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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目

偽善者と育成イベント中盤戦 その11

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「……とまあ、このようなメリットを貴様へ提示してやろう。それでも不満か?」


 光魔法を用いたプレゼンテーションを済ませ、リヴェルの反応待ちだ。
 最高級の装備の提供、回復&ドーピングアイテムの支援など結構いい条件だぞ。


「なあ、魔王」

「なんだ、厨二」

「貴様は……プレイヤーだよな? なのにどうして、そんな真似を?」

「特別、という言葉に憧れるのに理由など要らぬだろう。せっかく力を得たのだ、有意義に使わないでどうする」


 俺はある意味、酔っているのだろう。
 AFOの世界において、さまざまな偽善を行えているメルスというキャラに──■■■■ではないメルスに。


「貴様がこの提案を拒絶するのであれば、少しばかり情報操作につきあってもらおう……なに、俺の姿を記憶から抹消するだけだ」

「……そんなことが、できるとでも?」

「できるさ。すでに研究済みだ」


 いかにも悪役がしていそうな不敵な笑みを浮かべ、リヴェルに威圧をかける。
 ……そう、狂気の研究者がちゃんと調べてあるのでそこら辺はとっくに解決済みだ。



 さて、リヴェルの回答はそれから少ししてから聞けた。
 真剣な瞳で、俺を見ながらだ。


「…………なあ、魔王。おれと直接闘ってはくれないか?」

「貴様と? どういう了見だ」

「精霊を操る魔王の力、おれはそれを見ていない。だが、貴様の精霊が強いことはしかとこの目で見た。ならば次は、貴様自身の力をおれに見せてほしい」

「ふっ、貴様が勝っても負けても配下に加わるというのであれば、主の実力をその身に刻ませることも構わぬのだがな。あいにく、そう易々と振るうつもりはない」


 プレイヤーは瞳を介した録画機能を持っているので油断ならない。
 実は隠し撮りをしていて──『クソロール魔王(笑)を見つけた』なんて動画が掲示板にアップされた暁には……真なる厄災として世界を滅ぼすのもいいかもな。


「……負けたら、だ。おれが負けたときは、大人しく貴様に忠誠を誓おう」

「ほお。やはりアヤツのような条件であれば従うのか。なるほど、なかなかに貴様のそれは頑ななのだな」

「だから違うと言ってるだろ!」


 まあ、同じ流れであれば、負けてあと任務で男二人と移動中に片方が裏切って、救いに来たヒロインと結ばれる流れだし。
 うんうん、男としてそんな運命的な展開を求めているのかもな。


「ならば俺も、貴様のために力を振るってやろうではないか……もっとも、俺が勝利することは確定事項なのだがな」


 手を伸ばした先に“空間収納ボックス”を起動し、そこから武具を取りだす。
 そしてそれを(武器換装)で装備する。
 武具に対応するスキルも、申請してダウンロードしてあるぞ。

 そんな俺の心からの気遣いに感銘を受けたリヴェルは、プルプルと震えて──


「だから……だから違うと言ってるだろ!」

「アシストや破壊不能効果は無いのだ、貴様でも勝つ可能性があるぞ。……ああ、勝ったらついでにこの浮島も沈めてやろうか」

「何一つおれに利益が無い!」


 うん、リーの弟子にでもしようかな?
 二人で組んで、どこかでいい人材を見つければ将来は期待の新人ビックスターになるかもしれない。

 だがまあ、今は真面目に役割をはたそう。


「──魔王に挑もうとした輩に、俺が情けをかけるとでも?」

「!」

「静まれ。貴様には可能性がある、だがそれは不完全なものだ」

「可能性……それに、不完全だと?」


 その問いに俺は答えない。
 代わりに、別のことを語り始める。


「孤高に酔った男が、どんな末路を迎えようとしたか知っているだろう? だからこそ、貴様にそれをなぞり続けてもらいたい。支援はしよう、貴様が孤高を止めたいというのであればそれも構わぬ」

「…………」

「だが! この魔王に逆らうこと、そして貴様の元に集った者たちを蔑ろにすることだけは俺が許さん。つまらん意地で悲劇を生むぐらいであれば、すべてを喜劇で終わらせようと道化として尽力してみてはどうだ?」

「……っ!?」


 驚いたような顔をしているが、わざわざ過去を視たわけではないので理由は分からん。
 だがまあ、カウンター系の固有スキルに適性を持つぐらいだから……そういったことの一つや二つ、経験済みなんだろう。


「違うというのであれば証明してみせよ。俺という邪魔な存在を屠り、貴様のいう正しさというヤツを示すことで。だが、それができぬのであれば……貴様は俺の配下だ、俺のやり方に従ってもらうぞ」


 双剣を握るリヴェルの握力が強くなったのか、ギリリという音が彼の方から聞こえる。
 まあ、いきなり知らない奴にそう言われたら怒り状態にもなるか?

 けど、俺はわざわざ女に化けて台詞セリフを語るほど暇じゃないんだよ。


「魔王……貴様はいったい、何者なんだ」

「『精霊魔王』」

「貴様のような奴が、これまで一度として表舞台に立っていない方がおかしいだろう。おれが勝てば、その正体を明かしてもらうぞ」

「構わぬぞ。だが、まずは貴様を俺の配下に加えておこう」


 その数秒後、湖一帯に大規模な結界が構築されることになる。
 そこでは二人の男が凄まじい闘いを繰り広げ、湖は一時枯渇寸前となってしまう。

 ──争いが収まり、湖が正常な状態に戻る頃……そこには男が一人しか立っていなかったとされる。


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