犬であり鉄であろうとも

第二十話 男で大人

　その後顔を引き締め状況を二人に説明した。
「今はまだ無事だが、それがいつまで続くか分からない状況だ」
「それでどうするの？　応援をぎりぎりまで待つ」
「呼びはするが、あくまで彼奴らを逃がさない為の処置だ。救出には間に合わないだろう」
　いや、あの様子なら命は助けられるかもしれない。だが、無事な叢雲を見て欲が沸いてきてしまった。あの少女には屈託無く笑っていて欲しい。
「それじゃ」
「ああ、俺達だけで救出する」
「でもあんた自分で応援が来るまで手を出すなって言ってなかった」
　スマフォで遊んでいた割には鈴鳴は結構聞いていたようだ。
「部下にはな。俺には誰も命令してない」
「格好付けるのはいいけど、４人じゃ返り討ちね」
　魔人が一人に鬼が十数体、叢雲がいても苦戦する戦力だ。
「何倒す必要は無いんだ。やりようはある」
　そう言って俺は二人に作戦を説明した。



「それって私の能力に期待してない？」
「出来ませんか？」
「期待しないって言ってなかった」
「ええ、だから鈴鳴の正義感に期待してる」
　しれっと言い放ってやった。
　この面の皮の厚さ、先程泣いていた男と同一人物とは思えないという目で鈴鳴は俺を見てくるが、痛くも無い。
「く～しょうが無い。それくらいやって上げますよ。でもあんたはどうするのよ」
　俺の立てた作戦では、うまくいっても俺が窮地に陥ることは確実。一人を助けて一人が死ぬ、命の価値が同じというなら意味が無い。
「俺は男で大人なんだ、自分のことは自分で何とかするさ」
　何でも無いように当然の如く言い放った。
「あんた格好いいわね。何で独身なのかしら」
「女に見る目が無いのさ。よし作戦開始だ」
　俺達は叢雲を救出する為それぞれ散っていった。