866 / 2,518
偽善者と生命最強決定戦 十三月目
偽善者と二回戦閉会式 前篇
しおりを挟む≪二回戦の閉会式が始まりますよ!≫
……おっと、どうやら時間のようだ。
夢の世界で試合観戦はしていたものの、時間の感覚が狂っていて少し困っていた。
アナウンスでそう告げるのであれば、間違いなく俺の出番となったのだろう。
「(それじゃあ、行ってくる)」
《ん、気をつけて》
そして起床。
布団の中にリープはいないので、そのまま服として纏って会場に戻る。
「──おう、昨日ぶりだ!」
大歓声が上がり、俺の登場を祝福してくれている。
嗚呼、なんてノリが好い住民たちなんだろうか……ここまで来るのに少々時間がかかったが、(関係者が)諦めずに尽力した甲斐があったというもんだ。
「今日の試合も、楽しんでくれたかな? 昨日今日と連続して試合を見ている奴、今日だけ見に来れた奴、そうじゃなくて外で見ている奴といろいろ条件はあるはずだ。……欲しいなら、俺を倒すんだな。そしたらVIP席の俺の所、プレゼントしてや──るぉっ!」
どこからともなく、高速の矢が俺の心臓を狙って射ぬかれた。
即座に反射眼が対応して回避したが……まさか、いきなりやってくるとは。
なんて感心していると、会場の至る所から魔力反応が感じ取れた。
……ん? こんな展開、前にも遭ったような気がするな。
《お忘れですか? 闘技大会の際、一度こういったことが……》
「ああ、アンがやった挑発か……って、結局俺のせいじゃないな」
うーん、たしかにアレで新しい武技や魔法が獲得できたから良かったんだけど……それで良しとしていいのかな?
まあ、それは今考えることでもないか。
「元気が良いのは良いことだけど、あんまり無茶はするなよ(──“虚空結界”)」
舞台を包むように、虚空属性の結界を展開する……凄い魔力を消費したな。
だがその甲斐もあって、すべての攻撃を無効化できている。
ゴホンと一度咳を吐き、一回戦の時と同様にマイクを手に取り会場に告げた。
「一回戦の説明を聞いていた分かったと思うが、この会場に居るみんなに新しいルールを考えてもらいたい」
すると、少しだけ魔法の威力が弱まっていく……いや、全部止まれよ。
どこからともなく「死ね~!」と叫ぶ魔女の声もするが、聞かなかったことにしよう。
「念のため、もう一度説明しておこう。みんなが持っているチケットの裏には、受けた思念を文字として表記する機能が付いている。そこに試合を見て感じた、設けたいルールを書いてほしい。たとえば──」
≪メルスさん≫
ここで突然の遮りが入る……魔法によって物理的(?)な干渉はずっとされているが、そちらは構わないので置いておこう。
「ん? どうした、リュシル」
≪具体例を挙げるのは止めてください。予め伝えられたのですが、メルスさんとアンさんのやり取りで挙げられていたものが、かなり書かれていたそうです≫
えっと、たしか俺の能力値解放を無しにするってのと自爆技に関するルールか。
自爆技は自己責任だからと採用されなかったらしく、俺の能力値に関しても本当に死ぬ可能性があるから使われなかったとか……。
「なら、リュシルが俺を苦しめるルールを言うこともないわけだな?」
≪えっ? は、はい! しませんよ≫
「そうか……ならいいんだ。なんだか残ったメンバーも全員眷属になっちゃったし、もしかしたら……って、怖かったんだよ」
もちろん、リュシルがそういった言動をするとも思えないがな。
これは会場の観客たちに伝えるメッセージである……死にたくないんだもん!
いちおうは蘇生系の能力を掻き集めているが、死にたくないのでやっている保険でしかないんだ。
クラーレの際に死んでみたものの、あれは万全の準備をしてから行ったものなのである意味ノーカンである。
……眷属の蘇生も含めて、一度試そうとは考えていたんだ。
≪だ、だからしませんよ! マシューも何か言ってください!≫
≪創造者、あまり開発者をイジメないでもらいたいのですが。そういったことは、私と開発者と三人だけのときだけに≫
≪い、イジメられなんていません! あと、そういった事実もありません!≫
うーん、相変わらず仲がいいもんで。
まあ、たしかにあんまりそういう時間は創れていないよな……マシューがそうやって言うと教えてくれることは、リュシルがそう呟いていたのかもしれない。
よし、“メモ”機能にでも書き込もうか。
「さて、話を戻すぞ。今回新しく導入された特殊ルールが、試合に強く影響したことを覚えているか? ……まあ、特に俺だったが、転移が使えないだけであれだけ苦労する。最後の魔眼禁止はほぼ意味を成さなかったんだが……たとえば──」
虚空結界を解除し、未だに放たれていた魔法の数々に向けて瞳を向ける。
「あらゆる事象を捻じ曲げる──歪曲眼」
空間ごとすべてが捻じれ、ぶつかり合って攻撃は消滅していく。
「望むもの以外を拒絶し、無効化する──幻滅眼」
ただ視線を合わせただけで、先ほどのようにナニカが起きるまでもなく攻撃が消える。
「あとは……そうだな、子供たちよ! これが男のロマンだ──閃光眼!」
いわゆる、目からビームというヤツだ。
巨大な光の柱が二本、俺の眼から飛びだし攻撃を呑み込んでいった。
歓声が会場の半分くらいから聞こえる。
……女性客からの声は無く、男から大歓声が上がって半分というわけだ。
「さぁ、閉会式はこれで終わりだ! お昼ご飯は外に用意してある、お土産に持って帰る分も含めて楽しんでくれ!」
茶を濁し、閉会式を強引に終わらせる。
……さて、俺も料理の準備をしないとな。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる