クロスオーバー

連鎖

文字の大きさ
上 下
46 / 51
みさき(運命)

紳士服店

しおりを挟む
 社用車の中で気持ちを落ち着かせた美咲だったが、
 下着姿のままでいる羞恥心は拭えないままだった。

 佐々木が「次の場所へ向かうぞ」と静かに告げて車を発進させると、
 すぐに「脚を広げろ」と彼の手が太ももにのび、
 下着姿の美咲が「はい」と言って助手席で脚を広げる。

 すぐに佐々木の手が美咲の体を触り始め、反論出来ない彼女は、
「どうして?」と心の中で慌てるが、
 彼の指が太ももを掴む度に、剥き出しのアソコが喜んで涙を流し、
「うぅ」と必死に声を我慢するが、
 彼の手が乳房を揉む度に、飛び出したチクビが痛いほどに膨らんでいた。

 もちろん、佐々木が敏感な場所を直接刺激することは無く、
 美咲も異性に見られながら、そこを触る事など出来なくて、
 声を出さないように下唇をかみ、快楽に流されないように目をつぶり、
 疼く体を押さえつけていた。

 必死に我慢していた美咲の気持ちでは気が遠くなる程に長い間、
 楽しんでいる佐々木にはあっという間に、紳士服店の前で車が止まる。

 見た感じ小さな個人店らしいが、建物は品が良く綺麗に手入れされ、
 下着しか着ていない美咲は驚いて佐々木を見たが、
 彼は「さ、行くぞ」とだけ言って車を降りた。

 美咲は、社有車の中に一人で待っている事など出来ないと、
 「秘書なら普通…佐々木さんの為に…」と、誤魔化して彼の後を追うが、
 冷たい風が肌に当たってしまうと、恥ずかしさで身を縮こませていた。

 だが、堂々と店に入って行く彼は待ってくれない、
 そんな彼を見て「秘書は社長の…」と誤魔化して店内へと入っていく。

 紳士服店の中はひっそりとしており、
 整然と並ぶスーツの数々が美咲の目に映った。

 その落ち着いた雰囲気の中で、彼女は自分が場違いだと感じたが、
 佐々木は、そんな事に無関心で、店員や客がこちらを見ても、
 まるで何事もないかのように、売り場を通り抜けていった。

 そんな彼が、黒い細身のパンツスーツを見て「これなんかどうだ?」
 と、無造作に手を伸ばし、彼女に向けてスーツを差し出す。

 その瞬間、それを見た美咲は一瞬戸惑ったが、
 佐々木の冷静な表情に押されてスーツを受け取る。

 受け取ったのは、シンプルな黒のタイトなデザインで、
 明らかに男性用のものであったし、女が着るべきものではなかったが、
「とてもいいモノです。社長」と美咲が大きな声で答えると、
 とても満足そうに彼が笑い返し、
「さあ、コレを持ってついてこい。」と佐々木が歩き出し、
「ハイ。社長」と美咲は頬を赤らめながら、その背中について行った。

 歩き出した二人に、侮蔑と嘲笑の視線が一気に集まり、
 慌てる美咲は「佐々木さんが言うことが全て…彼が言う事が…」
 と、恥ずかしい気持ちを捻じ曲げるように心で呟き、

「この下着は彼が…この服だって彼が…」

 と、彼が望めば何でもするとまで思い込んでいた。

 堂々と二人が店内を歩いていると、
 佐々木の知り合いらしい店員が、彼に何かを言いたげに近づいてきたが、
 すぐに彼が「コイツのシャツを選べ」と言い、
 店から出て行って貰いたかった店員も「佐々木様?」と返す。

 戸惑っている店員に続けて佐々木が言ったのは、

「この女が着る白シャツ。黒のネクタイ。あと靴下に靴だ!」
「男性用の物しか有りませんが?」「ああ、それでいい」

 さっきまで戸惑っていた店員も、
「わかりました」と冷静な顔で話を合わせていた。

「キミは…」「藤崎美咲です」
「美咲さんは、こちらで採寸をしますので動かないでください」

 と、店員がメジャーを取り出すと、
 自分の姿を思い出した美咲は「ごめんなさい…」と顔を真赤にして俯き、
 その顔を見た店員は「動かないでください」と最初は同情していたが、
 彼女に近づき見てしまうと、「動くな!」と冷たい声で命令した。

