253 / 328
世界救済委員会
第252話 一緒に寝ないか
しおりを挟む
「何をしているんだお前は?」
風呂上がり備え付けの浴衣を着て寛ぐ俺を見た瞑夜の一声だった。
この連れ込み旅館古くさいが茶請けとお茶はなかなかいい。
はあ~生き返る。
そう言う意味では風呂も古風ではあるが汚くはない、掃除が行き届いたわびさびがある。
普通の旅館としてもやっていけるんじゃないか?
「風呂上がりに寛いでいるだけだよ。
一応お前にも勧めたけど自分で断っただろ。それで服と下着は」
「これだ、さっさと着替えろ」
瞑夜はぶっきらぼうに袋を投げ付けてくる。
「どれどれ」
中を見ればトランクスTシャツにユエクロのマネキンのコーディネイト一式を買ってきたような服が一通り。これなら目立たない、街の風景に解ける。
でもちょっと心許ないから革ジャンでも買って羽織って防御力を上げておきたい。
「ありがとうな。
それで追加でお願いがあるんだが、いいか」
「まだあるのか?」
両手を合わせて拝む俺を見下ろす瞑夜の目は冷たい。終業間際に残業を言い渡す上司を見るOLのようだ。
「一緒に寝ないか?」
「ああ」
俺が指一本立てるのと瞑夜から殺気が溢れるのが同時。
「一時間でいい、それくらいあれば十分スッキリ出来る」
「遺言は?」
瞑夜の指先が真っ直ぐ伸びた手刀が振り上げられる。あれが振り下ろされれば手刀でも鬼の力なら俺の首が飛ぶ。
本気で怒っている、この真面目女が。
「気が引けるから一応誘ったが、そんなに怒るなら俺一人で布団は独占させて貰う。
兎に角寝かせてくれ」
「はい?」
瞑夜の首が飼い主に意味不明なことを言われた子犬のように傾く。
「徹夜の頭では判断をミスる」
流石に瞑夜が来るまで寝て待っていられるほど剛胆ではない、風呂にゆっくり入ってセルフマッサージ。大分リフレッシュしたので体の疲れは誤魔化せるかも知れないが、頭はそうはいかない。
基本起きている限り考えることを辞められない俺は寝ない限り頭が休まらない。
これではいつもより判断が数秒遅れる上に合理解を間違うかも知れない。
相手は乃払膜に加えて俺を掌で転がす策士、万全でなければ対抗できない。
「頼む。真面目なお前が仕事中に寝るのに抵抗があるなら、その間に足を準備しておいてくれ」
まあよく考えれば此奴はまだまだ全然働いていない眠気もあるわけ無い。
なら働いて貰うが無駄がない。
「あっあしだと」
なぜか瞑夜は口ごもりつっかえつっかえ、何かミスを誤魔化そうとする頭の悪いバイトみたいな口調で答えてくる。
「出来れば小回りのきく軽の方がいい。シン世廻ほどの組織ならあるだろ。ないならレンタカーでもいいが」
寧ろその方が躊躇無く乗り捨てられていいかもしれないな。
「わっわかった準備してやろう」
意外と抵抗なく承諾してくれた。
「助かる」
「だがそう言う以上場所の目星は付いたと言うことか?」
「ああ、大体は絞り込めた。後は実地で調査するしかない」
最後は現場。
「いったいどんな手品を使ったんだ?」
瞑夜は俺の華麗なる頭脳労働を見てない。今度見せてやれば俺に対する態度も変わるかもな。
「説明してやってもいいが、お前何か勘違いしてなかったか?」
自分で思っている以上に頭が回らず、何か誤解を招く言い方をしてしまったかも知れない。一応誤解を招かないように、余計な修飾を省いて端的に言っていたつもりなんだが。何か招いた模様、今後の為にも誤解は解いてコミュケーションを円滑にしておきたい。
「私は何も勘違いしていない。午前中から寝ようとするお前の根性を叩き直してやろうと思っただけだ」
単なる体育会系か。
「まあそう言うな、俺はお前と違って頭脳派なんでね体力がないんだ」
「今だけは甘やかしてやろう」
瞑夜は主導権でも取り戻そうとしたか偉そうに胸を張って言う。
反らした胸に盛り上がる胸、意外とあるんだな。
「そりゃどうも」
一時間後、俺達は乃払膜のアジトを突き止めるため車で現地に向かうのであった。
風呂上がり備え付けの浴衣を着て寛ぐ俺を見た瞑夜の一声だった。
この連れ込み旅館古くさいが茶請けとお茶はなかなかいい。
はあ~生き返る。
そう言う意味では風呂も古風ではあるが汚くはない、掃除が行き届いたわびさびがある。
普通の旅館としてもやっていけるんじゃないか?
