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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目

偽善者と育成イベント序盤戦 その09

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 とは言ったものの、ドラゴンを即座に見つけだす方法など持ち合わせていない。
 ……シュリュの『劉殺し』で支配すれば現れるだろうけど、アレを使うのはさすがに周りへ多大な影響があるのでキャンセルだ。


「ナーラ。貴様、索敵はできるか?」

『さくてきー?』

「魔力による探知は教えただろう。貴様は先ほど見た人間たち以外で、もっとも強い魔力の持ち主を見つけだせばよい」

『はーい!』


 精霊の魔力に関するセンスであれば、識別の方も容易くできるであろう。
 ただ、距離の問題はさすがにあるので、そこは俺が手伝う必要がある。

 ──だからこそ、風精霊によって輸送されているのだ。


『んー、いたー!』

「ほう、どこにいたのだ?」

『あっちー! とおいー!』

「……風精霊よ、そちらへ向かってくれ」


 ナースの指示する方向へ転換し、少しだけ魔力を渡すことで速度を上げる。
 本当にドラゴンが居るか、今の俺には判別が付かないのだが……いずれ直接視界に入ればそれも分かるだろう。





 森や草原を抜け、少し小高い山に着く。
 ゴツゴツとした岩がたくさん配置された、洞穴まである王道的なドラゴンの住処だ。
 一度速度を落とし、俺自身も索敵を行ってみる……うん、なんにも分からないや。

 風精霊による移動方法は、少し悪目立ちするので隠蔽が大変になる。
 俺は移動の間、光と闇の精霊による隠蔽を必死に展開していた。

 きっと、分からなかったのはそれが理由だからだよね?


「ナース、あとどれくらいだ」

『もうすぐだよー』

「……それにしては、見つからないな」

『かくれてるんだよー』


 こっちも隠れているし、ドラゴンの中にもそういう技術を持つ奴居るってことか?
 そんなドラゴンだからこそ、これまでプレイヤーたちに狩られずにいたのかもな。


『みつけたー!』

「…………よし。貴様、先手必勝だ。すぐに虚空属性で攻撃しろ」

『らじゃー!』


 うん、見つけられなかった腹いせだ。
 ナースは嬉々として虚空属性の生成を行い始め、超高濃度のエネルギーが球体の形として顕現する。

 それに例のドラゴンが気づく様子はなく、球体も器用なナースによって魔力の膜につつまれているため感知できない。
 ──準備は整ったってことだ。

「撃てー!」

『はっしゃ―!』


 瞬間、ふわふわと球体が飛んでいく。
 行き先は俺には視えないドラゴンの住処。
 勢いはないが、その分エネルギーは極限まで保持されて続け──洞穴に入る。

 ……いや、どうりで気づけないわけだ。
 魔力に関するセンスは欠けている現状、弱い生命体たちを無意識に威圧するドラゴンの索敵に精霊は使えない。


『GUGYOOOOOOOOOOOOO!!』

『んー、あたったー!』

「……そうか。なんだか、理不尽だな」

『りふじんー? それーけいやくしゃー?』


 お前のことだよ、とは言わずといいか。
 俺もそういえば、初めて(亜だけど)竜を殺したのはずいぶんとアレな方法だったし。
 ある意味、契約を交わした者として似た者同士の関係にあったのかもしれないな。


「ナース、ドラゴンは死んだか?」

『うーん、わかんなーい』

「そうか……では、今から向かうぞ。用意できるのであれば、再度虚空属性の力を行使できるようにしておけ」

『はーい!』


 死んだのであれば素材回収、そうでなくともトドメを刺す必要がある。
 死にかけであれば直接向かい、経験値をその場で吸収させなければな。


「ここからは徒歩で構わないか。ナース、向かうぞ。経験値も溜まった、竜殺しも満たした……進化の時は来た」

『おー!』


 契約者(主)であれば、契約者(従)の進化先をある程度選ぶことができる。
 他にもいろいろとできることはあるが……今は、置いておこうか。

 進化先のリストを調べて視れば、さまざまな『○○精霊』という羅列を確認できる。
 普通のフォントで書かれている通常進化、それとは別の色で示された派生進化、フォントと色の双方が異なり特殊性を表している特殊進化……選択肢は盛り沢山だ。


『けいやくしゃー、こくーせいれいはー?』

「無いな。上級精霊であっても、虚空の力を扱えぬということだ。ナース、貴様は上級精霊に成し得ぬことを成した優秀な精霊だ。誇るがよい」

『わーい』

「だが、再びこうなってしまったか……仕方がない、貴様自身で選べ」


 派生や特殊な進化を選ぶとそれに関する進化先しか選びづらくなる。
 そのため、ナースが選ぶのは──


『ふつーがいー』

「では、『上級無精霊』を選ぶぞ……そろそろ形を定めておいた方がよい。無理に時間を省略しているのはこちらだが、いつまでも球体というのも味気ないだろう」

『…………』

「まあよい。だが、最悪進化はあと二回しか残されていない。ナース、その間にしっかりと決めておくのだぞ」


 いやいやではあるが、それを了承するナースを確認してから進化に干渉する。
 本来は、経験値が一定分まで溜まれば勝手に進化する。
 契約者が居るからこそ、最大量まで満たすことができ進化先も増えた。

 ──さて、それなのに通常進化ってのも味気ないんだよなー。


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