流れる川

トヨトミ②

芽吹き④

そろそろ時間かな。

暖かそうな陽だまりの時間が終わり、人々に悦びの時間が始まっていた。

「お姉ちゃん。こっち、どう？一緒しない。」
「やらせてくんない。」「ねえ、いくら？どこの店？」
嬉しそうな男達から、女と仲良くなろうと話しかけて来た。

「カツカツ。もう。カツカツ。カツカツ。」
女は珍しく男達を見ないように目線を真っ直ぐにして、早足で歩いていた。

どうしてよおぉぉ。なんでなのよ。
もうイヤ。なんでなの。どうしてこういう時に。

「カツカツ。カツカツ。カッカツカツ。」
男達を振り切るように、一段と早く歩いていた。

。。

「ああ、ここね。懐かしい。。うふふ。」
暖かそうな宿屋の前に、女が一人で暖かそうな光を見つめていた。

「いらっしゃい。一人かい？客も来るのかい？」
ふくよかな優しい笑みで、店員が話しかけて来た。

「一人です。すみません。
今夜の宿もお願いしたいのですが、空いていますか？」
店員さんの優しい笑みが嬉しくて、笑って答えていた。

「うふふ。すごく。。あははは。
部屋は有るんだが、大丈夫かい？」
相手が女性なのに、顔を真っ赤にして答えていた。
「ああ、すまない。部屋はある。離れがいいんだがね。。
上の個室になるが、わかるだろ？
あんたと同業も使うんだから、一人で大丈夫かい？」
一度寂しそうな顔をしたが、すぐに心配するように笑いかけてきた。

「ええ、せっかくだから泊まらせてください。
大部屋でもいいですよ。寝ちゃったら起きない方なんで、うふふふ。」
いやらしい笑顔で、店員を見つめ返していた。
「あんたがいいなら、地下の大部屋を用意してあげるよ。
あんまりなあ。頼むから、大人しく。大人しく頼むよ。」
複雑そうな顔で、女を見つめていた。

「ああ、そうだ。食事はどうするんだい？」
店員は話し忘れていた事を思い出して聞いていた。
「是非、お願いします。食べ損なったんですよ。あははは。」
そう言えば、食べていなかったと思い出していた。

そう言えば、あれも食べてないし。寝ちゃっていたからなあ。
あーあ、あ、ブルブル。。あははは。まだ。ヌルヌルしていて気持ちいい。
ショーツもいいかな、この感じが続くなら。うふふ。
忘れていた感触を思い出して、身体が疼き始めた。

「そうかい、じゃあ先にだよね。あの辺に座って待ってておくれ。」
店員が男の沢山座っている方に向かって手を向けた。
「あははは、ありがとうございます。」
ニヤニヤと嬉しそうに男達を見つめていた。

店員が離れていくと、女は男たちに向かって歩き出した。
「コツコツ。。。コツコツ。。コツコツ。」
ゆっくり、ゆっくりと、男達の視線を集めるように歩いていた。

「おいおい」「お姉ちゃん」「仕事かい」「お願い出来るかい」
「ここにおいでよ」「あははは、ここだよここ。」
既に酔っていた男達が、嬉しそうに女を誘っていた。

男たちの顔をゆっくり見ながら、
「ぜひ。後でね。たっぷりね。うふふふ。」
すごく嬉しそうな顔で、男たちに笑い返していた。

「ああ、後で」「やったあ」「ほんとか」
「ただのサービスだろ？」「ほんとか？」「嘘でしょ」
ガヤガヤと男達から声が出てきた。

ザワついた男達の近くに、
一人だけポツンと俯いた男の子が、座って食事をしていた。

「ここ。ここって良いですか？」
女は、じっと相手の顔を見つめて話しかけていた。
「はい。え？。ここですか？。。キョロキョロ。
え、どーぞ。。あっちへ。。ここじゃなくて。。」
突然の声にびっくりして頭を上げて周りを見たら、
周りの男たちの視線が自分に集まっている事が解った。

その視線が女性の事なのを理解して、断ろうと声を出した。

「じゃあ、座るわね。ギイイ。ふうう。ふふ。」
男を無視して、嬉しそうな顔で女が目の前に座っていた。

女が無視して座ってきたので、
「カチャ。ウグ。ゴクゴク。ガチャガチャ。」
女の視線に我慢できなくなり、一段と必死に食べて終わろうとしていた。

。

「ああ、ここかい？コトン。」
店員が暖かそうなスープとパンを目の前に置いて来た。
「じゃあ、1週間ぐらいお願いしますね。ジャラジャラ。」
1週間と言うよりも、1年位泊まってもお釣りが出るお金を置いていた。
「じゃあ、朝と夜はご飯が付くから、欲しいならここに来ておくれ。
本当に、大部屋でいいんだよね。」
念を押すように聞いて来た。
「ええ、大部屋が好きなんですよ。自由で。。いいですよね。」
女は普通の事のように、周りに聞こえるように、落ち着いて答えていた。
「ああ、分かったよ。」
店員は観念したように答えていた。

