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みさき(運命)

秘書③

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 彼の手が生脚に這い回ってくるのにも慣れ始め、落ち着きを取り戻すと、
「これが仕事だ、割り切らなきゃ」と自分に言い聞かせる。

 もちろん、どこに連れて行かれるのか想像もできず、不安が膨らむし、
 佐々木の視線が自分の反応を楽しんでいることに気付くと、
 彼への嫌悪感が一層強まり、車内の空気は重くのしかかる。

「どうした? 緊張しているのか?」

 佐々木が薄笑いを浮かべて心配そうに聞いてきたが、
 その言葉には、明らかに悪意や嘲笑が潜んでいる事に気づいた。

 そう言われている美咲は、口を開いて反論することすらできずに、
 ただ視線を窓の外に向けて、
 快楽に流されないように「友達の為に…」と我慢する事しか出来ない。

 新しい反応をしなくなった彼女に飽きたのか、
 佐々木がマッサージというより、愛撫をするように触ってきたので、
 彼女は慌ててしまい、身をよじって逃げようとしたが、
 彼の興奮したような顔を見て、逆にそれが彼を煽るだけだと気づき、
 すぐに元の位置に戻した。

「お前、意外と反応がいいな。キャバ嬢でもやったらどうだ?」

 佐々木は笑いをこらえきれない冗談のように、その名前を口にした。

 その一言が、美咲の心に突き刺さり、
 彼女は嫌悪感と屈辱感で胸を満たされ、さらに視線を外へ逸らした。

「秘書の仕事なのだから、我慢しなきゃ…友達の為に…友達…」

 そうやって自分を誤魔化し続けていたが、
 これ以上、この男に抵抗しても無駄だと思い始めた。

 心のどこかでは、強くなければならないと自分に言い聞かせるが、
 同時にこの状況から逃れられない現実が、彼女を重く締め付けていた。

「美咲も覚えたな。
 秘書なんだから、下着も重要だぞ」と、佐々木が嬉しそうに微笑んだ。

 その表情には、どこかいやらしさが漂って、
 美咲は胸がざわつくのを感じながらも、何とか冷静さを保とうとした。

「今、私は、ノーパンノーブラという変態の格好をしています。
 佐々木さんの秘書として最低な恰好をして、申し訳ございません。」
 と、美咲は佐々木が耳打ちしてきた言葉を繰り返す。

 美咲は、どこか恥ずかしさを覚えながらも、
 佐々木の意図を理解して、言葉を続けた。

「秘書には、パンチラした時に喜ばれる下着を着ける義務が有ります。」

 佐々木はその言葉を聞いて、満足そうに笑った。

「パンチラ? それは秘書としてはどうなんだ?」「絶対に、必要です」

 真剣な目で見つめ返してくる美咲に満足したらしく、
 彼は鼻を鳴らして嬉しそうに言葉を続けた。

「経費で買ってやるから、ちゃんとしたのを選べ。」
「ありがとうございます。皆様が喜ぶものを選びます。」

 どうして、こういう話を口にしているのか、
 何故、何も抵抗せずに自分は口に出しているのか、
 頭の中で整理がつかず、どう反応すればいいのか分からなかった。

「そうだな。秘書なんだから、
 会社の顔として、恥ずかしくない下着を履く義務があるな。」
「はい、社長に選んで頂ければ最高です。」

 と、元気に返事する美咲に佐々木はいやらしい笑顔を浮かべる。

「俺が選んだだけでは、皆様に見せた時に、どう見えるかわからないな」
「そうですね。社長。どうすれば、よろしいですか?」
「うぅうむ。むしろ、俺の目の前で着替えるところを見せてくれたら、
 もっといい下着を、選んでやれるかもしれないぞ」

