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第1話:『副都心スニーカー』
◆05:美女のお誘い(コーヒー)−1
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「お探ししましたよ。景品をご用意したのにすぐ立ち去ってしまわれたのですもの」
カウンターに佇んでいたのは、このアミューズメントパークの係員の制服をまとった女性である。ありていに言えば、素晴らしい美女であった。黒髪をいわゆるポニーテールにまとめているのだが、むしろ、結っているという表現がどこかしっくり来る。スタイルは西洋八頭身なのだが、和服が意外と似合うんで無いかなーと脳裏でつい想像してしまう程に、清しい雰囲気を漂わせていた。歳の頃は二十五にわずかに届かないところだろうか。世間知らずの大学の先輩方とは違う、大人の色気に当方メロメロでございます。いてっ。脇腹をどつくな。
「あのパンチングマシーンは、時々プロの格闘技選手の方も遊んでいかれるのですよ」
「いやー、久しぶりにちょっとこう昔マスターしたカラテの突きでも出してみちゃったらいい数字が出てしまいましてねえ」
まさか隣に座ってるこのお子様がどつきました、とは言い難いので無難にまとめる。お姉さんはまあ、格闘技をやってらっしゃるんですか、と問う。生憎そんなもん真面目に習ったことは無い。
「ま、機械が故障でもしてたんじゃないっすかね」
「そ、そうそうそうですよ」
お姉さんは、そうかもしれませんね、でも記録は記録ですし、と言うと数枚のチケットをくれた。どうやらこれを使えばアミューズメントパークのゲーム、ドリンクが無料になるというものらしい。おれはさっそくその場でチケットを切って、今度はアイスコーヒーを三人分頼むことにした。
「三人分、ですか?」
「ええ、おれとこいつと、貴方の分」
本当はこいつと、のくだりを外して二人分にしたかったのだが後がコワイ。営業スマイルで丁重にごまかされるかと思ったが、お姉さんは驚いたものの、すぐにくすくすと笑うと、カウンターの奥からアイスコーヒーを三人分用意してくれた。仕事と割り切ればシャイなおれでも割とこういうセリフを吐けるというものである。なお、横から「普段はもっとしょうもないこと言ってるじゃない」という声があがったが無視することにした。
「いやあ、今日は退屈してる弟の引率でやってきたんですよ。会社のビルの中にある、っていうから小さいゲームセンターみたいなものを想像してたんですが」
「誰が弟だ!」
お姉さんは声を上げた真凛ににっこりと微笑む。
「高校生ですか。可愛い妹さんですね」
ああ。そういえば今日は制服着ていたっけな。
「今日は楽しんでいただけてますか?」
「ええ、まあ最新のゲームになるとちょっとついていけないところもありますが」
「もういい歳だもんねえ」
「……おまえ、そんなセリフ路上で吐くと世の二十三十四十代から呪われるよ?」
ちなみにおれはまだ花の十代である。
「あんたの精神的な年齢ってことだよ。こないだもみんなが出かけているときに一人残ってスーパー銭湯でマッサージしてもらってたじゃない」
「あ、あれはいいだろ。風呂上りのマッサージは神が定めたもうた人生の娯楽ですよ?」
おねえさんは口に拳を当てて笑うのを堪えて、仲のよいご兄妹なんですね、と言った。ええまあ、仲がいいかはともかくどうにかやっとりますよと返すと、真凛も不承不承頷く。視線がアトデオボエテロヨと語っていたが、放置することにした。
「こんなでっかいビルを建てる辺りはさすがザラス、ということですかね」
「それはもう、ちょっとここは他のビルとは違いますからね」
言うとお姉さんはアイスコーヒーにお代わりを注いでくれた。サービスと言うことらしい。
カウンターに佇んでいたのは、このアミューズメントパークの係員の制服をまとった女性である。ありていに言えば、素晴らしい美女であった。黒髪をいわゆるポニーテールにまとめているのだが、むしろ、結っているという表現がどこかしっくり来る。スタイルは西洋八頭身なのだが、和服が意外と似合うんで無いかなーと脳裏でつい想像してしまう程に、清しい雰囲気を漂わせていた。歳の頃は二十五にわずかに届かないところだろうか。世間知らずの大学の先輩方とは違う、大人の色気に当方メロメロでございます。いてっ。脇腹をどつくな。
「あのパンチングマシーンは、時々プロの格闘技選手の方も遊んでいかれるのですよ」
「いやー、久しぶりにちょっとこう昔マスターしたカラテの突きでも出してみちゃったらいい数字が出てしまいましてねえ」
まさか隣に座ってるこのお子様がどつきました、とは言い難いので無難にまとめる。お姉さんはまあ、格闘技をやってらっしゃるんですか、と問う。生憎そんなもん真面目に習ったことは無い。
「ま、機械が故障でもしてたんじゃないっすかね」
「そ、そうそうそうですよ」
お姉さんは、そうかもしれませんね、でも記録は記録ですし、と言うと数枚のチケットをくれた。どうやらこれを使えばアミューズメントパークのゲーム、ドリンクが無料になるというものらしい。おれはさっそくその場でチケットを切って、今度はアイスコーヒーを三人分頼むことにした。
「三人分、ですか?」
「ええ、おれとこいつと、貴方の分」
本当はこいつと、のくだりを外して二人分にしたかったのだが後がコワイ。営業スマイルで丁重にごまかされるかと思ったが、お姉さんは驚いたものの、すぐにくすくすと笑うと、カウンターの奥からアイスコーヒーを三人分用意してくれた。仕事と割り切ればシャイなおれでも割とこういうセリフを吐けるというものである。なお、横から「普段はもっとしょうもないこと言ってるじゃない」という声があがったが無視することにした。
「いやあ、今日は退屈してる弟の引率でやってきたんですよ。会社のビルの中にある、っていうから小さいゲームセンターみたいなものを想像してたんですが」
「誰が弟だ!」
お姉さんは声を上げた真凛ににっこりと微笑む。
「高校生ですか。可愛い妹さんですね」
ああ。そういえば今日は制服着ていたっけな。
「今日は楽しんでいただけてますか?」
「ええ、まあ最新のゲームになるとちょっとついていけないところもありますが」
「もういい歳だもんねえ」
「……おまえ、そんなセリフ路上で吐くと世の二十三十四十代から呪われるよ?」
ちなみにおれはまだ花の十代である。
「あんたの精神的な年齢ってことだよ。こないだもみんなが出かけているときに一人残ってスーパー銭湯でマッサージしてもらってたじゃない」
「あ、あれはいいだろ。風呂上りのマッサージは神が定めたもうた人生の娯楽ですよ?」
おねえさんは口に拳を当てて笑うのを堪えて、仲のよいご兄妹なんですね、と言った。ええまあ、仲がいいかはともかくどうにかやっとりますよと返すと、真凛も不承不承頷く。視線がアトデオボエテロヨと語っていたが、放置することにした。
「こんなでっかいビルを建てる辺りはさすがザラス、ということですかね」
「それはもう、ちょっとここは他のビルとは違いますからね」
言うとお姉さんはアイスコーヒーにお代わりを注いでくれた。サービスと言うことらしい。
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