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第6話:『北関東グレイヴディガー』
◆16:決戦の朝-3
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「ちょっと土直神さん!思いっきりバレてるじゃないですか尾けてたの!」
「ウン。まぁしょうがないでしょ。おいらとシドウさんだけならともかく、こっちには清音ちんや徳田さんまでいるわけだし」
今日は最初から巫女服で、組立済みの弓を背負った清音の抗議に、こちらは昨日同様ラフな格好に携帯ゲーム機をぶら下げた土直神が応じる。その背後には背広姿の二人、一切の表情を遮断し沈黙を保ったままの四堂と、やっとのことで後についてきた徳田の姿があった。
「さりげなく責任回避してますけど。ゲーム機の音楽鳴らしっばなしでバレないと考える方が甘いんじゃないですか?」
確かに土直神の携帯ゲーム機からは、この山中に相応しくない電子音が漏れていた。
「ありゃこいつは失礼。まあとにかく、見つかっちゃったものはしょうがないさね」
憤る清音とは正反対に、一向に危機感のない土直神だった。
「だから私は最初から反対だったんです!あちらの術法の力に頼るなんて」
今朝早くに宿泊した旅館を出発した清音達は、板東山の入り口付近で一度車を停め、フレイムアップのメンバーがやってくるのを待ち伏せし、そこから尾行していたのだった。
昨夜土直神が言っていた、『小田桐の遺体を見つけるための方法』とは何のことはない、フレイムアップのチームに遺体の場所を探させてその後を尾けるというものだった。
「それくらいならいっそ、もう一度私にやらせてもらえれば……!」
清音としても土直神の作戦の有効性は理解している。確かに手としてはアリだろう。だが昨日自分の術で遺体の場所を見つけることが出来なかった清音にとっては、これは屈辱以外の何ものでもない。
「まあそう言わんでよ清音ちん。昨日の旅館でもそうだったけどサ。こういうのは無線と有線の違いだから」
広域での捜索が可能な反面、環境の影響を受けやすい清音の術と、範囲が特定され、手がかりとなるアイテムが必要とされるかわりに環境の影響を受けない相手の術。どちらが優れた術というわけではなく、使い方と状況次第と言うことだ。
「あのう……お二人とも、あちらの方々がお待ちのようですが……」
控えめな徳田の声に土直神が慌てて前を向くと、挑戦的な視線をこちらに向けている青年と目があった。傍らに控える少女もすでに臨戦態勢となっている。奥のコートの男はまだ自分が出る幕ではないと思っているのか、こちらに背を向けたままだ。
「昨日は世話になったな、『清めの渦』、『風の巫女』、『粛清者』。ここら辺じゃあんたらは結構有名らしい。少し調べればウルリッヒ保険所属だって事もすぐにわかったぜ」
口調だけは軽薄に青年が言う。三人の中で今ひとつ異能力が判然としないひとり……たしか亘理陽司、とか言ったか。
「それはお互い様。おいら達も兄サン達らの事はすぐ調べがついたよ。だからそこの聖者様の奇跡を当て込んでここまで尾けてきたんだし」
こちらも口調だけはのんびりと土直神が返す。表情筋だけ笑顔のまま、油断なく視線を交える両者。三秒ほどの沈黙の後、口を開いたのは土直神だった。
「なあ兄サン、協力しないかい?」
「土直神さん!?」
「協力!?」
清音と、あちらの女子高生、『殺捉者』が同時に眉をひそめる。
「兄サン達はどう思っているかは知らないけどサ。元々昨日の戦闘は、偶然お互いのメンバーに因縁があったから発生したもんだし。純粋にこの任務に限れば、おいら達が戦わなきゃいけない理由は、多分ないよ」
語りながらさりげなく視線を横に向ける。隣の大男、四堂蔵人は亘理陽司を鷹のように鋭く睨みつけたまま。だが必死に自制しているのだろう、それ以上の行動を起こすつもりはないようだった。
「兄サン達が何のために東京からこの山奥まで来たかってのは知らないよ。でも多分、『幽霊騒ぎの正体を確かめにきた』とかってところじゃないの?そんなら、平和的に協力すれば、すぐにお互いの案件は解決するって話サ」
亘理はその提案を聞くと、皮肉っぽい笑みを閃かせた。
