流れる川

連鎖

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ウリュウ

開門②

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 いつものように場所を覚える気もないし、
 先輩に聞けば答えてくれるとは思うが、そんな気もしないので、
 フードを目深にかぶって周りが静かになると、
 久しぶりの大きな街並みを見ながら、
 ブラブラと身体を揺らして暇なオスを探していた。

「あっ。。ギルドって、何処ですか?ブルん。。教えてぇえ。うふふ。」
「あの、あの。。目の前にある。。あれです。あの。。アレです。」

(目の前に、うわ。谷間。谷間。女。。そうか、女だったんだな。
 でも、スゲえな、でけえ。。うわ。いい匂い。匂いもかよォ。)

 エリカは、彼が前を膨らませて立ち止まっていたのも気になっていたし、
 そろそろ建物の影に誰かを連れ込もうと思っているらしく、
 ごく普通の格好をした男に近づいてギルドの場所を聞いていた。

「あのぉお、どぎつい建物ですか、アハハハ。。アレですかぁ。アハハ。」

 彼が指さした建物は大きく、最近見ていた自然を活かしたものではなく、
 街を囲む他の建物と同じだった。

 ただ、誰かの趣味なのか、その建物の壁は派手な黄色で目立ち、
 理由はわからないが、どぎついネオンサインが、
 まだ明るい時間にもかかわらずギラギラと輝いていた。

(ハイハイ。もっと見てぇ。出来れば触ってぇえ。もっと近づいてぇ。)

「ミャミャミャミャァアア。」

「ちがうわよぉ。ぜえったあったい。違うもんねぇえ。知ってるもん。」

「へっ。」

「アハハ。。いやぁ。ありがとうございます。アレですかぁあ。
 あの建物ですよねぇえ。うふふ。アハハ。アレですよねぇえ。」

「ミャミャミャ。」

「はあ。そう言いますよね。アソコですよ。アソコの建物です。」
「アソコ。。そうなんだぁあ。アソコでしょぉ。」

(あっ。そうだ。仕事。いやあぁ。残念だったなぁ。アハハ。残念ダァ。)

「それじゃぁ。。。ごめんなさい。ダダダ。」

 彼に突然話しかけてきたのが、
 若くスタイルのいい女であったことは、嬉しい誤算だった。

 しかし、彼女は明らかにギルドの関係者で、
 動物と普通に話すという怪しげな雰囲気を漂わせていたのと、
 意味はわからないが、突然流れてきた仕事という言葉に慌てて、
 彼は、エリカが顔以外に視線を送った事に気づくと、
 スグに目の前から立ち去っていた。

「ワタシのわぁああ。。スカッ。。えっ。。」「(ニヤニヤ)」

 彼の言葉を聞いて、いつものようにエリカも反応していたが、
 すでに男がいなくなっていたので、手が虚しく空振りしていた。

「サアァ。シゴトぉお。仕事ですよぉおお。さあ、つきましたぁあ。
 しごっとぉお。仕事だしぃいい。仕事は楽しいなぁああ。アハハハ。」

(ハァアアア。どうしてかなぁ。やっぱりコート?コートでしょぉ。
 でも脱げないしぃ。早く着替えないとぉ。何か別のものにぃ。何かぁ。)

 エリカの前には、
 建物の影に連れ込んで楽しもうとしていた彼は既にいないし、
 通りには人がいるが、
 空振りしてしまった手をどうすることもできなかったので、
 鼓笛隊のように勢いよく腕を左右に振って、
 ここに来て喜んでいると、必死に誤魔化していた。

 。

 どぎつい黄色い建物のギルドに入ると、いつもと同じ色や形、
 いつもと同じ匂いがして、違うのは周りにいる人の姿だけだった。

 その中で、一番暇そうにしていた受付嬢の前に行き、
 銀行の窓口のように見えるカウンターに向かって話しかけていた。

「すみません。お願いします。」「何のご用件でしょうか?」

「あっ。あァァァ、カチン。。カードは、これぇえ。えっとぉお。報告。
 ほうこくよぉお。エッ。えェエ。ごめんなさい。報告。アレ。えっ。」

(キョロキョロ。えっ。何よ。エッエェ。すごいぃい。すごいのぉ。)

 誰も並んでいなかったのは、優秀な受付嬢だからなのだろうか、
 着ているパンツスーツの襟や袖には一つもシワがなく綺麗で、
 その彼女がエリカを見る視線や仕草には、
 どこか怒っているような雰囲気が漂っていた。