 店員が、首周り、胸囲、胴囲、裄丈、肩幅、着丈を測るたびに、
 メジャーが生肌に触れて「違うっ…ごめんなさい…」と美咲が謝り、
 既に矜持も忘れた男は「変態…感じても動くな…止まれ」と命令し、
 見ていた佐々木は「店だぞ?感じるのか?」と嬉しそうに笑っていた。

 全てが測り終わると「このサイズですね」と店員がメモ紙を見せて、
 美咲が「ありがとうございます」と確認する。

 その後はとても不思議な光景だが、下着姿の美咲を見ても、
 表情一つ変えなくなった店員が、棚から商品を持ってきて彼女に渡す。

 美咲は、その渡された物を手に試着室へと向かう途中でも、
 背中で佐々木の視線を感じるだけで、心臓まで高鳴って全身が熱くなり、
 抑えきれない衝動と緊張が胸を締め付けてくる。

 やっと着いた試着室のカーテンは厚く、高級な生地で出来ていて、
 ユックリとそれを引いて中に入ると、
 ひとりになった空間には微かな緊張感が漂い、
 試着室の壁側にある姿見の前に立つと、
 深呼吸をして手に持ったスーツをじっと見つめる。

 今まで見たこともないほど、シンプルで落ち着いたデザインだが、
 その一方で上質さがひと目でわかる。

 鏡で見続けていると「社長の趣味って…」と、呆れた思いも有るが、
 今、鏡に映る自分の下着も彼の趣味で、手に持ったこのスーツも同じ。

 コレを着た自分がどう映るのだろうか、そんなことを思うと、
 少しだけ嬉しく思えてきて、自信までが湧いてくる。

 早く着替えて彼に見せたいと思い始めた美咲は、
 白のレース下着の上に白いシャツを羽織り、首に黒のネクタイを巻くと、

「こういう格好が、佐々木さんは好き……なの?」

 彼の趣味に近づいていく自分を見て、自然と笑みが浮かんだ。

 残ったスリムなパンツを履くと、明らかに男装した女性に見えるが、
 パンツの上からも女であることがわかる丸いヒップラインと、
 体にぴったり合ったシャツは、
 女性特有の膨らみが、ボタンを嫌がるように盛り上がっている。

 その上からジャケットを着たが、パンツと同じような形なので、
 少しだらしないと思ったが、前ボタンを止めずに羽織っていた。

 キャバ嬢の彼女とは少し違う、堂々とした表情の美咲が映り、
 自分でも驚くほど凛とした姿に、自然と胸を張る気持ちが湧き上がり、
 美咲は「よし…」と小さくつぶやくと、試着室のカーテンを開けた。

 床に座ってくるぶし程度の短いソックスを履き、シンプルな靴を履くと、
 踵が低く、いつもよりも低くて違和感があったが、
 視線を向けた先に、佐々木が腕を組みながら待っていた。

 佐々木が見ていると気づき、慌てて美咲が近づくと、
 彼は少し驚いたような表情を浮かべる。

 美咲は、彼の慌てた反応が嬉しくて
「佐々木さん、似合いますか?」と笑みを浮かべて問いかけ、
 彼女の笑顔に圧倒されたのか、
「……あっ……ああ……」と、佐々木は少し戸惑い気味に返事をした。

 その様子が可愛らしく、美咲はさらに嬉しそうに
「そんなに見つめても、何も出てきませんよ。秘書の美咲です」
 と冗談めかして微笑む。

 気を取り直した佐々木は、
「……わかっている。悪くないな。いや、むしろ……」と戸惑っていた。

 その言葉に、美咲の胸の高鳴りはますます止まらない。

「社長?次の仕事ですよね?」と、美咲は自分から話を進め、
「ああ、最後の仕事に行くぞ」と佐々木が応えるが、
 次で最後だと思うと、美咲は少し名残惜しく感じていた。

 こうやって二人で時間を過ごすうちに、彼の喜ぶことが全てと、
 依存心で心が満たされていく心地よさと、
 いつの間にか、それ以外はいらないという気持ちが心を満たしていた。


 紳士服店
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

処理中です...