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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目

偽善者と育成イベント序盤戦 その11

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 イベントエリア 町


「ギルドのコピーだけは無いか……まあ、それを許したら、全部のエリアを複製しないといけないからか」


 しばらく休憩を挟むことにした俺は、いったん町に帰還してみることに。
 最初の頃と違い、イベントに関連する事柄で町が盛り上がっている様子が見て取れる。


「卵屋、育成屋、従魔用のスキル屋、そして飯屋。どんな所でも商売はできるんだな」


 偽善者として裏路地でアレコレ売り捌いてもいいが、こちら側にも『ボス』的な人が居るかもしれないので止めておく。
 というか、主ならまだしも従者に向けて使う物など、そう多くは作っていない……あるならとっくに使っているわ。


《…………》

「ナース……は、まだ駄目か。悪かったな、なんか無理にやりすぎて」


 これまで一言も発していないナースは、注ぎすぎた属性エネルギーの処理に追われてダウン中だ。
 体内に馴染ませるのもそう簡単にはいかないらしく、契約者たる俺の体に潜ることで休養している。


「ナースが休んでいる間は、ある意味フリータイムだな。縛りの最中だから、眷属呼んでデートはできないけど……ハァ」


 寂しい、めっちゃ寂しい。
 自分で決めたことではあるが、誰とも接しない時間とはこうもつまらないものか。
 ボッ……いや、ソロとしての活動をかなりやってきたと自負してはいるが、やはりこちらでは、ほとんどの時間を眷属と共に居たからなー。


「こうして考えてみれば、俺もずいぶん作り変えられたものだな。{感情}に人間性は弄られるし、アバターに肉体は変えられるし、眷属には執着するようになったし……うん、物凄い変化だ」


 進歩、と言っていいかは分からない。
 まったく異なるが、ある種物語の主人公のようにも思える展開ではないか。
 特殊な力は自身を苛み、肉体は生まれ変わり、周りにはハーレム……いやー、そこだけ聞けばハーレム系主人公でしかない!

 だがまあ、俺が主人公という柄ではないのは散々リオンと語り合った。
 あの『のだのだ』邪神もそういった経歴はたしかに主人公だと言っていたが、俺の人間性が微妙だと言っていた……もちろん、発言後はお仕置きをしたけど。

 とにもかくにも、主人公とは誰かにとって頼れる存在であろう。
 それが万人なのか極少数なのか、そんなことは問題ではない。
 実際に自分に与した存在を、庇護できるようなナニカを持つ……それこそが主人公だ。


「俺は……どうなんだろうな。その点、自分一人でそれができてないわけだし……うん、やっぱり主人公じゃないか」


 百歩譲って、『○○は配下となる存在を召喚し、町を守護させた』的な際に召喚される配下役が精一杯だろう。
 ……いや、つい先日そういったことがあってつい思いだしちゃったんだよ。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 探し人、見つからず。
 なんだかおみくじみたいだが、実際に歩いていても見つからないのだから事実だ。


「まあ、ほとんどの奴らが外に行って意欲的に捜索や育成をしていそうだからなー。特に『ユニーク』」


 俺の渡した魔法の船があるので、彼らの行動範囲はほぼ無限に等しい。
 わざわざ町に帰還せずとも、船を帰還場所として指定できるので戻る必要が無い……つまり、ずっと育成に時間を使えるのだ。


「あと、アイツら……ギルド名、結局何にしたんだろう? まあ、アイツらもそういった意味では意欲的に活動しているのか」


 眷属にしたプレイヤーたち。
 特段繋がりがあるわけではないが、それは彼女たちにとっても同じであろう。
 俺はあくまでスポンサー、ただ装備や金銭での援助ではなく力そのものを渡すことで宣伝をしてもらっているだけだ。


「でも、俺のことどう思ってるんだろう? ミントから、オブリは好印象だ的なことを聞いたことはあるが……あの娘はJSだしな」


 あの若さで、強く力を欲することができるような娘だ。
 慕ってはくれているのかもしれないが、そこは弱みに付け込んだ的な感じだろう。


「他は……シャイン以外、正直分からんな。アレはもう、真正の変態になったし」


 そのくせ、今もバッチリ主人公ができているのだから心にチクチクくる。
 なんでMなTS野郎が、今なおヒロインを侍らせてハーレムをやっているんだろう。


「……ぐふっ、一部カウンターが」


 そうだったね、俺もメルをやってたね。
 人のふり見て我が身を直せ、とはこのことであったか……アイツを責められないな。


「あとは…………本当に分からん。特にグーがスカウトした、ペルソナ……ちゃん? どうして加入してくれたんだか」


 なんだかいろいろと話してはくれたが、スカウト理由は俺が問題を解決してくれるということで完結していた。
 恩義など無ければ、強くなって顔も隠せる今の現状に満足してパパッと抜けると思っていたが……なんでだろう。


「って、なんでこういうことを考えていたんだ……ああ、見つからないからか」


 某天竺の共をした猿のように、高速で移動すれば索敵の真似ごとは可能だ。
 カナタのダンジョンに居たアレから、素材はたっぷり回収したしな。
 ──もちろん、安全な方法で。


「まあ、歩いて気長に探しますか」


 ナースの回復の妨げになるようなことは、あまりやりたくない。
 ゆっくりと歩くことが、回復に繋がると信じよう。


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