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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目
偽善者と育成イベント中盤戦 その17
しおりを挟む≪魅力とは見た目だけで決まるものではありません。技術や芸術性が、見た目以上に輝くこともございます──さぁ、そんなこんなで品評会、予選ブロックAグループを始めまさせてもらいましょうか!≫
文章が繋がってない気がするな。
見た目以上に輝く、たしかにそういったものもあるだろう……。
だがそれは、魅力と言えるのか?
権力や財力を魅力と言うことがあるが、それってもう品評会じゃ無くね?
始まった予選会の席に座る俺とアルカ。
俺が口を開くまで話すことはないのか、ただ黙って会場を観ている。
二次元にしか生きられないであろう金髪ツインテールを見事に伸ばした、空色の瞳をした少女。
力を求めて眷属となった、【憤怒】を宿す下剋上ガールだ。
「──菓子、食うか?」
「……ええ、貰うわ」
適当に見繕った、甘い洋菓子から渋い和菓子までエトセトラエトセトラ……一瞬空色の瞳が輝いた気もするが、すぐにいつものツンツン節に戻る。
「まあ、いいんだけどね」
「何がいいのかは知らんが……眷属用の究極の菓子を作る過程で用意した俺用の粗悪品だから、好きに食ってくれ。美味しくはあるんだが、正直眷属用って言うならもう少し品質が高い方がいいからな」
「……前言撤回、それも寄越しなさい!」
眷属には甘い俺ではあるが、さすがにこの要求は呑むことができなかった。
嘘を吐く気はなかったので、せめて他の奴らへのお土産用に一品……ということで手を打たせることに成功する。
「それで、何の用だったんだ? 先に言っておくが、どうせお前たちの育成した奴には勝てないぞ。うちの子は特化型なんだ」
「へー、何に特化してるのよ?」
「そりゃあ企業秘密だ。見たんだから分かってるだろ? ヒントは精霊、その種族性質」
「…………魔力、それに無属性の派生系の能力ね。鑑定が効いていればもっと分かるけれど、今はこれが限界よ」
初代【思考詠唱】を編みだした努力家は、さすがと称賛したくなるほどすぐに解を導き出した。
スーパーな情報班と比べるとどうか分からないが、本当の意味で思考での詠唱もできるらしい彼女は本当に凄いのだ。
「まあ、そこはいいや。だいたい合ってるけど、情報共有は止めてくれよ。……それで、ご用件はなんなのでしょうか?」
「──最後のイベントに絡まないでちょうだい。偽善者さん」
「…………ゲーマーから楽しみを盗るって、辛いことだって分かっての発言かな?」
「ネタバレはしない方がいいから隠しておくけど、こっちもこっちでいろいろとあったわけよ。それで、このあとの展開がなんとなーく分かったわけで……公式チートが味方なんてしてたら、面白くないじゃない」
納得はできるけどさ……。
玄人ともなれば、四人パーティーが想定の戦いであってもソロで勝てるという。
弱体化用のアイテムを使わなかったり、サポート用のNPCを使わなかったり……やり方はいろいろあるけどさ。
アルカは要するに、このイベントでやりたい放題したいと言っているわけだ。
それには俺が関わっていると困り、むしろ邪魔だからどっか行ってろと……グスン。
「分かった。俺は直接的にそのイベントに関わろうとはしない。ただ、何か目印でも仕込めないか? ついうっかり関わって、それがターゲットだった……なんてオチはサブカルだけで充分だろ」
「そうね……とりあえずは“目印”でも刻んでおくわ」
生活魔法の一つ“目印”。
用途は簡単、印を刻んで何がどこにあるかやそれが自分のものだと証明することだ。
相手が強ければ抵抗されるし、刻んだ際に消費した魔力が少なければすぐに消える……ただ、それはアルカなので問題ない。
「了解した。俺はお前たちの誰かが印を刻んだ奴には手を出さない……けど、関係ない奴までついでに刻むのは止めてくれよ? 刻めないなら刻めないで、シールでも貼っておいてくれ。たぶんそれで分かる」
「こっちもそれで問題ないわ。だけど、アンタが何もしないだけで、眷属は動きます……なんてのは止めてよね」
「ああ、そこは保障できない。ただ、少なくとも俺はここに来るように要請はしていないから、何か理由はあると思う。直接訊いて何かあったら、俺に連絡をくれ。今は回戦が遮断中なんだ」
なんて会話をしていると、ようやくナースが混ざるグループまで予選が進んでいた。
ふわふわと漂いながらも俺に気づき、楽しそうに跳ねる姿に鼻息で返事をする。
「ところで、お前たちの育成した奴はどうしてるんだ? というか、もう出したか?」
「……参加させないわ。まあ、それもイベント進行の条件ね。そういうこともあるから、なんにでも干渉してメチャクチャにするような人はお断わりなのよ」
「へいへい、分かりましたよっと」
称号『運命略奪者』の効果は、終焉の島に行く前からよく知っている。
フーラとフーリ、それに村の奴ら……複雑な事情はさておき、もとは死ぬ運命だった者たちを救うことで得た称号──それが俺用にカスタマイズされた結果だ。
他者の運命に干渉し、俺の思うままに自身の運命へと組み込む……よく分からないがようするに、物語の主人公が周囲の奴らを仲間にするのと同じようなものだろう。
しがらみが無くなるためか、もともと沿っていた運命の糸が解れてしまう──アルカたちはそれを懸念しているわけだな。
俺としても何かやるのであれば邪魔をする気はないので、従ったのだ。
「……大丈夫だろうか」
「えっ? ええ、問題は──」
「そうじゃない。俺の契約精霊が、だ。そっちが失敗することなんてないだろう、アルカもいるんだし」
「…………」
張り切って参加はしているが、俺から見ればまだまだ魅力というモノを自身で理解していないように見受けられる。
うーん、どうなんだろうか?
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