「風呂上がりに寛いでいるだけだよ。
一応お前にも勧めたけど自分で断っただろ。それで服と下着は」
「これだ、さっさと着替えろ」
瞑夜はぶっきらぼうに袋を投げ付けてくる。
「どれどれ」
中を見ればトランクスTシャツにユエクロのマネキンのコーディネイト一式を買ってきたような服が一通り。これなら目立たない、街の風景に解ける。
でもちょっと心許ないから革ジャンでも買って羽織って防御力を上げておきたい。
「ありがとうな。
それで追加でお願いがあるんだが、いいか」
「まだあるのか?」
両手を合わせて拝む俺を見下ろす瞑夜の目は冷たい。終業間際に残業を言い渡す上司を見るOLのようだ。
「一緒に寝ないか?」
「ああ」
俺が指一本立てるのと瞑夜から殺気が溢れるのが同時。
「一時間でいい、それくらいあれば十分スッキリ出来る」
「遺言は?」
瞑夜の指先が真っ直ぐ伸びた手刀が振り上げられる。あれが振り下ろされれば手刀でも鬼の力なら俺の首が飛ぶ。
本気で怒っている、この真面目女が。
「気が引けるから一応誘ったが、そんなに怒るなら俺一人で布団は独占させて貰う。
兎に角寝かせてくれ」
「はい?」
瞑夜の首が飼い主に意味不明なことを言われた子犬のように傾く。
「徹夜の頭では判断をミスる」
流石に瞑夜が来るまで寝て待っていられるほど剛胆ではない、風呂にゆっくり入ってセルフマッサージ。大分リフレッシュしたので体の疲れは誤魔化せるかも知れないが、頭はそうはいかない。
基本起きている限り考えることを辞められない俺は寝ない限り頭が休まらない。
これではいつもより判断が数秒遅れる上に合理解を間違うかも知れない。
相手は乃払膜に加えて俺を掌で転がす策士、万全でなければ対抗できない。
「頼む。真面目なお前が仕事中に寝るのに抵抗があるなら、その間に足を準備しておいてくれ」
まあよく考えれば此奴はまだまだ全然働いていない眠気もあるわけ無い。
なら働いて貰うが無駄がない。
「あっあしだと」
なぜか瞑夜は口ごもりつっかえつっかえ、何かミスを誤魔化そうとする頭の悪いバイトみたいな口調で答えてくる。
「出来れば小回りのきく軽の方がいい。シン世廻ほどの組織ならあるだろ。ないならレンタカーでもいいが」
寧ろその方が躊躇無く乗り捨てられていいかもしれないな。
「わっわかった準備してやろう」
意外と抵抗なく承諾してくれた。
「助かる」
「だがそう言う以上場所の目星は付いたと言うことか?」
「ああ、大体は絞り込めた。後は実地で調査するしかない」
最後は現場。
「いったいどんな手品を使ったんだ?」
瞑夜は俺の華麗なる頭脳労働を見てない。今度見せてやれば俺に対する態度も変わるかもな。
「説明してやってもいいが、お前何か勘違いしてなかったか?」
自分で思っている以上に頭が回らず、何か誤解を招く言い方をしてしまったかも知れない。一応誤解を招かないように、余計な修飾を省いて端的に言っていたつもりなんだが。何か招いた模様、今後の為にも誤解は解いてコミュケーションを円滑にしておきたい。
「私は何も勘違いしていない。午前中から寝ようとするお前の根性を叩き直してやろうと思っただけだ」
単なる体育会系か。
「まあそう言うな、俺はお前と違って頭脳派なんでね体力がないんだ」
「今だけは甘やかしてやろう」
瞑夜は主導権でも取り戻そうとしたか偉そうに胸を張って言う。
反らした胸に盛り上がる胸、意外とあるんだな。
「そりゃどうも」
一時間後、俺達は乃払膜のアジトを突き止めるため車で現地に向かうのであった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】呪いの館と名無しの霊たち(仮)
秋空花林
ホラー
夏休みに廃屋に肝試しに来た仲良し4人組は、怪しい洋館の中に閉じ込められた。
ここから出る方法は2つ。
ここで殺された住人に代わって、
ー復讐を果たすか。
ー殺された理由を突き止めるか。
はたして4人のとった行動はー。
ホラーという丼に、恋愛とコメディと鬱展開をよそおって、ちょっとの友情をふりかけました。
悩みましたが、いいタイトルが浮かばず無理矢理つけたので(仮)がついてます…(泣)
※惨虐なシーンにつけています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる