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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目

偽善者と精霊術士

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 始まりの町


「イベントか……海以来だなー」


 あのときはたしか、フーカと会ったな。
 そうなると、今回も誰か新しいGMと遭遇することになるのだろうか?
 ……属性の数的に、会っていないのは二人か三人。
 そろそろ俺を嫌悪する、姉妹LOVEな奴も現れるかもしれない。


「──クラーレたちには休暇を貰ったし、ユウやティンスから連絡もない。今回は自由にさせてもらおうか」


 実は水着イベントの際も、そうした連絡はあった……バックレたけど。
 ミシェルやクエラムとまったりゆったり、いろいろとあったからな。

 ただ、その後に討伐に参加するなと連絡したらキレられた。
 アルカが前に会った際、魔法を連射してきたのはそのせい……だよな?


「──ゴホンッ。アナウンス、いつになったら鳴るんだろう?」

《それまではこちらで待機していた方がいいと、あれほど申したではありませんか……》

「(俺は待機するのも好きなんだよ。補正も何もないから、欲しいものがあれば早く行って待つのが基本だったからな)」


 好きに座っていい席とか、そんなものでも争う必要があるわけで……友人が居るわけでもない俺には、先に向かってそこを確保するという選択肢しか残ってなかったのだ。


《さすが、元ボッチですね》

「(ボボ、ボッチちゃうわっ! ……誰か、呼べば来るかな?)」

《わたしが向かいましょうか?》

「(頼んで来てもらえる仕様でもないし、そもそも縛りプレーの最中は誰も来れないだろう? 緊急用のコールをするものでもないんだし、大人しくしているよ)」


 眷属と共に居る時間が長かったからか、そうした孤独に対する耐性が下がったのか?
 まあ、時間を潰す手段なら無数に持っているし……今の間に確認をしておくか。


「今回の縛りプレーは、精霊魔法と精霊眼。あとは長杖だけで乗り切る……見えるだけだから、しっかりと俺自身が接続をしないと使えない。聖霊じゃないから、ユラルからの補助は期待できない」


 前回のように武具っ娘と念話をしていないのは、そういった理由があったからだ。
 始まりの町に居るような精霊は、個人と対話ができるほど知能を有していない。

 上級精霊や妖精みたいな存在なら、会話もできるんだけどな。


「杖はアルカの物ほど優れていない。ただ魔力を通せるってのと、壊れないだけ。触媒として何かが付いているわけでもない」


 魔石や宝石、属性石や精霊石(精霊が宿るか宿っていた魔石)などを嵌めることで、特定の属性や魔法の効果を高められる。
 ただそれ、無くとも威力は出るしな。
 強すぎる魔法には耐えられないし、嵌めた石で戦闘スタイルがバレる可能性もある。


「まあ、そういった点では擬装用に嵌めておくのが正解なのか」


 ◯属性使いじゃないのか!? みたいな台詞が聴けるかもしれない。
 うん、これはロマンだな。
 そうと決まれば、さっそくなんらかの装飾品を取り付けたい。


「けど……そんなのあったっけ?」


 今さらだが、今回だけは特別ということで空間魔法の使用を許可してもらった。
 使えるようになった“空間収納ボックス”を漁り、何かいいものが無いかを捜索する。


「あっ、これだ──水晶っと」


 転職用の水晶やギーなど、何かと縁があるため水晶はかなり持っている。
 暇潰しに、いろいろとそれを加工していた時期があったんだよ……『水精』という意味もあるらしいし、これにしておくか。





 そんなこんなで準備を整えると、やがてどこからかアナウンスが聞こえ始める。


≪──やあやあ諸君、今回のイベントに参加してくれてどうもありがとう。ぼくを知っている者もそう多くないから、まずは自己紹介からといこうか……GMの一人、02さ!≫


 02、というとまだ会っていないGMか。
 声の響きや伝え方からして、某歌劇団みたいな感じか? ……事前情報が少ないから、あんまり断定はできないが。


≪今回のイベントは──育成イベント! エリア内の存在を確保し、期間内でどれだけ強くできるのかを競ってもらうよ。もちろん、スキルが無くても育成はできるから、わざわざSPを消費する必要はないね≫


 育成、イベント?
 たしかにそんなの聞いたことないし、少し面白そうだな。
 自分好みの生命体を使役して、好きに使えるというわけだし。


≪細かい説明は……うん、要らないね。各自で情報収集することも、大切だよ≫


 雑だな……。
 聞き及んだアオイの説明や、昔盛り上がったシンクの説明が懐かしい。
 そういう気質なのか? 属性はたしか、土属性担当らしいが……ぜんぜんそんな感じではないな。


≪ただ一つ、注意事項を言っておくよ。確保できるのは一人に付き一つだけ。だけど、複数人でないと確保できない存在もいるよ。そういったモノたちは、イベントエリアにたくさんいるから……ギルドやパーティーで活動している人たちは、そういった存在を捜索するのもいいかもね≫


 大型の存在? まあ、龍とかか。
 そりゃあスライムとドラゴンを同じ枠に収めていいのは、創作物だけだよな。
 けど、複数人が条件なのか……俺のやることも変わりそうだな。


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