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偽善者と精霊踊る育成イベント 十四月目
偽善者と情報収集 後篇
しおりを挟む「はい、到着っと」
わざわざ空間属性の魔道具を用いてまで、港町に送った密偵を逃がすようなことはないと考えていた。
縛りプレーで本気の捜索はできないが、それでもいくつか方法は存在する。
そして今、俺の前には怪しい男がいる。
森の木々に紛れ、そのまま越境しようとしていたよ。
『驚いたな。まさか、ここまで辿り着──』
「まどろっこしいことを、私以外がやらないでほしいなー。破壊させてもらうよ、その面倒な偽装」
「っ……!?」
魔道具で声や姿を隠していたが、魔銃で撃ち抜くことでそれはすぐに解除される。
あまりに魔道具を過信していたのか、その姿は丸見えになった。
……ふむふむ、とても憎んでいる顔だな。
「どう、して……あの町から、ここに」
「早い話、人海戦術かな? ちょっと裏ワザとして、火属性の精霊を至る所に送っただけの話だよ」
「チッ……! 精霊使いだったのか」
「眼が使えないから、感応だけで調べてるんだけどね。数が多いのに処理能力はいつも通りだし、なんだか疲れてきたなー。だから、さっさと終わらせることにしようか」
ホルダーから聖銃を取りだし、それを男に突きつける。
通常の拷問は効かないだろうから、彼用の特別編を行おう。
「だが、こちらも黙って捕まるわけにはいかないのでな! 悪いがここで、失礼させてもらう──」
「わけにはいかないんだよ」
聖銃のトリガーを引き、男を穿つ。
すると男はまるで時間が止まったように、ピタリと逃亡行為を止める。
「傾秤弾、停止の弾丸。対象の動きを魔力分停められる一品だよ……って、そういえば聞こえてないんだったっけ?」
似たような弾丸として遅延の弾丸というのあるが、あちらの場合は意識がある。
……まあ、違いに関しては別の機会に。
「えっと、たしか──“火拘束”」
今の間に拘束を施し、再起動後も逃げられないようにしておく。
だがこれでは、すぐに束縛から抜けだしてしまうだろう。
「それじゃあさっそく──イタダキマス!」
今度は魔銃を構え、複数の弾丸を放つ。
それらは【暴食】の力を組み合わせることで生みだされた、特殊な弾丸。
それらは撃った対象のあるモノを喰らい、魔銃や聖銃の糧とすることができる。
「はい、時間終了」
「──ぞ……ぐぅっ!」
「生命力、魔力、精神力。その全部を頂かせて貰ったよ。少し動いただけで痛みが走るだろうから、気を付けてねー」
「こ、これは……!?」
かつてミシェルにやったように、餓鬼の弾丸で満腹度を喰らい尽くしただけだ。
お腹が空腹を訴えることすらもできず、ただ痛みに苛まれているのはそのせいさ。
「このままだと死ぬけど……まあ、忠義に篤そうだから問題ないよね? 丁寧に後処理まで体に仕込んでいるぐらいだし、そういうことも想定しているんでしょ?」
「──ぐっ、教えてなどやるものか。私の遺志は、私のものだ」
「偉い偉い、惚けた骸骨にもそういう思考を叩き込みたいよ。私に隠れて、いろいろとまだやっているみたいだからね」
まあ、悪い意味ではなくサプライズドッキリみたいな感じでだが……どちらにせよ、俺に隠し事とは面白いことをした某魔王には、あとでお仕置きをすることにしよう。
「火の可能性を調べるなら、もう少し試した方がいいのかな? 失敗しても、やり直すこともできるみたいだし……」
「……何をする気だ?」
「尋問だよ? ただ、少しだけ怖ーい思いをするね。人が考え得る苦痛を克服しているんだろうけど、それ以上のことに……体は耐えてくれるのかな?」
「や、止めろ……こ、殺せ! 私は何を言うつもりはない! だ、だから──モガッ!?」
銃を口の中へ突っ込み、これ以上の発言を防ぐ……同時にそれは、歯を噛み砕けないようにした。
「無駄な足掻きだねー。ずーっと臭ってたんだよ、その毒。まあ、どちらにしてもすぐに直すから大丈夫か──バンッ!」
「んごほっ!?」
「アハハハッ! ほらほら、痛いけど死んでないよね? うん、まだ死ねないよー。どれだけやったら、正直になるかな? 時間はたくさんあるからねー」
俺が放ったのは暴食弾。
早い話、男から奪った生命力だけを親切に返還してやっただけ。
そのためHPは回復し、彼にとって無限の苦痛が始まったのだ。
そして、どれだけ時間が経ったのだろう。
撃って撃って撃って……奪い、与えることで、男の意識は生死の境を彷徨い続けた。
「…………」
「ふーん、まだ諦めないんだ」
「……こ、ろせ」
「うーん……無理!」
今の俺は、<正義>の名の元に動いている。
情報を求める同志たちのためにも、なんとしても教えてもらう必要があった。
「でも、そうだな……一つだけ、教えてくれるなら殺してあげるよ」
「…………」
「どの国が、あの町とサルワスをイジメようとしたのかな? それだけ教えてくれたら、自由にしてあげる」
「…………分かった、言う」
そして男は、ボソリと呟く。
その単語を脳内に記憶させると、銃口を分かりやすく示して突きつける。
「それじゃあ、ご褒美だよ」
「……ああ、やっと終わるのk──」
言い終わる前に、引き金を引いた。
町から離れた薄暗い森に、銃声が響く。
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