人災派遣のフレイムアップ

紫電改

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第7話:『壱番街サーベイヤー』

◆20:ルート・ダウンポート−3

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「やあ亘理君。よく来てくれたねえ」
「お久しぶりっす、斯波……えーっと、今は教授ですよね」

 白衣に黒縁の眼鏡、四十代後半という年齢以上に後退した額の人物がおれ達を迎える。

「おかげさまでね。無事論文も認められて教授の資格を得ることが出来たよ。君には感謝してもしたりない」
「まーわかりやすいほど雑なコピペでしたからねえ」
「君みたいに簡単に見抜いてくれる人がもっと多ければ助かるんだけどね」

 この御仁、せっかく書きあげた論文を盗用され、しかも先に発表されてしまうと言う被害に遭ったことがある。事務所でバイトを始めたばかりのおれに、人脈があるという理由で調査依頼がまわり、なんとか盗作を証明したという経緯があったりしたのだ。

「なんにしても、これでやっと恩が返せる。研究室のみんなには話を通しておいたからね」
「ありがとうございます。ってか、恩とかそういうのはなしでお願いします。おれが手伝ったのも仕事なんで。報酬ももらってますし」
「まあそう言わないで。君が盗作を証明してくれなかったら、僕は教授どころか学校にも残れなかったんだから。個人的な感謝の念と思ってくれ」

 ついてくるように促し、鍵をぶら下げたまま踵を返す斯波教授。おれ達は礼を言い、階段を上ってゆく。


 
「前から思ってたけどアンタ、結構顔広いんだねえ」

 後に続く真凛が仏頂面で声をかける。

「そうか?」
「だってあの人、先生なんでしょ?」
「ふむ」

 高校生の真凛にしてみれば、教師とは生徒にものを教える側の存在で、互角の立場で話をするというのは違和感があるのかも知れない。

「大学になれば卒業した先輩がそのまま教える側になるってのもそう珍しくはないからなあ。仕事で会えば単純に元依頼人と担当者だし。後は何かの折に時々連絡を取り合うようにしてると、自然とつながりが生まれる。そんなところだ」
「へえ~、でもなんか先生と仲良くなると、宿題増やされそうじゃない?」

 オマエにとって先生とは会話するたび宿題を押しつけてくるものでしかないのか。

「ふふん、それよりテストの傾向とかを教えてくれるから楽になるかもしれんぞ……ってぇか、普通におまえのところの学校の先生方とも時々話してるからな」
「えっ」

 真凛の顔が凍り付く。実は以前、おれは真凛の通う学校内での調査のため、事務員見習いとして潜入したことがある。その時先生方の何人かとはそれなりに交流を持ったりもしたのである。

「オマエの成績についても色々聞いてるぞ。秋の中間試験、とくに英語の成績がさんざんだったそうじゃあないか。こないだ若松先生から相談を受けたんだからな。常々言ってるだろう、この仕事に注力するのはいいが、本分である勉強をおろそかには――」
「あーっ!見えてきたよ、あれが研究室かなあ?」

 露骨に話をそらす真凛。まったくどこでそんな手管を学んでくるのやら。
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