 美咲は、その発言に思わず顔が引きつり、
 心の中では「絶対にそんなことはしない」と言いたかったが、

「もちろん、社長に着替えているところまでご覧いただき、
 不備な点をご指摘していただけるのでしたら、
 これ以上の光栄はございません。」

 美咲は抵抗する気力を失い、どうしたらいいのか分からなかったし、
 彼の視線が自分に注がれる中、選択肢がなくなりつつあるのを実感した。

「そうだなぁ。
 下着を選ぶんだから、スリーサイズとカップサイズを教えてくれ。
 これを知らないと、俺も選びようがないよな?」

 最初は戸惑い、「あっ…サイズ」と、言葉を濁したが、
 佐々木の視線が強くなるにつれ、心の中の抵抗が薄れていくのを感じた。

 そして彼の言う通り、今はこの仕事に従うしかないのだと、
 すべてを受け入れて、彼にゆだねたらいいと思い始める。

「はい。私のスリーサイズは93-60-85で、カップはFカップです」
 と、素直に。もちろん、知ってもらえたと嬉しそうに笑って答えた。

 しかし、自分の言葉が耳から聞こえた瞬間、恥ずかしさと同時に、
 どこか開放感さえ感じている自分が信じられなかったが、

「今はただ、この状況を乗り切ることに集中するしかない」
 という言い訳の思いが心を軽くしていた。

「なるほど、いいサイズだな」と佐々木はにやりと笑い、
 上から数個のボタンを「ブチブチブチ」と一気に引きちぎった。

 そんな事など普通されたら、
 悲鳴を上げて嫌がるか、頬を思い切り張り倒すはずだが、
「ここで悲鳴を上げたら、この男は喜ぶ…」と、美咲は気づいて、

 前ボタンのデニムワンピースのボタンが佐々木に引き千切られ、
 首筋から胸の谷間に、下乳からみぞおちまで見えていたって、
 足首からスネに、大きく広げた脚から太腿の半分まで見えていたって、
 少しも慌てずに、毅然とした態度を貫いた。

「ありがとうございます。これからも秘書として精進いたします」

「これだけいい体なら、もっと際どいものを選ぶべきだな」

「皆様に喜んでいただけるのでしたら、私も光栄です。
 ぜひ、社長の秘書として恥ずかしくない下着を着させてください」

「そうだな。もっとお前の身体を引き立てる特別な下着も必要だ」

「ご指導ありがとうございます。ぜひお願いします」

「俺がすべて選んでやるから、安心しろ」

「光栄です。ありがとうございます。
 社長のお側にふさわしい秘書として、今後も精進いたします」

 佐々木の満足げな態度と言葉に、美咲の気持ちは幾分か楽になり、
 彼の期待に応えたいという思いが芽生えていた。

 しかし、その背後には常に緊張感と羞恥心が影を落とし、
 佐々木の視線が、まるで自分を支配しているかのように感じられ、
 美咲は完全にリラックスすることができていない。

