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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目
偽善者と育成イベント完結篇 その09
しおりを挟む「この姿でどうだ?」
「ブフッ!」
変身魔法は使えないので、あくまで光精霊による光の屈折による幻影だ。
数体に同じ指示を出しているので、ブレなどは確認できないだろう。
声も風精霊に任せているので、限りなく元となった存在たちに似せている。
「お、お前……その姿」
「さすがにモンタージュが難しかったが──どうだ、似てるか?」
「気持ち悪い……わけではないが、なんだか不思議な感覚だ。上手く混ざっているのが逆に妙というか」
「そんなもんだろ。まあ、顔を合わせたことのない新人の分までは無理だったけどな。撲滅イベント時のメンバーくらいまでなら、どうにか収まったよ」
男とも女とも言える中性的な顔立ちの中には、さまざまな年代の顔の輪郭が存在する。
そのため各パーツごとに年齢をチェックしてみれば、みんなバラバラの結果になってしまうかもしれない。
声もまた、誰か一人ではなく複数人の声を纏めて不快感のないように発している。
こちらはさすがに、全員同時とまではいかないようだった。
「誰も文句は言ってこないし、まあそのままでいいだろう」
「すぐに言いそうなあの二人が、お前の作ったグループの所に行っているからな。というか、ギルドとして纏めろよ。集まってはいてもギルドが無いから、スカウトが面倒だという話を聞いたことがあるぞ」
「アイツらも苦労しているんだな……まあ、労いのアイテムでもプレゼントしとくよ。それより今は、お前たちのことだ」
「……俺としては、その星のダンジョンとやらが物凄く気になるんだが」
ああ、たしかにそんな説明したな。
けどまあそれって、レン次第になることだし──口先だけの男なのさ、俺って奴は。
「過去のことは忘れようぜ。大切なのは今、無いモノをどれだけ思おうと想いが届くはずないだろう」
「……もともとあんなにダンジョンに行けるのは、他の誰でも無いお前のお蔭だ。これ以上のダンジョンは要らない…………というわけでもないが、今は置いておく」
「ああ、賢明な判断だ」
ナックルに未公開の迷宮なんて、まだまだたくさんあるのは秘密だ。
あくまで第四世界──迷宮都市を築いたのは国民のため、決してプレイヤーの私利私欲のためではないのだから。
「ナックル、空飛ぶ船でどこまで行った?」
「いちおうは新大陸を見つけた。ただ、元の大陸での冒険もある分、チームが二分されることも考えて週割りでの調査だけどな」
「へー、本当に行ったのか……アナウンスが来ない時だったのか気づかなかったや」
さすがに世界を超えてまで、アナウンスの声は響いてこない。
第一世界などでも、故意にAFO世界と繋がる穴を開けないと聞こえてこないし……隔離されているんだよ。
「なんで頼んだお前が知らないんだよ」
「気にすんな。過去がどうあれ、今知ったんだから問題ないだろ?」
「……まあ、それがお前だったか」
ナックルからの不当な評価がひどい。
周りを見れば、なぜか同じように頷いている奴ら……なぜだろうか。
「あー、それがお前らのやり方かー」
「……ツッコミぐらい、もう少し真面目にやればどうなんだ?」
「ボケじゃないから気にするな。それよりもだ、今回のイベントはどうだった?」
「むしろ、それは俺たちの台詞なんだがな。どうして何もできないよう、アルカが封じていたはずのお前が働いてたんだよ」
思考の天才、アルカによる一大プロジェクトだったらしいが……その大半が俺を封じておくことを前提としていたらしい。
やる気が【怠惰】モードの俺ならば、たしかに何もしなかったかもしれないな。
「というかだよ、イベントなんて別に一つだけしかないなんて方がおかしいだろ? 悪役だけのクエストとか、主人公キャラが初めて出すクエストとかさ」
「挙げる例がアレだが、まあそうだよな」
「なんかさ、そっちの方が面白いと思わないか? もう一つの戦い、とか語られない戦いとかさ」
「……ああ、思う」
互いに手を組み交わし、思いを重ねる。
迷宮好きなコイツであれば、きっと理解してくれると思った。
そう、男とはいつまでもロマンを求めたくなる生き物なのだ。
「──さて、話を戻そう。ナックル、ギルドにメンバーが増えているよな? 別に説明も何も要らないけどさ、何か面白いスキルでも覚えているのか?」
「模倣する気か?」
「『模倣者』だしな」
素晴らしきチートボディは、視ただけで他者のスキルをコピーすることができる。
そして最強ギルド『ユニーク』のメンバーは、才能があるのか優秀な人材が揃う。
これらを組み合わせれば、俺だけが得する無限ループが誕生するわけだ。
もちろん、リーダーを通じて報酬は渡しているけどな。
「固有スキル持ちはいないぞ。ただ、派生スキルがそれなりに優秀だ。……今まで訊いてこなかったが、お前のメインスキル枠ってどれだけあるんだ?」
「ん? 無限だけど」
「…………」
視線が冷たい、絶対零度級なんですけど。
まあ、今のプレイヤーの最大数は分からないんだよな──今いくつなんだろう?
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