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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目

偽善者と育成イベント終盤戦 その16

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 ナースとコルナを引き連れ、神殿内へ侵入することには成功した。
 だが入れたと言っても入り口に、というだけでそこには大量の魔物たちが……。


「ナースよ、すべてを蹴散らせ!」

『おーーー!』

『わ、わたしだってやるわよ!』


 コルナがナースに触発され、頼んでもいないのに働いてくれるのはありがたい。
 俺に彼女への命令権は無いので、本来であれば必要となったときに頼むぐらいしかできなかったわけだし。

 もはや完璧に虚空魔法を操っているナースは、お手玉のように虚空属性の魔力を広げて魔物たちへぶつけている。
 コルナもコルナでナースの真似でもしたいのか、無属性ベースで魔力を束ねて擬似的な“虚無イネイン”を再現しようとしていた。


「まあ、好きにするがよい」


 俺もまた、魔物の殲滅を行う。
 空の上ということで漂っている風の精霊たちを集め、魔法を使わせる。


「──“合精霊創造クリエイトエレメンタル空風少女エアリアルシルフ”」


 ついでに下級の風精霊も束ね、ほっそりとした空気の羽を持つ少女の合精霊にする。
 合精霊はスイミーの要領で作った上級精霊だが、指示さえちゃんと行えばそのすべてが上級級の仕事をしてくれるから楽だ。


「やれ、吹き散らかせ」


 ナースとコルナがわいわいと盛り上がっている中、黙々と精霊を呼びだしては指示を出していく悲しい魔王。
 いや、別にいいんだけどさ……軍勢を使役する魔王ってみんなこんな気分なの?


「……今度、ネロに訊いてみるか」


 過去のマッドなだけのアイツでは気にしないだろうが、今の感情豊かなアイツなら思うところがあるかもしれない。
 晩酌(つまみを食うだけ)のおかずには、ちょうど良い話だろう。



 破壊活動を続け、かなり進んだと思う。
 その間も素材はバッチリと(自動解体)スキルを使ってゲットしている、なんて裏事情はさておき、膨大な数の魔物を屠っているのだから彼女たちも疲労している。


「ナース、コルナ。魔力を補給しろ」

『はーい!』

『わ、わかったわ……って、どうやってするつもりなの?』

「効率の悪いポーションはあとだ。今は俺が直接注ぎ込んでやる」


 お手本とばかりにナースに触れ、波長に合わせた魔力を純魔法“魔力譲渡マナトランスファー”で送る。
 ただやるよりも効率がよく、ポーションで全快させるという手段を奥の手として取っておくこともできる優れものだ。


『きもちいいー!』

「貴様もだ……来い」

『うぐっ……だ、だいじょうぶよね?』

『うんー!』


 友となったナースの返事に安心したのか、おずおずと俺が伸ばした手の先に自身の掌を重ねる……肉球が最高です!
 そんな思いの丈は沈めておいて、解析した魔力の波長に合わせて魔力を注ぐ。


『~~~~ッ!』

「ああ、言い忘れていたな。人によっては不快感を感じるらしい。貴様は幼いとはいえ聖獣、問題はないだろう」

『もんだい……んっ、あるわよ……あっ』

『だいじょうぶー?』


 体を丸くしだしたコルナを心配し、ナースはすぐに周りをクルクルと移動する。
 ナースには回復魔法を教えてなかったな。
 瞑想系のスキルにプラスして、何か簡単なものを教えておこうか。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 なんだか【憤怒】をぶつけるように攻撃を行いだしたコルナによって、魔物はより加速的に数を減らしていく。

 そのためさらに魔力が尽きかけたのだが、なぜかポーションを強請ってな……まあ、まだもったいないということで強引に魔力を注いでみれば、さらに速度を上げて魔物を屠ってくれるのだからありがたいものだ。


『まったくもう、ナースのけいやくしゃはひどいひとね!』

『そうなのー?』

『ええ、まったくよ!』


 愚痴をナースに零すコルナだが……そんなにポーションが欲しかったのか?
 カナにもよるが、終わったらお礼の品として秘薬を数本渡しておいた方がいいのかもしれないな。


「貴様ら、無駄話はそろそろやめておけ」

『む、むだばなしって……だれのせいでしているとおもってるのよ!』

「そこまで嫌だったのか。魔力の波長は完璧に貴様のソレと整えていたのだがな」

『そそ、そういうもんだいじゃないのよ! もっとやさしく、ていねいにやるものよ!』


 あー、そういう捉え方をしてたのか。
 まあ時間が無かったからパパッとやったんだが、ゆっくりと注げばもっと魔力の密度が上げられと……つまり、より多くの魔力を一度に補給したかったんだな。


「貴様にそれを行う次があるのであれば、それも考慮して注ぎ込んでやろう」

『……ふんっ、わかればいいのよわかれば』

「だが、そうも言ってられない。まもなく中枢へ辿り着くぞ」


 精霊たちに間引きをしてもらっているため余裕があるだけで、まだまだウジャウジャと魔物たちが現れては攻撃を仕掛けてくる。
 そのすべてを殲滅して場所を確保して──目指すのはその先にある光が降り注ぐ神殿の中でもっとも明るい場所。


「ナース、虚空魔法の準備をしておけ」

『おー!』

「コルナ……は、俺に指揮権があるわけではない。あくまでカナの関係者だ、好きなようにするがよい」

『な、なかまはずれにするつもり?』


 ツンデレか? とも思ったが、ナースが指示を受けるのに自分は受けないことにただ反感を抱いているのだろう。


「ならば言おう、全属性の魔法を展開して待機しろ。初撃で反応を窺う」

『わ、わかったわ』

「準備が出来次第、目的地へ向かう」


 うーん、あそこがゴールならな。
 外の奴らのためにも、可及的速やかに対処しなければ。


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