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偽善者と還る理 十七月目
偽善者と自己紹介 その29
しおりを挟む夢現空間 居間
お菓子作りに没頭した先日、ついでと思いいくつか作成しておいたお菓子をコタツの上に並べておいた。
ただ、今回のゲストはそれよりもある物を混ぜたジュースを好んでいるようだ。
「……それさ、本当に美味しいのか?」
「はい! この濃すぎない味、さっぱりとしながらも喉に程良く残る感触──なんとも言いがたい素晴らしいものです!」
「いやまあ、用意した側からすれば喜んでもらえて何よりだが……料理もへったくれもないからな」
真っ赤なジュースを飲み干したゲストのグラスに、少しだけ味を変えた液体を再び注いでいく。
「では、頂きます」
「…………どうだ?」
「~~~~~~! 先ほどとは異なるマイルドな味わいが最高です! ……ちょ、直接頂いてもよろしいでしょうか?」
「それはまたあとでな。ここで使い物にならなくなると、後に詰まるし」
分かりました、といいながらも目に見えてしょんぼりとするゲストのためにも、さっさと始めよう。
「それじゃあ始めるか……第二十九回質問タイム! ゲストはこの方──太陽と月に愛されたフィレルさんです!」
「視聴者の皆さま、短い間ですがよろしくお願い致します」
「はい、とても丁寧なご挨拶でした……初対面の頃とは大違いです」
「あ、あのときは……もぉう、旦那様!」
アレはもう酔ったとき以外は見なくなったな……うん、血でも酒でもなるけどさ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「フィレル=エルグーンです」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「女、小さな浮遊島……詳細は教えてもらえませんでした。生年は内緒にして、月日は9月4日です」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「髪と平時の瞳は薄黄色、鱗と吸血鬼の力を使う時の瞳は鮮紅色。少し鋭い犬歯が生えていて、龍の翼と蝙蝠の飛膜、それにその二つの性質を兼ね揃えた翼を生やせます」
「なお、現在はジュースの影響で紅いです」
「問04:あなたの職業は?」
「(光闘士)という職業です。立場的なものであれば、あの都市が墜ちるまで守護者の地位に就いておりました」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「直情的、ですね……旦那様にもご迷惑をおかけしてしまいましたし……」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「血からその持ち主の年齢や性別、種族や健康状態が分かります」
「……それは種族としての性質だろ?」
「問07:座右の銘は?」
「捲土重来。もう失敗しません、絶対にあの娘を守り抜いてみせましょう!」
「問08:自分の長所・短所は?」
「長所はすぐに動けること、短所は周りを見ていないことです」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなものは旦那様とあの娘の血です。嫌いなものは低位の魔物の血です」
「……アイリスのもか。なら、同じ異世界人のカナタの血って美味しいのか?」
「いえ、コア様が頑なに防いでおりまして」
「問10:ストレスの解消法は?」
「あの娘といっしょに話すことです」
「問11:尊敬している人は?」
「旦那様もそうですが……やはりあの娘の行動力はいつも尊敬しています」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「あっ、それはもちろん血と日光浴です。日当りのいい場所で吸う血もなかなか乙なものなんですよ?」
「吸血鬼なのに日光浴……知らないヤツが聞けば、絶対に首を傾げるよな」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「一纏めにして家族、でしょうか? さまざまな血を吸っている私だからこそ言えることですが、血よりも深い関係で結ばれる家族もいるのですね」
「問14:あなたの信念は?」
「あの娘を守り抜く。今度は誰かと共に、協力をして……」
「問15:癖があったら教えてください」
「あの娘からすると、旦那様とあの娘を見る目が時々おかしいそうですが……実際、どうなのですか?」
「ああ、うん。捕食対象」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコミですよ」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「あの娘とまた逢えたときですね」
「問18:一番困ったことは?」
「あの娘から都市の守護を任されたときでしたね。あの頃はまだ荒々しい時期でしたし、戸惑いました」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「どのお酒かなんて関係ありません。旦那様とあの娘の血を混ぜたものであれば、どのような安酒であろうと、最高級品のワインを超越した逸品となります!」
「お、おう……」
「問20:自分を動物に例えると?」
「蝙蝠でしょうか? 吸血鬼ですし」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「先の通り、元は守護者でしたね。今ではただの血狂いですよ……ふふっ」
「止めて、舌舐めずりしないで」
「少しぐらい好いではありませんか……旦那様。ささっ、どうか血を」
しばらくお待ちください
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ……というか、さっきの行動を反省しろ」
「それは反省しませんが……あの娘の都市が墜ちたあのときの行動は、反省すべきことだと分かっています」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「いつかあの都市をまた浮かべ、あの娘に見せてあげたいです」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「あの娘の……そして、旦那様のためのものです。人生ではなく、吸血鬼生か龍生ですけれどね」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「都市を守り抜きたかったですね」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「とりあえず、あの神々には滅んでもらうことにしましょう」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「その神の特定ができていないことですね。いっそ、すべて滅ぼしましょうか?」
「いや、止めてくれよ」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「磔にされている間、何度も何度も思っていました」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「生まれ変わったあとのあの娘と同じ立場になって、支え合いたいです」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「あの娘が死ぬようなことがあれば、それを見守ってから死にたいですね」
「……あんまり、死んでほしくはないけど」
「可能な限り努力はします」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「アイリス、あなたと逢えてよかった……」
「問32:最後に何か一言」
「旦那様、いつもお傍に……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はい、カット! なんだかシンプルな一言だったな」
「そうでしょうか?」
「ああ、少なくとも俺は{感情}が無かったら顔が真っ赤になってたな」
「まあ、それは惜しいことを」
何が惜しいかは……なんとなく分かるのでこれ以上訊かないでおこう。
後悔するというか、抜けられない場所に埋まってしまう感じがするからな。
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