、あくまで魔物型の存在だけで構成されているんだとか。


「私のことである『還魂』に加え、直接会った『神判』、『救世』、『融蝕』。あとは彼らから聞いた『夢幻』、『宙艦』、『無双』が居ます」

「なんだか凄そうな名前ばっかりだね」


 俺個人としては、どれもこれも気になるのだが……『夢幻』が一番だな。
 スキルとして{夢現空間}を持つ者として、なんだかピンとくるものがある気がする。


「アイちゃんが会った三人(?)はどんな性格だったの? アイちゃんは優しいし、みんなそんな感じなの?」

「いいえ、そうでもありませんよ。『神判』は自己中心的、『融蝕』は傲慢不遜でしたので……。『救世』だけは、それなりに話が合いましたけど」

「へ、へぇ……そ、そうなんだ」

「そうなんです、そうなんですよ!」


 それから始まるのは愚痴の嵐。
 やれまったく話を聞かないだの、やれ止めても聞いてくれないだの……色物ばかりで構成されていると思ってしまうのは、俺の感性がおかしいからだろうか?

 けど、そもそも俺に『神々の注目』などといういかにも観ていますという称号を与える集団なので、一つ考えが浮かぶ。

 もしかして『超越種』って、何かしらの問題を備えているんじゃないか?


「…………」

「どうかしましたか?」

「う、ううん! な、なんでもないよ……ところでアイちゃん、この街ってどういう経緯で造られたの? アイちゃんが造ろうって指示したってのは聞いたんだけど」

「ええ、それは──」


 とりあえず、こういうときは話を逸らすに限るだろう。
 見た限りアイに問題は見受けられないが、俺の感性からしたらというだけで、もしかしたらあるかもしれないし。





 盛り上がった祭り騒ぎは幕を閉じた。
 俺も出せる限りの食材を出し尽くし、自然解散と言う形に持っていった……もちろん食材云々は適当だが。

 そのあともかなり街に居たのだが、異なる時間の速さで生活しているプレイヤーたちにとって、間もなく学校終わり頃の時間となったので別れることにした。


「メルちゃんもそういえば祈念者プレイヤーでしたね。あまりに共に居る時間が長かったので、つい忘れていました」

「私も自覚がだんだん薄れてきちゃっているけど、たしかにそうだったね。アイちゃんたちは、祈念者のことをどう思っているの?」

「……ごめんなさい。禁則事項に反しているので、メルちゃんにも教えてあげられないようです。そう考えると、やっぱりメルちゃんは祈念者なんですね」

「本当にそうだったんだね。私個人として、あんまりそう認識できないことばっかりだったし……」


 思い返せば、『AFO中毒』などという称号が手に入ったな。
 一定時間プレイしていると強制ログアウトとなる制限があるなか、なんらかの方法でそれを突破すると手に入るのこの称号。

 ──これもマーキングだったのでは?

 手に入れる奴は確実に限られている。
 そして称号とは、その者の経歴そのものと言っても過言ではない。

 今さら気にすることでもないが、祈念者に関する認識って何で知るのだろうか。


「アイちゃん、アイちゃんは私のことを殺そうとはしないの?」

「──はい? えっと、なぜですか?」

「私は運営神から邪縛を受けているし、終焉の島からいろんな人を解放しているよ?」

「そうですね……あの候補を解き放ったことだけは問題ですが、世界に悪影響を及ぼしたわけでもありませんし、咎めることでもありませんよ。それに、私個人もメルちゃんを気に入っていますので」


 候補? 思い当たるのは、異常個体である三人のうち誰かだな。
 リアは童話クエストの候補だったし、該当しないだろう。

 その中で、レベルが異常だったのは……どうやらドMソウのことらしい。


「ありがとう、アイちゃん!」

「ふふふっ、いずれまた逢うことになるかもしれません。そのときは──私の試練を受けてくださいね」

「試練?」

「それは次に会ったときにご説明しますよ。また逢える日を、楽しみにしています」


 試練、試練ねぇ……また面倒なフラグが勝手に立ちやがったよ。


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