 そして、この仕事が自分をどれほど試すものになるか、
 彼女はまだ全く理解していなかった。

 。

 彼女の心の奥に芽生えた不安は、次第に膨らんでいくばかりだった。

 車が止まると、佐々木がにやりと笑みを浮かべて、
「着いたぞ」と嬉しそうに告げた。

 その瞬間、美咲の心臓が大きく跳ねる。

 まだ会社が終って時間が経っていな夕方に、
 目的地が、まさか「セルビデオ」と書かれた看板のある店だとは、
 美咲も想像していなかった。

 古びた木造の建物は、所々ペンキが剥がれ落ち、
 周囲の風景から異質な存在感を放っている。

 看板には鮮やかな色彩で「セルビデオ」と大きく書かれているが、
 どこか安っぽさが漂い、目を引かずにはいられない。

 周囲は静寂に包まれ、人通りもほとんどなく、すれ違う車もまばらで、
 まるでこの場所だけ時間が止まっているかのようだ。

 美咲が助手席のドアを開けると、湿った空気が中に入ってきて、
 わずかに不快な匂いが鼻を突いた気がしてしまい、
 店に入る前から無意識に顔をしかめた。

 そんな彼女を見て、佐々木はさらに嬉しそうに笑った。

「おい、お前のために残業までしてきたんだぞ。何か不満でもあるのか?」

「いや、そんなことは…」と答えるが、
 自分でも声が震えているのがわかる。

 彼に気づかれないよう、必死に平静を装おうとしたが、
 足が前に進むのを拒んでいるようだった。

 その様子に気づいた佐々木の手が静かに美咲の腰に伸び、
 広がった手が、やがてお尻に触れたような感覚が彼女を襲い、
 全身に寒気と恐怖が駆け上がったが、

「さあ、行くぞ。いい下着を選ぶには、ここが最高だからな。」
「ありがとうございます。佐々木さん…」

 と、美咲はその言葉に反論できず、俯いて店内へと向かう。

 店内に入ると、薄暗い照明に照らされた棚が無造作に並び、
 色とりどりのパッケージが視界を埋め尽くしていた。

 壁には露骨なポスターが貼られ、
 セクシーなモデルたちが無邪気に微笑んでいる。

 最近もそういう場所でアルバイトをしていた美咲は、
 その光景を何度もDVDで見返していたことを思い出して、
 それを見ながら思わず立ち止まった。

「昨日の私も、あんな格好で…?今日も?」と、心の奥がざわつく。

 そんな美咲の態度に気づいた佐々木は、
「大丈夫だ。俺がいるんだ。安心して任せろ。」
 と、低い声で耳元に囁きかけた。

「…」

 その声を聞いても、嫌がっている彼女の気持ちを押し潰すかのように、

「夜には多くの客が来るから、お前のために早く来たんだぞ。」

 と、腕を強く掴んで体を包み込むように引き寄せた。

「佐々木さん、ありがとうございます…」

 佐々木に対する信頼と不安が入り混じり、胸には恐怖が渦巻いていた。

 もちろん、彼が望めば昨日のようなことが再び起こるのではないかと、「今日もたくさんの人に…」という不安が、彼女の心を締めつける。

 その時、ふと視線を上げると、カウンター越しに無表情の店員が、
 こちらをじっと見つめているのが目に入った。

 白いシャツにネクタイを締めたその男の視線に、
 どこか昨日と同じく不気味なものを感じ、美咲は居心地の悪さを覚えた。

「さあ、行くぞ。」

 佐々木は店員の視線を意に介さず、
 美咲の腰に手を添えて、優しくも強引に彼女を導く。

 その手に逆らうことができず、美咲は彼についていくしかなかった。

 心の中では「どうしてここに来てしまったのか」という疑念が渦巻くが、
 全てを任せてしまえば楽になれるという、安心感が彼女を支配した。

「ノーパンノーブラが好きな美咲には必要ないが、
 秘書にはそれなりの下着がいるだろう?」

「すみません、社長…ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
 確かに下着を付けていない私が…全て…ぜんぶ…悪い…んです…」

 静まり返った店内に佐々木の声が響き、続いて美咲が肯定し、
 店員が馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 その言葉は彼女を傷つける一方で、反論する気力も湧かず、
「どうして…」という複雑な気持ちが心を縛っていた。

 そんな彼女の沈黙を見て、嬉しそうに佐々木が続けた。

「スリーサイズを、そこの店員にも聞こえるように大声で言え。」

 美咲の顔は羞恥で真っ赤になり、
 息が詰まる思いだったが、佐々木の命令には逆らえなかった。

「え…それは…」「いいから、教えろ。アイツにも聞こえるようにだぞ」

「はい…胸は93、ウエストは56、ヒップは85です…」
「そんなにいい身体をした若い女が、俺に何をした?」

「はっ。。はい、秘書の面接に、下着をつけずに来ました…ので…あの…
 社長の貴重な時間を…ざ。。残業まで…させて。しまい…」

「そうだよな?だから、何をしに店に来た?」
「下着を…し。。したぎ…欲しい」

 たどたどしい美咲の告白が終わると、佐々木は満足げに頷き、

「よくなったな。そうやって素直になれば、俺だって優しくするぞ。」

 美咲は羞恥で顔が真っ赤になり、
 耐えきれない思いから顔を隠したくなった。

 しかし、店内の静けさがかえって不安を掻き立て、
 身動きもできず呆然と立ち尽くしていた。

 そんな美咲の様子を見て、佐々木は、

「おい、ドン。さっさと持ってこい。俺の大事な秘書が待ってるんだ。」

 と言って、足先でカウンターを軽く蹴り、店員に命令をした。

 そうやって、どんな店でも横柄な態度を崩さない佐々木に、
 美咲は驚きの目を向けていた。


 秘書③
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