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第2話:『秋葉原ハウスシッター』
◆07:あるマッドサイエンティストのテンプレ−2
しおりを挟む振り返れば、そこにマッドサイエンティストが居た。
うむ。文章で表現すれば一行で過不足無くまとまる。以上解説終わり。
「亘理氏ッ!!あまり最適化されていない脳での思考を周囲に垂れ流すのはよくないッ!」」
せっかく一行で解説を終了したというのに、そのマッドサイエンティストはつかつかとこちらに歩み寄ってきた。
「亘理氏。嘆かわしきは書き込み不全な貴公の脳。小生はマッドサイエンティストではなく純朴な一学徒に過ぎぬと常日頃指摘しているだろう。二十三度目の指摘なのだから、いかに分裂頻度が下り坂にある貴公の脳神経でもそろそろシナプスをつないでは貰えんかねッ」
「何としたことか、歩み寄りつつそのマッドサイエンティストは、こちらの思考を読んだかのごとく奇態な台詞を吐き散らしながらなおも近づいてくる」
「さっきから台詞がもれてるよ、陽司」
「ぬはぁしまった」
冗談はさておいて。
「いやあ羽美さん。相変わらずトばしてますねえ」
「うむッ。夏は良い。成層圏からの電波を受信しやすいからなッ」
さいですか。
この御人の名前は、石動羽美さんという。ここまで来れば想像はついていると思うが、彼女もおれ達『人材派遣会社フレイムアップ』のメンバーの一人だ。以前どこかで話したことがあるかも知れないが、おれ達が仕事で使うしょーもない小道具の発明と、主に電子面での情報収集、技術的なバックアップを主な役割としている。
おれがいつも胡乱なアプリや音楽を詰めて持ち歩いている違法改造携帯『アル話ルド君』も彼女の手によるものだ。現在はうちの事務所に事実上就職しているが、それ以前は(よくは知らないが)アメリカの某工科大学でもちょっとは名の知れた俊英だったのだとか。
年のころは所長と同年か若干上ではないだろうか。伸ばし放題のぼさぼさの髪。どこのメーカーのものかわからない怪しげな瓶底眼鏡を、まるで戦場に向かうハイテク兵士のゴーグルのようにがっつり装備しているその風貌だけでも十二分に怪しげだ。いかにも学者、と全身で主張するかのごとき白衣を着込んではいる。だが、地面にまで届く長い裾をずるずると引きずっているせいで、すでに下半分は白衣なのか茶衣なのか判別不能になっている。
ちなみにうちの女性陣の中ではもっとも長身だったりする。ひょっとしたら直樹に匹敵するような脚長外人体型なのではないだろうか。いつも白衣に包まれている上、PCの前に座っているときは常に妖しい笑みを浮かべつつ猫背、反面、歩くときは無意味に笑いながらそっくりかえっているので今ひとつ判断がつけがたいのだが……。
「時に亘理氏ッ。困っているそうだなッ」
「イヤ別ニ困ッテイマセンヨ」
「遠慮せずとも良いッ。安心せよ。科学が無知蒙昧な徒を差別したのは十九世紀までだッ」
あんまり根拠の無い発言をしないで欲しいなあ。とはいえ、このままではあまりにも話が進まないので、おれは今までの状況を羽美さんに話してのけた。
「そういうわけでね。ここは羽美ちゃん頼みってわけなのよ」
「石動さん。お願いします」
さりげなくテーブルの下で真凛がおれを小突く。ヘイヘイ。ワカリマシタヨ。
「ああ、神様仏様石動大明神様っ。この卑小な知識しか持たぬ哀れな凡俗をその偉大な叡智でお救いください~」
あまりにも見え透いたおだてにいくら何でも怒るかと思ったものだが。
「ふむぅ。ふむぅ!ふむぅ!!人探しとな!容易いッ!!小生に任せておきタマエッ!」
この辺り、いかに知能指数が高かろうが、うちの事務所の構成メンバーたる資格は充分だと、おれは思う。
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