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偽善者と生命最強決定戦 十三月目

偽善者と三回戦新ルール

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 祝砲に加えて、三回戦からは花火を打ち上げられていた。
 色鮮やかな火花が飛び散り、会場からは感嘆の声が上がっていく。

≪美しいハナビのセレモニーから始まった第三回戦──準決勝のお時間です! 実況はやはり変わらず私、『ホウライ』! というより、武闘会は私が勝ち取りましたから!≫

 ……メルスが関わったイベントで司会や実況を行う役はとても人気で、裏で激しい争いが行われていることを主催者は知らない。
 そんな中、今回も役を手に入れたホウライは強くマイクを握って実況を行う。

≪一、二回戦同様に解説役のお方がサポートについてくれます。お願いします!≫

≪えっ、あー、どうもカナタです。特に解説なんてできねぇけど、付き添いで来ました≫

≪そんな頼りないマスターを支え、解説を行う従順な僕──コアと申します≫

 今回もまた、二人が解説役に就いていた。
 やる気の抜けた声と、抑揚のない声──迷宮コンビである。

≪……おい、誰が頼りないマスターだよ。あのダンジョンを今の立派な塔まで育てたのは俺なんだからな≫

≪そうは申されましても……日常を皆様にご説明すれば、ご理解いただけるかと。そう、あれはある夏の日の──≫

≪うわぁぁぁぁ! や、止めろ! 何も言わなくていいんだよ!≫

 前回同様、片方が片方を翻弄する組み合わせ……とても仲が好い関係であった。
 ホウライは前回の一組で、これからが長くなることが分かっていたため、早めに進行することを勧める。

≪お二人共、新ルールの方を説明していただきたいのですが……≫

≪ほ、ほらコア! どんどん説明しねぇと進行に差し支えるだろ! ほら、さっさと始めるぞ!≫

≪チッ……そうですね、始めましょうか≫

 舌打ちのような音が聞こえても、決して気にしてはならない。
 暗黙の了解が求められ、観衆たちは歓声を上げて聞かなかったことにした。

≪新ルール、と言われても今回は一つしかございません──事前の仕掛けです≫

≪ああ、メルスがやったヤツだろ? いくら勝ちてぇからって、ブラックホールはねぇだろぅよ≫

 第一試合──メルス対ティルエで使われる予定だった罠。
 ティルエが次元を裂いた時、一瞬の隙を生むためだけに整えられた魔導。

 それが第三試合──ソウ対シガンの試合中に作動し、試合内容に大きく影響を及ぼすことになった。

≪そのため、試合開始直前と終了後に状態がリセットされます。自身にかけたバフなどはそのままですが、舞台の状態が初期状態に戻ることになります≫

≪ボタン一つでリセットってのは、なんだかゲームみてぇだな≫

≪実際、グラさんの種族スキルで状態を保存して、復元なさるそうですよ≫

 三頭犬獣人ケルベロスの種族スキル(保存)。
 本来は魂の辿る道を象徴するために与えられたスキルだが、メルスにとってはただ便利な時間固定のスキルでしかなかった。

 予め舞台の状態を記録し、決められたタイミングで発動。
 すると、舞台は保存された環境を読み込み状態を上書き──まるでリセットされたかのように思えるという仕組みだ。

≪……ああ、そういえばルーレットって新しいルールが増えたのか?≫

≪えっ? あっ、はい。資料として預かっています。ただ、私以外見てはいけないと表紙に書かれていますので……≫

≪はっ……ちょっと貸してくれねぇか?≫

≪か、構いませんけど……≫

 ガサゴソと紙を渡す音が会場に響く。
 しばらくは静かになるのだが、その後すぐに激しくガサガサと音が鳴り始める。

≪……くそっ、開かねぇ! なんでこんな紙にまで細工してんだよ!≫

≪マスターのような方がいるからこそ、そうしたのでは?≫

≪…………悪かった、返すよ≫

≪いえ……その、気にしないでください≫

 紙にはメルスによって封印が施されていたため──ホウライ以外が触れても開くことはできず、見てもモザイクが施され見ることは不可能な仕様になっている。

 無駄に気合を入れたメルス作のアイテムには、どう抗っても抜け道が無い……そう知っているカナタは大人しく諦め、ホウライに資料を返すのだった。

≪コホンッ! 今回の第三回戦は四回戦と連続して行われ──午前で準決勝、午後で決勝戦が繰り広げられます!≫

≪……普通、三日に渡ってやるとかじゃねぇのか? というか、それなら昨日間に準決勝もやっときゃよかっただろうに≫

≪マスター、主催者がそうしたいと言ったらそうなるわけです。ワタシたちが一々指図してはいけませんよ≫

 そういうもんか? そういうものです、といったやり取りを行ったのち、説明が再開される。

≪また、準決勝と決勝戦は特別なものにしたいという主催者様たっての願いにより、舞台外に落ちての敗北のルールが無くなり、バトルフィールドも変更となったそうです≫

≪……まあ、最後の最後がそんな終わり方でもつまんねぇか≫

≪では、この場では行わないのですか?≫

≪互いのイメージに沿った、闘いやすい舞台が具現化されるそうです。映像はホログラムとして投影され、会場には生の迫力が伝えられると……≫

 その後、ルールを再確認して開会式は終了となる。 
 最強の個を決める武闘大会──その最終日が幕を開いた。

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