この金は。。分かってるよ。そういう事だね。
ああ、やっとか。
店員は、悲しそうに笑いかけて去っていった。

女の答えを聞いていた男達に、
「うおおおうおおおおぉ」「おれも」「おいおい本当か」
歓声のような、どよめきが起こっていた。

「じゃあ。ご。。。。」
目の前の男の子が立ち去ろうとしたので、女は男の子を見つめていた。
「ダメよ。レディファースト。うふふ。」
「いや、店長が。。」
「大丈夫よ。一緒に行ってあげるから。」
「でも。。」
「ダメよ座って。カチャカチャ。フウフウ。スウ。
美味しいわね。暖かくて。」
女は、ゆっくりと食事を楽しんでいた。

。

「ご馳走様。美味しかったわ。
続きは、後でね。うふふふふ。」
嬉しそうな顔で、男達にイヤらしい視線を送って話していた。

「是非」「ああ、後でね」「待ってるよ」「やったあ」
男達はギラついた目線で、女を犯すように見ていた。

「じゃあ、行きましょ。」
固まったように座っていた男の手を取って、立ち上がらせた。
「あ、はい。お願いします。」
女が男の手を添えると、さっきまでの感じが嘘のように立ち上がった。

。

店の外に出ると一段と寒くなっていたが、人々の活気は変わってなかった。
「どこに行くのかな。寒いわねえ。うふふふふ。」
男の子を見下ろす感じで、手を引いたまま話しかけてきた。
「こっちでいいです。そう、こっちです。」
まるでぐずった子が、母親に手を引かれているように歩いていた。

恥ずかしから、やめて欲しいんだけど。。

周りの、特に男から注がれた視線に戸惑って、
俯いたまま女に付いていった。

。

とうとう、自分の仕事先が見えたので、
「あそこ、あそこです。」
男の空いていた手を、自分の仕事先に向けて説明した。
「私のは、ココよ。良いのよ。ねえ、ちょうだい。」
誘うような声で、男の耳元に呟いていた。

女は男の手をコートの合わせから差し込ませ、
腕を抱きしめるように脚や腕を使って、男の指先を自分の欲望に導いた。

「。。。」
暖かい。。不思議と男の頭には暖かいことしか浮かばなかった。

それでも、男の子の指は
ゴワゴワした少しだけ湿った布に抵抗を感じて、声を詰まらせていた。

「あん、良いのよ。邪魔でしょ。引きちぎっても。めくってもね。」
女は、悪魔のように耳元で囁いていた。
「。。。。」
指だけが自分の意思が有るように、邪魔な布を叩いていた。

二人が愉しそうに店に近づいて行くと、店から男が慌てて出てきた。
「おい、お前。なんで来ないんだ。分かってるんだろうな。」
少しだけ不機嫌な顔で、男が話しかけて来た。

不機嫌な男に向かって、
「ああ、ごめんなさいね。
彼と話して、良いお風呂が有るって聞いたのよ。
場所も分からなかったから、少しだけ待って貰って一緒に来たのよ。
悪かった？」
目の前の男を挑発するように、一段と男の腕に絡みついた。
「まあ。そうかい、仕事だったんだな。じゃあ仕方ない。。」
何故か男は、女の視線にたじろいでしまった。

女の視線から逃れるように男の子に視線を向けて、
「じゃあ、出来るんだな。この女は風呂に入れるんだよな。」
何かを脅すように男の子に聞いていた。
「はい。。」
すごく消えそうな声で、男に答えていた。

消えそうな声と違って、指先は激しく女を貪っていた。
「あああ。ああん。あ゛。激しい。あ゛あ゛」
女は突然の刺激に喜んで声を出した。

「おいおい、ここからかよ。止めてくれ。」
女の声に戸惑って、男の子に止めるように注意した。

男の子の指先がピタッと止まってしまい、
「もう、止めてくれ？
別にいいでしょ。ねえ。うふふ。」
イヤらしい顔で、男の子を見つめて誘っていた。


芽吹き④