(あれなに?露出狂?変態?イヤァアア。あれで、外を歩いちゃうのぉお。
 か、からだを出して。。恥ずかしく無いのぉおお。イヤあァん。
 あら、あの子。あの子のは、いやァ。す。すごいぃわぁあ。
 見えちゃっているし、そこまで出していいのォオ?そこを出すってぇ。)

「あんなので。キャーキャー。うははは。あっああぁ。あれえって。
 うわあぁ、キャーキャー。あれ、あれよ。あれよぉお。アレェエエ。」

 いつの間にか、エリカの心の声が漏れ出しているのだが、
 その嬉しそうな声を聞く度に、
 真面目に仕事をしている受付嬢の顔が一段と険しくなり、
 今ではモニターを睨みつけていた。

「ゴホンゴホン。あらあらァ。ギルドの風紀が乱れているわァ。
 あの格好は流石に先輩として注意しないと、いけなあいわねぇ。うふふ。
 ごほん。いけないから。そうよ。先輩としてダメと言わないとねぇ。
 アハっ。アハハ。そういう服は、風紀を。イヤァアン。ウフフ。」

(うふふ。あれで、いいのよねぇ。あれ。。あんなの着てもぉお。
 うふふ。みんな待ってて。うふふ。アハハ。ワたシも着てあげるからぁ。
 あれかァ。最高。本当に最高だわぁあ。アハハは。アレかぁ。)

 この嬉しそうな顔で周りを見ている女は先輩なのだが、
 同性として許せない雰囲気を撒き散らしていた。

 もちろん、受付嬢は、なぜかあと一歩で出そうな言葉が、
 心の奥から出てこない気持ち悪さを感じながら、
 早く仕事が終わることを願っていた。

 。

「エリカさん。あの!エリカさん?確認が終わりました。
 どーぞ、二階の通信室へ。報告は直接自分でして下さい。」

「げへへへ。グフフグフ。イヤァアン。モォオオ。すごいぃい。」

(あれが、あーなって、がばっと相手に向かって足を上げるよねぇえ。
 あそこに視線を集めるでしょぉ。そうよねぇ。みっ。見ちゃうよねぇえ。
 あと、あれだけむき出しだとぉおお。胸がブルブル揺れるからぁあ。
 そっちにも視線が来るでしょぉお。でさぁあ。上にも。下にだってぇ。
 最高よ。これ、これよぉ。この格好で。これなら仕方が無いワァア。)

「エリカさん。二階に向かって下さい。」「ニヤニヤ、ゲヘヘ。」

 受付嬢が怒って話しているのに、
 エリカは変な笑顔をして聞こうともせず、
 次々とギルドに入ってくる同僚の姿を見て喜んでいた。

「エリカ、エリカ。おい!エリカ。はやく向かえよ!!さっさといけえぇ。
 行けよ。いけよ。上だよ。上に向かえって!淫乱変態のエリカ。
 上だって、言ってるよなぁ。さっさと向かえよ。上だ。うえぇえ。」

(女の戦士を見て喜ぶって変態か?どっちでもいい、やりまんなのかぁあ。
 ハァ。。こんな人が高ランクとは、この人が先輩なのかァァ。)

 モニターに出ているのは、S級魔法使いのエリカ。

 世界最強のアンタッチャブルで、その見た目と人格のお陰で、
 この子が生まれる前から、
 ギルドの守護者及び人気ナンバーワンの人だった。

 しかし、常時発動している魔法のお陰で、彼女が感じているのは、
 同性にまで興味を持っている淫乱の高ランク冒険者で、
 裸のような真っ赤な服を着ている変態露出狂にしか感じていなかった。

「グフフフ。あっ。今度のは、ちがうぅう。あっ。エッ。女だけぇえ。」

(もぉおお。ビシッとぉお。男性用のわぁああ。ハアハア。ビチビチ。
 ぐふふ。ビチっとぉおお。アハハハ。激しくぅうう。ビチビチぃい。)

 彼女に男性用と言われても、ほとんどの人はズボンの表面に、
 肉棒の形が浮き出るだけで恥ずかしいし、我慢できればいいのだが、
 同じ戦士の格好をした女性と一緒に仕事をしているときに、
 関係がないのに膨らんでいる姿を見せたくはないので、
 その格好をしている人はいなかった。

