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偽善者と閉じた世界 十二月目

偽善者と自己紹介 その19

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 夢現空間 居間


 無事『月の乙女』に加入した新人の育成を終え、まったりのんびりとした生活が行えるようになった。
 彼女たちは日々精進して俺以上に『月の乙女』の力になってくれるだろう。


「……なんてことがあってな。生産に関してはうちの娘たち、誰一人として本気でやってくれないから困るよ」

「魔女たちはぼくに料理の祝福を与えてくれなかったからね、みんなのように最初から料理ができるわけじゃないんだ」

「なんで料理一本絞りなんだよ。別の生産活動でもよくないか?」


 一部の眷属たちも、料理ならするんだ料理なら……それ以外は、リュシルが錬金術を嗜むぐらいか?
 機械関係なら、アイリスが時々俺のアイテムを拝借して遊んでいるが、それは自分で生み出しているのではなく改造であるため別として挙げておこう。


「ユラルと植物園で何かしてるだろう? いちおうアレも生産活動だろう。というか、薬草の一つや二つ、新しく栽培してくれると助かるんだが」

「そうかい? ポーションが無くとも君は持ち前の不死性があるじゃないか」

「鈍いだけだ。ポーションはどれだけあっても困らないさ。いちおう、頼めるか?」

「なら、相談しておくよ」


 彼女たちならば、きっと始めから特級薬草の栽培でも成功できるだろう。
 ある種植物に愛されているのだし、どうにかできると踏んでいる。


「ま、この話は別として──さぁさぁ今回も盛り上がっていこうか! 第十九回自己紹介ターイム!」

「前回がユラルだったから予想はしていたけど、やっぱりこの順番か」

「そう、今回のゲストはこのお方! まったく(魅力補正)が働いていないターリアさんでございます!」

「……ひどいな。君にぼくの魅了もカリスマも効くわけないじゃないか」

「そんなスキルとは関係ない、お前自身の魅力にはメロメロだけどな」

「……女たらしめ」


 何か言われた気もするが──とりあえず質問を始めるとしようか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「問01:あなたの名前は?」

「ターリア=ペローさ」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「女性、ペロー王国、──年4月10日(年には本人の希望により、修正がかかっています)」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「寝ていて伸びた長い銀髪、あとは銀色の瞳かな? それ以外、あんまりぼくって特徴無いよね?」

「いや、結構あるからな」


「問04:あなたの職業は?」

「呪茨使いさ」

「……ヤンのときも思ったけど、どうしてそう物騒な職業名が多いんだ?」

「君が知らないだけで、君の眷属の転職リストはそういったものばかりさ」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「男勝り、といった点だね。なんせ男として育てられていたんだから」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「植物栽培だね」


「問07:座右の銘は?」

「早寝早起き、これを気にしているよ」


「問08:自分の長所・短所は?」

「どちらもどこでもすぐに寝れることだね」

「……伸々太君かよ」

「わざとイントネーションを変えたね」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「どちらも植物……と言いたいけど、最近は少しずつ慣れてきたから嫌いなものは無い、のかな?」


「問10:ストレスの解消法は?」

「寝ることと植物栽培さ」


「問11:尊敬している人は?」

「メルス……は尊敬じゃないか。そういった点だと、ユラルが一番だと思う」

「ユラルにもそれは訊いたが……なぜだ?」

「ガーデニングの際にちょっとね」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「品種改良をユラルといっしょにクエラムに頼んでいるよ」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「家族もそうだけど……ぼくに希望をくれた身勝手な王子様だね」

「……ごふっ」


「問14:あなたの信念は?」

「長い時間で見た夢を、いつか現実にやってみることだね……まあ、ほとんどはもう試してみたけど」


「問15:癖があったら教えてください」

「つい、男として育てられた頃の気分でいることかな?」

「たまにラフな格好で出てくるとドキッとするからな。心臓に悪いから止めてくれ」

「……振りかい?」

「違うわ!」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「これは……どっちなんだろうか。だがここはあえてボケ、と答えておくよ」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「王子様が来てくれたこと」


「問18:一番困ったことは?」

「王子様が初心だったこと」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「赤ワインが美味しいかな?」


「問20:自分を動物に例えると?」

「……自分で言うのもあれだけど、メルスの国でいうとナマケモノだよね」

「おう、それが分かっているのか。アイツはアイツで動く時は動くんだからな。ずっと怠けてたリアよりは動くんだぞ」

「ぼ、ぼくだって働いてるじゃないか! 薬草ができたら見てろよ!」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「眠り姫……だったかな?」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「寝すぎたことさ」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「夢で見た夢を叶えること、それが夢さ」

「わざと分かりづらくしてるだろ」

「やっぱりバレるものだね」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「少し複雑だったけど、そう悪くなかったと思うよ」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「しいて言うなら、あのとき針を刺さなかったらどうなっていたか……気になるね」

「たぶん、そうでなくとも別の方法で眠らされてたと思うぞ」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「メルスに手の打ちようがないなら、また眠りの世界に戻ることにするよ」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「なかなかに王子様が強情で、ぼくの願いの一つを叶えてくれないことかな?」

「……の、ノーコメントで」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?


「それはないかな」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「普通の庶民として生まれて、君とまた会えたなら……」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「意味のある死、誰からも見てもらえないまま死ぬのは寂しいからね」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「君は自分を偽善者だというし、ぼくも周りもそれ自体は否定しない。君がそれを強く意識しているから、根本的な部分はずっと変わらないと思う」

「…………」


「問32:最後に何か一言」

「だけど、覚えていてね。君によってぼくたちは救われ、強い思慕を抱いているとね」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はいカット!」

「ここでユラルのように言ってもいいが、君は意固地だからね。あえて何も言わないでおこうか」

「そ、そうか……」

「おや? ぼくも言った方がいいかい? 君のことを大好きだとね」

「ばっ、おまっ……言ってんじゃねぇか!」


 なんだかユラルのときと似たような展開になったんだが……これ、あと十数回も続くのかよ!


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