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偽善者と生命最強決定戦 十三月目

偽善者と二回戦閉会式 前篇

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≪二回戦の閉会式が始まりますよ!≫


 ……おっと、どうやら時間のようだ。
 夢の世界で試合観戦はしていたものの、時間の感覚が狂っていて少し困っていた。
 アナウンスでそう告げるのであれば、間違いなく俺の出番となったのだろう。


「(それじゃあ、行ってくる)」

《ん、気をつけて》


 そして起床。
 布団の中にリープはいないので、そのまま服として纏って会場に戻る。


「──おう、昨日ぶりだ!」


 大歓声が上がり、俺の登場を祝福してくれている。
 嗚呼、なんてノリが好い住民たちなんだろうか……ここまで来るのに少々時間がかかったが、(関係者が)諦めずに尽力した甲斐があったというもんだ。


「今日の試合も、楽しんでくれたかな? 昨日今日と連続して試合を見ている奴、今日だけ見に来れた奴、そうじゃなくて外で見ている奴といろいろ条件はあるはずだ。……欲しいなら、俺を倒すんだな。そしたらVIP席の俺の所、プレゼントしてや──るぉっ!」


 どこからともなく、高速の矢が俺の心臓を狙って射ぬかれた。
 即座に反射眼が対応して回避したが……まさか、いきなりやってくるとは。

 なんて感心していると、会場の至る所から魔力反応が感じ取れた。
 ……ん? こんな展開、前にも遭ったような気がするな。


《お忘れですか? 闘技大会の際、一度こういったことが……》

「ああ、アンがやった挑発か……って、結局俺のせいじゃないな」


 うーん、たしかにアレで新しい武技や魔法が獲得できたから良かったんだけど……それで良しとしていいのかな?
 まあ、それは今考えることでもないか。


「元気が良いのは良いことだけど、あんまり無茶はするなよ(──“虚空結界”)」


 舞台を包むように、虚空属性の結界を展開する……凄い魔力を消費したな。
 だがその甲斐もあって、すべての攻撃を無効化できている。

 ゴホンと一度咳を吐き、一回戦の時と同様にマイクを手に取り会場に告げた。


「一回戦の説明を聞いていた分かったと思うが、この会場に居るみんなに新しいルールを考えてもらいたい」


 すると、少しだけ魔法の威力が弱まっていく……いや、全部止まれよ。
 どこからともなく「死ね~!」と叫ぶ魔女の声もするが、聞かなかったことにしよう。


「念のため、もう一度説明しておこう。みんなが持っているチケットの裏には、受けた思念を文字として表記する機能が付いている。そこに試合を見て感じた、設けたいルールを書いてほしい。たとえば──」

≪メルスさん≫


 ここで突然の遮りが入る……魔法によって物理的(?)な干渉はずっとされているが、そちらは構わないので置いておこう。


「ん? どうした、リュシル」

≪具体例を挙げるのは止めてください。予め伝えられたのですが、メルスさんとアンさんのやり取りで挙げられていたものが、かなり書かれていたそうです≫


 えっと、たしか俺の能力値解放を無しにするってのと自爆技に関するルールか。
 自爆技は自己責任だからと採用されなかったらしく、俺の能力値に関しても本当に死ぬ可能性があるから使われなかったとか……。


「なら、リュシルが俺を苦しめるルールを言うこともないわけだな?」

≪えっ? は、はい! しませんよ≫

「そうか……ならいいんだ。なんだか残ったメンバーも全員眷属になっちゃったし、もしかしたら……って、怖かったんだよ」


 もちろん、リュシルがそういった言動をするとも思えないがな。
 これは会場の観客たちに伝えるメッセージである……死にたくないんだもん!

 いちおうは蘇生系の能力を掻き集めているが、死にたくないのでやっている保険でしかないんだ。
 クラーレの際に死んでみたものの、あれは万全の準備をしてから行ったものなのである意味ノーカンである。

 ……眷属の蘇生も含めて、一度試そうとは考えていたんだ。


≪だ、だからしませんよ! マシューも何か言ってください!≫

創造者クリエイター、あまり開発者ディベロッパーをイジメないでもらいたいのですが。そういったことは、私と開発者と三人だけのときだけに≫

≪い、イジメられなんていません! あと、そういった事実もありません!≫


 うーん、相変わらず仲がいいもんで。
 まあ、たしかにあんまりそういう時間は創れていないよな……マシューがそうやって言うと教えてくれることは、リュシルがそう呟いていたのかもしれない。

 よし、“メモ”機能にでも書き込もうか。


「さて、話を戻すぞ。今回新しく導入された特殊ルールが、試合に強く影響したことを覚えているか? ……まあ、特に俺だったが、転移が使えないだけであれだけ苦労する。最後の魔眼禁止はほぼ意味を成さなかったんだが……たとえば──」


 虚空結界を解除し、未だに放たれていた魔法の数々に向けて瞳を向ける。


「あらゆる事象を捻じ曲げる──歪曲眼」

 空間ごとすべてが捻じれ、ぶつかり合って攻撃は消滅していく。


「望むもの以外を拒絶し、無効化する──幻滅眼」

 ただ視線を合わせただけで、先ほどのようにナニカが起きるまでもなく攻撃が消える。


「あとは……そうだな、子供たちよ! これが男のロマンだ──閃光眼!」

 いわゆる、目からビームというヤツだ。
 巨大な光の柱が二本、俺の眼から飛びだし攻撃を呑み込んでいった。

 歓声が会場の半分くらいから聞こえる。
 ……女性客からの声は無く、男から大歓声が上がって半分というわけだ。


「さぁ、閉会式はこれで終わりだ! お昼ご飯は外に用意してある、お土産に持って帰る分も含めて楽しんでくれ!」


 茶を濁し、閉会式を強引に終わらせる。
 ……さて、俺も料理の準備をしないとな。


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