 もちろん、エリカとしては、とても不満だったが、
 男性用など開発する人も、着たいと思える人もいなかった。

 しかし、エリカは是非男性にも着てもらいたいし、
 間違ったふりをして布の上から触ったり、
 身体のバランスを崩した時に掴んでしまったり、
 膨らんでいる姿を見られて恥ずかしがっている彼を物陰に押し倒し、

(キミ。。コレって。。ウフフ。今は仕事中って知っているの?
 どうして、熱いの?まさか、わたしを。。。どうしたいのカナァア?
 サワサワ。スルスル。へぇえ。また。大きくなったぁあ。スルスル。
 コレって、いいの?今って、し。ご。。と。。チュウなのよ。ウフフ。
 そ。。れ。とも?。。クチュ。コレから。。。ここで?私と?フフフ。)

 布の内側に手を差し込んでイケナイ指導を、
 先輩として優しく、丁寧に、隅々まで行いたかった。

「ドン。。ドンドドン。。エリカァアア。うえだって!
 サッサトイケヨ!ドンドン。聞こえませんかぁ。ドンドン。」

 フードを深く被っているので、
 エリカの顔は見えていないが、興味を持った相手を舐め回すように見て、
 嬉しそうに笑っている事は気づいていた。

 そんな姿を見ているだけで、
 受付嬢は悪寒と吐き気が入り混じったような気持ちになり、
 相手が高ランクの冒険者であっても、我慢の限界に達したらしく、
 仕事のことなど忘れて、机を拳で殴りつけながら怒鳴りつけていた。

「にゃにゃにゃぁ、にゃーにゃにゃーーー。」「あっ。もうちょっと。」
「にゃにゃぁああ?「そこ。そこぉおお。」

 背の高いエリカが受付の前で立っているだけで目立っていたし、
 相手をしているいつも冷静沈着な受付嬢が怒鳴っている姿も珍しかった。

 その姿を周りから遠目に見ているギルド員もいるのだが、
 ただの目立ちたがりの人、他にすることが無い暇な人、
 お金や権力が無い人、正義という言い訳を堂々と実行したい人、
 そういった普通の人の集まりなので、

「(ああ、アレな。)」「(やっぱり、ああなるって。)」
「(アッチよ。)」「(今度は。)」「(おれが全部もらうぜ。)」
「(いつもだと、アレな。)」「(俺は、こっちだ。)」

 暇な毎日から抜け出せそうなトラブルを止めるような人はいなく、
 二人がどうなるのか、楽しそうに賭けまで始めていた。

「シャァあ。ガブっ。。」「イッタアあい。何するのよ。先輩ぃいい。」
「ミャッ。」「あ、ゴメンナサイ。。すみません。アハハハ。」

 普通に考えれば、黒いコートを着た冒険者の未来は、
 相手が怒っていることに気づいて謝るか、
 受付嬢を殴ろうとして拳を振りかざした際に障壁が展開して気絶するか、
 騒ぎに気付いた警備員が奥から出てきて連れて行かれるはずだった。

 しかし、どれかに賭けていた人には申し訳なかったが、
 先輩がエリカの手に噛みつき、周りを見ろと説明しているらしく、
 何も起こらずに終わっていた。

「エリカさん、あまり女性をジロジロ見るのは。。。わかりますよね?」
「(ウゥう。。)。。。。」「ミャミャ。」「はい。。。」

(私は悪くないもん。ぜぇえええっタイに、あの子達が悪いんですよぉ。)

 目につくような目立つ格好で歩き回っているのに、

「見られて嫌なら、そんな服を着るなァアア。」

 ジロジロ舐めるように見られるとわかって着ているのだから、

「見てもらって、ありがとうございますって、言いなさいヨォオ。」

 とまで思った不貞腐れた顔で謝っていた。

「何が好きなのかはギルドも関与しませんが、貴方は高ランクですよ?」
「ウゥう。」

「女性をジロジロと見る行為は、先輩として褒められますか?」
「うぅう。」

「高ランクの先輩冒険者として、褒められるような態度や行動ですか?」

「デモぉお。。彼女たちのぉおお。彼女たちがァああ。」
「ミャミュアァア。」「ウゥう。」

「あと、出来ましたら、通信室は二階の突き当りです。知っていますか?
 後ろも方も並んでいますので、スグに向かって頂けますか?」

 受付嬢も、子供のような態度で謝っている姿を見て冷静になったらしく、
 全てを言い終わった頃には、
 いつものように冷静沈着な表情に戻って話していた。


 開門②
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