人災派遣のフレイムアップ

紫電改

文字の大きさ
上 下
14 / 368
第1話:『副都心スニーカー』

◆05:美女のお誘い(コーヒー)−1

しおりを挟む
「お探ししましたよ。景品をご用意したのにすぐ立ち去ってしまわれたのですもの」

 カウンターに佇んでいたのは、このアミューズメントパークの係員の制服をまとった女性である。ありていに言えば、素晴らしい美女であった。黒髪をいわゆるポニーテールにまとめているのだが、むしろ、結っているという表現がどこかしっくり来る。スタイルは西洋八頭身なのだが、和服が意外と似合うんで無いかなーと脳裏でつい想像してしまう程に、すがしい雰囲気を漂わせていた。歳の頃は二十五にわずかに届かないところだろうか。世間知らずの大学の先輩方とは違う、大人の色気に当方メロメロでございます。いてっ。脇腹をどつくな。

「あのパンチングマシーンは、時々プロの格闘技選手の方も遊んでいかれるのですよ」
「いやー、久しぶりにちょっとこう昔マスターしたカラテの突きでも出してみちゃったらいい数字が出てしまいましてねえ」

 まさか隣に座ってるこのお子様がどつきました、とは言い難いので無難にまとめる。お姉さんはまあ、格闘技をやってらっしゃるんですか、と問う。生憎そんなもん真面目に習ったことは無い。

「ま、機械が故障でもしてたんじゃないっすかね」
「そ、そうそうそうですよ」

 お姉さんは、そうかもしれませんね、でも記録は記録ですし、と言うと数枚のチケットをくれた。どうやらこれを使えばアミューズメントパークのゲーム、ドリンクが無料になるというものらしい。おれはさっそくその場でチケットを切って、今度はアイスコーヒーを三人分頼むことにした。

「三人分、ですか?」
「ええ、おれとこいつと、貴方の分」

 本当はこいつと、のくだりを外して二人分にしたかったのだが後がコワイ。営業スマイルで丁重にごまかされるかと思ったが、お姉さんは驚いたものの、すぐにくすくすと笑うと、カウンターの奥からアイスコーヒーを三人分用意してくれた。仕事と割り切ればシャイなおれでも割とこういうセリフを吐けるというものである。なお、横から「普段はもっとしょうもないこと言ってるじゃない」という声があがったが無視することにした。

「いやあ、今日は退屈してる弟の引率でやってきたんですよ。会社のビルの中にある、っていうから小さいゲームセンターみたいなものを想像してたんですが」
「誰が弟だ!」

 お姉さんは声を上げた真凛ににっこりと微笑む。

「高校生ですか。可愛い妹さんですね」

 ああ。そういえば今日は制服着ていたっけな。

「今日は楽しんでいただけてますか?」
「ええ、まあ最新のゲームになるとちょっとついていけないところもありますが」
「もういい歳だもんねえ」
「……おまえ、そんなセリフ路上で吐くと世の二十三十四十代から呪われるよ?」

 ちなみにおれはまだ花の十代である。

「あんたの精神的な年齢ってことだよ。こないだもみんなが出かけているときに一人残ってスーパー銭湯でマッサージしてもらってたじゃない」
「あ、あれはいいだろ。風呂上りのマッサージは神が定めたもうた人生の娯楽ですよ?」

 おねえさんは口に拳を当てて笑うのを堪えて、仲のよいご兄妹なんですね、と言った。ええまあ、仲がいいかはともかくどうにかやっとりますよと返すと、真凛も不承不承頷く。視線がアトデオボエテロヨと語っていたが、放置することにした。

「こんなでっかいビルを建てる辺りはさすがザラス、ということですかね」
「それはもう、ちょっとここは他のビルとは違いますからね」

 言うとお姉さんはアイスコーヒーにお代わりを注いでくれた。サービスと言うことらしい。
しおりを挟む
よろしければ、『お気に入り』に追加していただけると嬉しいです!感想とか頂けると踊り狂ってよろこびます
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

私、事務ですけど?

フルーツパフェ
経済・企業
自動車業界変革の煽りを受けてリストラに追い込まれた事務のOL、霜月初香。 再就職先は電気部品の受注生産を手掛ける、とある中小企業だった。 前職と同じ事務職に就いたことで落ち着いた日常を取り戻すも、突然社長から玩具ロボットの組込みソフトウェア開発を任される。 エクセルマクロのプログラミングしか経験のない元OLは、組込みソフトウェアを開発できるのか。 今話題のIoT、DX、CASE――における日本企業の現状。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

私がこの株を買った訳 2024

ゆきりん(安室 雪)
経済・企業
2024もチマチマと株主優待や新たに買った株の話し、貧乏作者の貧乏話しを書いて行きたいなぁ〜と思います。 株の売買は自己責任でお願いします。 よろしくお願いします。

会社でのハラスメント・・・ その一斉メール必要ですか?

無責任
経済・企業
こんな事ありますよね。ハラスメントなんて本当に嫌 現代社会において普通に使われているメール。 それを使った悪質な行為。 それに対する戦いの記録である。 まぁ、フィクションですが・・・。

処理中です...