「はっ!協力したいっつっても、遺体の埋まっている場所はもう判明したんだ。今さらあんた等に手助けなんぞ乞わなきゃいけない義理はないだろ?」
「ウン。まぁしょうがないでしょ。おいらとシドウさんだけならともかく、こっちには清音ちんや徳田さんまでいるわけだし」
今日は最初から巫女服で、組立済みの弓を背負った清音の抗議に、こちらは昨日同様ラフな格好に携帯ゲーム機をぶら下げた土直神が応じる。その背後には背広姿の二人、一切の表情を遮断し沈黙を保ったままの四堂と、やっとのことで後についてきた徳田の姿があった。
「さりげなく責任回避してますけど。ゲーム機の音楽鳴らしっばなしでバレないと考える方が甘いんじゃないですか?」
確かに土直神の携帯ゲーム機からは、この山中に相応しくない電子音が漏れていた。
「ありゃこいつは失礼。まあとにかく、見つかっちゃったものはしょうがないさね」
憤る清音とは正反対に、一向に危機感のない土直神だった。
「だから私は最初から反対だったんです!あちらの術法の力に頼るなんて」
今朝早くに宿泊した旅館を出発した清音達は、板東山の入り口付近で一度車を停め、フレイムアップのメンバーがやってくるのを待ち伏せし、そこから尾行していたのだった。
昨夜土直神が言っていた、『小田桐の遺体を見つけるための方法』とは何のことはない、フレイムアップのチームに遺体の場所を探させてその後を尾けるというものだった。
「それくらいならいっそ、もう一度私にやらせてもらえれば……!」
清音としても土直神の作戦の有効性は理解している。確かに手としてはアリだろう。だが昨日自分の術で遺体の場所を見つけることが出来なかった清音にとっては、これは屈辱以外の何ものでもない。
「まあそう言わんでよ清音ちん。昨日の旅館でもそうだったけどサ。こういうのは無線と有線の違いだから」
広域での捜索が可能な反面、環境の影響を受けやすい清音の術と、範囲が特定され、手がかりとなるアイテムが必要とされるかわりに環境の影響を受けない相手の術。どちらが優れた術というわけではなく、使い方と状況次第と言うことだ。
「あのう……お二人とも、あちらの方々がお待ちのようですが……」
控えめな徳田の声に土直神が慌てて前を向くと、挑戦的な視線をこちらに向けている青年と目があった。傍らに控える少女もすでに臨戦態勢となっている。奥のコートの男はまだ自分が出る幕ではないと思っているのか、こちらに背を向けたままだ。
「昨日は世話になったな、『清めの渦』、『風の巫女』、『粛清者』。ここら辺じゃあんたらは結構有名らしい。少し調べればウルリッヒ保険所属だって事もすぐにわかったぜ」
口調だけは軽薄に青年が言う。三人の中で今ひとつ異能力が判然としないひとり……たしか亘理陽司、とか言ったか。
「それはお互い様。おいら達も兄サン達らの事はすぐ調べがついたよ。だからそこの聖者様の奇跡を当て込んでここまで尾けてきたんだし」
こちらも口調だけはのんびりと土直神が返す。表情筋だけ笑顔のまま、油断なく視線を交える両者。三秒ほどの沈黙の後、口を開いたのは土直神だった。
「なあ兄サン、協力しないかい?」
「土直神さん!?」
「協力!?」
清音と、あちらの女子高生、『殺捉者』が同時に眉をひそめる。
「兄サン達はどう思っているかは知らないけどサ。元々昨日の戦闘は、偶然お互いのメンバーに因縁があったから発生したもんだし。純粋にこの任務に限れば、おいら達が戦わなきゃいけない理由は、多分ないよ」
語りながらさりげなく視線を横に向ける。隣の大男、四堂蔵人は亘理陽司を鷹のように鋭く睨みつけたまま。だが必死に自制しているのだろう、それ以上の行動を起こすつもりはないようだった。
「兄サン達が何のために東京からこの山奥まで来たかってのは知らないよ。でも多分、『幽霊騒ぎの正体を確かめにきた』とかってところじゃないの?そんなら、平和的に協力すれば、すぐにお互いの案件は解決するって話サ」
亘理はその提案を聞くと、皮肉っぽい笑みを閃かせた。
「はっ!協力したいっつっても、遺体の埋まっている場所はもう判明したんだ。今さらあんた等に手助けなんぞ乞わなきゃいけない義理はないだろ?」
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