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偽善者なしの捜索劇 十六月目

偽善者なしの赫炎の塔 その13

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 六階層は至る所で鍵が出現し、そのすべてが集まることで本物の鍵が手に入る……という仕掛けであることがのちに判明する。
 本来であれば苦労するのだが、すべてを倒していた彼女たちには関係なかった。

 そして、辿り着いた七階層。
 設置された扉は四枚──それぞれに辰、尾に蛇を生やす亀、鳥、虎のシルエットが描かれている。

「定番から言えば──青竜、玄武、朱雀、白虎が出てきそうだねぇ。けど、こっちの世界の人がそれを知ってるのかな?」

「そうですね……シュカさん、聖炎龍以外に世界を守る存在は居ますか?」

「……い、いないと思うが……こっちの世界とは、どういう意味なのだ?」

「ご説明は後ほど。と、なると可能性はかなり絞られますね……とりあえず今は、誰がどこへ行くかですね?」

 扉は四つ、しかし分けられた編成では三つしか同時に入ることができない。
 だが、リュシルはそれを気にしているわけではない。

 複数の人数が必要となる仕掛けなど、何度も経験していた。
 四体の守護獣に関する文献はすでに閲覧済みなリュシルは、このメンバーが最高の戦いができる配置を考える。

「青竜はユラルさんとリュナさん、玄武はアリィさん。朱雀はアイリスさん、白虎は私とシュカさんで行きましょう」

「……大丈夫なのか? 扉の数からして、おそらくこれまでよりも強大なはずでは」

「問題ありませんよ。それだけの力を、私たちは持ち合わせていますので」

「そう、なんだろうな」

 獣人であるリュナに眠る野生の勘、それが彼女に彼女たちの真価を告げていた。
 膨大な力を制御したうえで、さらに縛りを設けることでより高みを目指す者たち。

 それを行うだけの実力があり、決して死ぬことがないという自信を持っているのだ。

「すぐに終わりますよ。では、皆さん決して傷つかないように・・・・・・・・

「傷? 死なないように、ではないのか?」

「私たちの場合は、これでいいんです」

 首を傾げるシュカ、だがそれに答えてくれる者は誰も居ない。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 青竜の間

 青色の扉を開いた先、そこには川のせせらぎと木々の間から差す木漏れ日が癒しを生みだす小さな箱庭があった。

「ここは……」

「ふむふむ、青色だから水。青竜だから木なのかな? 精霊たちも喜んでいるみたい」

 樹聖霊であるユラルの瞳は、精霊たちが穏やかに活動している様子を映しだす。
 また、リュナにとっても、この場所はそう悪くない場所であると本能が告げていた。

『そう言ってもらえると、幸いだな』

「!」

「アナタが青竜さん、なのかな?」

『そうだ。私がこの地を統べる者、東を守護する青き竜である』

 そこに居たのは──小さなぬいぐるみだ。
 緑色の鱗を生やした、温厚な瞳を持つ辰の人形だった。

「緑……」

「うーんとねぇ、昔は緑色を青って言っていたんだよ。だから、青竜さんは緑色をしているんだよ」

『ほぉ、それを知っているのか聖霊よ。今の世にそれを知る者はなかなか少ないと聞いていたのだが──違和感を感じるのであれば、こちらの色にしておこう』

 青竜がそう言うと、鱗の色を青色に染めて再び言葉を──動いていないが──話す。

『ここには何のようだ?』

「私たちは上の階層に行きたいんだけど……戦わない方法ってあるのかな?」

『無論だ。私たち四獣それぞれに、それを可能とする方法がある。私の場合は──探し物がそれに該当する』

 探し物? と首を傾げる二人に青竜はその詳細を説明する。

『ルールは簡単だ。私の指定するモノをここに持ってくればよい。ただし、環境に害を与えた場合は即失格。その場合は、私との戦闘が強制的に始まると思え』

「分かった。それで、何を探せばいいの?」

『挑むたびに求められるモノは変わる。今回は──『青き果実』だ』

青き・・、果実?」

 リュナがそう尋ねると、青竜は少し噛み砕いた説明を行う。

『そこの樹聖霊であれば突いてきそうだから予め言っておく。早熟した実、というわけではなく青色の果実というわけだ……なのでその果実は、もう少し熟成してから頂きたい』

「うん、分かった」

 作ろうとしていた果実を急速に熟成させると、青竜の口に──

「これって、そのまま口に繋がるの?」

『そうだ。試験の合否も、この分体に果実を入れることで確認できる』

「ふーん、じゃあまずはこれをね」

 改めて口の中に実を入れると、吸い込まれるように果実は消え──ブッブーという音が辺りに響き渡る。

『すまん、そういう仕様なのだ。改めて、果実を入れてほしい』

「青き果実か……それって、そもそもこの部屋のどこかにあるの?」

『…………』

「それは言えないんだ。そうだ、リュナンもこれ食べる?」

 コクリと頷くリュナに、ユラルは先ほど生みだした果実を再び用意して差し出す。
 これはいくつかの果物の成分を併せ持ち、かなりの糖度を誇る果実であった。

『うむ、試練が果実の美味しさで測られるものであったならば、文句なしの合格だ』

「ありがとう。なら、こっちもどうぞ」

『うむ……さすがは樹聖霊。どのような品であれ、美味しくできるのだな』

「これは、契約者の世界で作られている高級な果実なんだよ──メロンって言うんだ」

 緑色・・のメロンが青竜の口に入った瞬間、辺りにピンポーンという音が鳴り響いた。

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