俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

文字の大きさ
119 / 328
嫉妬の群衆

第百十八話 傲慢の罪

しおりを挟む
 どっどういうこと?
 私は確かにコースから外れたはず、なのに未だコースの上にいる?
 そして後ろからは足音が迫ってくる。
 とっ兎に角走り出す。走りながら考え考えをまとめていく。
 このところ緊張が続き寝不足気味で判断力が落ちているところに嫌がらせを受けた。私は私が思っている以上に疲れているのかも知れない。
 もう何も考えることなくコースアウトして休もう。
 徐々に徐々にカーブに対して膨れていきアウトコースに寄って行く。もう半歩ずれた外側はコース外。
 私はそのまま体を倒すように傾けてコースから出た。
「ふう~」
 一息付いて見上げれば私はインコースを走っていた。
 どっどういうこと?
 こんな事があり得るのか、あり得るからコースから出られない。
 思考が現実に置いていかれぐにゃ~と歪んでいく視界、そんな私に足音が迫ってくる。
 そっそうだ後ろの人達に助けを求めよう。
 自分に嫌がらせをしてきた連中だということすら忘れ藁にも縋る思いで足を止め振り返る私は。
目が合った。
どろりと醜い感情を煮詰めて固めて濁る多数の目と合った。
 羨ましい、うらやましい。かがやくさいのうがうらやましい。かのうせいあふれるわかさがうらやましい。たいかいにでられるじつりょくがうらやましい。かっさいをあびるのがうらやましい。りくじょうのさいのうだけでなくそのびぼうもうらやましい。
 うらやましいうらやましいうらやましいうらやましい、妬ましい。
 神経に蟻を投げ込まれるようなおぞましさに水疱瘡の如く全身の鳥肌が立った。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ」
 私は悲鳴を上げて逃げ出していた。
 何々何々!!!??? アレは何なの?
 私は知らずあんなにも大勢の人達の嫉妬を背負い込んでいたの?
 私は走る。
 ただ走る。
 必死に走る。
 私はランナー走ることで落ち着き思考がクリアになってくる女。
 もしかして文香はアレに襲われたの?
 この世に化け物なんているわけが無い。
 ならあれは変質者の集団。
 文香はあの変質者の集団に捕らえられた。
 もしそうなら逃げている場合じゃ無い。
 犯人が直ぐ後ろにいるんだぞ。
 私は何のためにここに来た。
 私は雄叫びを上げてくるっと反転した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
 ウィンドブレイカーから二段警棒を引き抜き両手に持つ。
 それなのに変質者の集団に乱れなく今まで同様に淡々と私に迫ってくる。
「私を火蓮を舐めるなっ」
 気合いで嫉妬の視線を撥ね除け向かって行く。
 ざっざっざ。
 たかが五六人勢いで押せる。
 ざっざっざっざっざっざ。
 倒すそして文香の居場所を聞き出す。
 ざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざ。
 文香にもう一度会うんだ。
 ざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざ。
「へっはああい」
 決意を込めて睨む先、変質者の集団は後ろが霞んでいくほどの列を成す群団となって私に迫ってくる。
 そしてその一人一人が私に嫉妬の視線を向けてくる。何百もの視線は私一人に収斂されもはや物理的圧力をもって油の如くねばっこくねちっこく私の肌に絡みついてくる。
「!」
 ぬるっとする肌触りに気持ち悪くなり、息苦しくなる。
 絡みつく油の視線に足が上げられなくなっていき前に進めなくなる。
 纏わりのし掛かってくる油の視線に体が押し潰されていき足が蹌踉めき腰を上げてられなくなり膝を付く。
 負ける?
 自分を信じて必死に努力してきた私は気付かずに置き去りにしてきた何百人という人達の嫉妬に負ける。
 自分が踏みにじったことすら知らず無邪気に栄光を追い求め享受した傲慢。
「これは私の罪なの?」
「そんなわけあるか」
 力強い男の人の声と共に銃声が響き、私に纏わり付く油の如き嫉妬の視線を銃弾が弾き飛ばす。
 体が軽くなったっと思ったら私は後ろから力強い腕に抱え上げられた。
 力強い手と力強い言葉に私は再び立ち上がる。
 胸が高鳴りどんな王子様と振り返れば、そこにはコートの男がいた。
 胸の高鳴りが普通に戻る。
「走るぞ」
「でも力が、ひゃんっ」
 私は弱気を吐いた瞬間尻を叩かれ、背筋が伸びた。
「何すんのよっ」
「まだまだ元気が有るじゃ無いか。
 走れるな?」
「うっうん」
「よし。
 弱気ならいつでも吐いて良いぞ、いつでも尻は叩いてやる」
「いーーーーーーーーーーーーだっ」
 こうして私は見知らぬ男と共に走り出していた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...