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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目
偽善者と育成イベント中盤戦 その01
しおりを挟むあれから、さらに数日が経過する。
プレイヤーにとっては一瞬の時間経過ではあるが、俺にとっては永い時間経過だったとだけ語ろう。
時間の経過速度を弄っているので、そこまで長くないと思えているのだろうが……たしかに、育成イベントは長くしないとある程度の結果が出ないもんな。
≪──祈念者の諸君、これまでの時間をどう過ごしたのかな? それぞれが、自分や自分たちに合った存在を育成していたようだね≫
今日は前半戦とも呼べる育成期間が終わった日、GM02が語るように町の中ではかなり育成された生命体が祈念者の言うことを聞いて活動している。
魔物などの危険な存在を選んだ場合は、町の入口でテストを受けたりするのだが……これを突破できていない奴は、町の外でこのアナウンスを聴いていたりする。
「ああ、そういえば会ってなかったな」
前回は散歩の最中に入り口を見つけ、そこでGM04──フーカに会った。
だが、今回はナースの育成のほとんどの時間を費やしたわけで……有るかも分からない入り口を探す暇はなかったんだ。
≪すでに分かっている人もいるけど、イベントはこれから四つをそれぞれ行うよ。武力を知らしめたいなら武闘会、魅力を広めたいなら品評会、技術を自慢したいなら展覧会、知識を比べたいなら問答会。時間をズラして始めるから、予選さえ突破すれば全部の競技に出ることができるのさ≫
ここら辺は本で読んだ通りの話だ。
全部に参加できるみたいだし、どれだけそれぞれの部門に必要なパロメーターを振っておくかが気になる。
≪優勝者、また優秀な成績を魅せた者たちにはご褒美があるよ。アイテムであったり、加護であったり……気になる人は頑張ってみてくれるとありがたい≫
加護はどうせ運営神のなんだし、リオン自身が仲の良さを自慢する神以外のは別に必要ないよな。
アイテムは……また拡張系のヤツか?
≪今回はそうして参加する数が決められている場合があるし、何より育成を数人がかりで行っている人もいるからポイント制にはできなかった。だから、カタログは一定の成績で載っている品が変わるようにしているよ……無理に全部参加しなくてもいいからね≫
無茶をするプレイヤーがいないように、予めそう語っている。
心配そうな声色……を取り繕っているが、大衆が聴けば真にそう言っているように思える演技だな。
前に演者だと思ったのも、あながち間違っていなかったようだ。
「今回は会えないか。一度目の接触は、レイさん以外みんなこの機会だったが……諦めるか。全部に参加して優勝しなきゃ、たぶん無理なんだろうし」
球体のナースが優勝できるのは武闘会だけであって、百歩……いや、億歩譲られてようやく技の展覧会に可能性が生まれるぐらいだしどうしようもない。
結局、まだ人化してないし──無理にスキル結晶でも渡そうかしら?
≪複数人で育成したものも個人で育成したものも同じ場所で競われるよ。ただ、武闘会だけは差が出ちゃうから育成した人数によって補正がかかったりするから同じくらいの力で闘うことになるね≫
団体の部でやろうとしていたことだな。
人数差は理不尽なまでに圧倒した結果を生むことがあるし、何より俺はそのルールを最大限に恩恵としてあやかれる。
というか、俺と同じような奴も数人ぐらいはいるんだろうな。
ゲームでもよくある、根気よく育成すれば最強に近づく──いわゆる玄人向きな魔物も数体見つけたし。
≪詳細はそれぞれのイベント開始時に説明するよ──みんな、頑張ってね≫
最後にそう言って、放送は終わる。
声の内容を反芻して理解したプレイヤーたちが一人、また一人と動いていく。
俺はただ何もすることなく、風精霊が創りだした空の床で寝転がる。
「いやまあ、真面目に聴く必要なんてまったくなかったからな」
ずいぶんと説明が細かくなっていたが……きっと、レイさんたちが怒ったのだろう。
姉の説教であれば、なんだか反省しなきゃならない気分になるものだ。
02、なのでレイさんしか姉がいないが、おそらくやってくれたんだろうな。
「精霊を使役して挑む奴って、結局どれくらいいるんだろうか? 同種が相手だと、ナースが悩むかもしれないな」
精霊を感知する魔法を使ってみると、誰かと契約をしている精霊の数はかなりある。
だが、それが精霊術士としての通常の契約なのか、それともイベント限定の使役契約なのかどうかが俺には識別できない。
「だがまあ、やっぱり精霊との契約者は他にもいたか……俺以外の精霊使いって、どう呼ばれているんだ? それに、姿も絶対に球体のままじゃないよな」
精霊眼があれば、身を隠している精霊であろうと俺の視界に収めることができる。
それは契約者が居てもいなくても同じなので、すぐに感知で引っ掛かった場所を視界に捉えて探してみると──
「ま、まあ……オリジナリティって言葉もあるしな、うん。一人ぐらい特殊な奴がいたっていいよな。そ、それに! うちのナースは強いから大丈夫だ!」
視た結果など、誰でも予想がついているだろう……だからこそ、そっとしておいてくれると助かります。
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