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みさき(運命)
秘書①
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美咲はスマホで検索し、表示された会社の場所を確認して目を疑った。
その会社は、ここからかなり遠い温泉街の一角にあり、
タクシーで住所を伝えればたどり着くはずだが、
こんな場所に会社があることがどうにも不自然に思えた。
それでも、彼女には今すぐ行かなければならないという焦り、
時計を見ると、急げば店の開店にギリギリ間に合うかもしれないが、
綺麗に着飾れば、今日仕事には確実に遅れる。
「また急に休むなんて…みんな、ごめんなさい」とため息をつきながら、
オーナーに休みの連絡を入れ、タクシーを手配した。
タクシーの運転手は、温泉旅行にしては身軽な荷物と、
場違いな服装の美咲を見て不思議そうにしていた。
「本当に大丈夫?」
「すみません、急いでるんです。できるだけ早くお願いします」
「高速を使うと、料金も上がるけどいいかい?」
「大丈夫です。急いでくれたら、色もつけます」
そう言って数枚の紙幣を差し出す美咲に驚いた様子の運転手も、
納得したように「じゃあ、急ぐぞ」と上機嫌で車を出した。
車内で、美咲は不安と好奇心が入り混じる気持ちを抱えながら、
「三葉建設工務店」のページを思い出していた。
検索には出てくるものの、
簡素な写真があるだけで、ホームページも口コミもなく、
ますます謎が深まるばかりだった。
その名刺に書かれていた温泉街近くの不思議な会社で、
自分が秘書としてどんな仕事をするのか、
今度は何を失ってしまうのかという不安と好奇心が入り混じる中、
車窓を眺めながら眠っていた。
次に気づけば、車は民家がまばらな濃い緑の山間部を走っていて、
その風景を目にするうちに、
美咲の胸には自然と、不安とざわめきが広がっていった。
特に代わり映えない田舎道に入り、街灯もほとんどない道を進んで、
「本当にこんな場所に会社がある?」という自然な疑念が浮かび、
何度もスマホで地図を確認しても、
画面にはひたすら山道が続いているだけだった。
そうやって走り続けるうちに、すれ違う車もほとんどなく、
タクシーの運転手も無口になったので、
いつもなら何かを話題にして場を和ませる美咲だが、
昨日のバイトのこともあり、
「温泉街」と「秘書」という言葉が頭に残り、
次に「コンパニオン」という不安を、払拭できないまま黙り込んでいた。
。
午後4時を少し過ぎた頃、ようやく目的地らしき場所にたどり着いた。
タクシーが停まった先に見えたのは、
まるで町工場のような小さな建物で、壁は赤茶けた古びたトタン、
正面には「三葉建設工務店」とだけ看板が掲げられていた。
見える駐車場も狭く、数台の車が停まっているが、
会社の窓からのぞく様子は雑然としていて活気も無く、
どう見ても、多くの人が働き秘書を必要としている会社には見えない。
タクシーが帰っていき一人になると、
静まり返った空気と自然の音が美咲を包み込み、
その感覚に一瞬息を飲み、都会の喧騒から遠く離れたこの場所で、
いったい自分に何をさせるつもりなのかと、
得体の知れない恐怖が背筋を冷たくさせる。
だが、それ以上に美咲の胸を締めつけたのは、
目前に立つ「三葉建設工務店」の古びた建物だった。
こんな場所で、まともな秘書の仕事をするとは到底思えなかったが、
昨日のビデオ店で、キャンギャルの恰好でティッシュを配った事と、
渡されたDVDに映っていた嬉しそうに笑った自分の記憶が蘇り、
ここでそれ以上の事をするのかと、ますます心がざわついていた。
意を決して建物の扉を開けると、古びたアルミドアがギシリと音を立て、
誰もいない玄関で待っていたが、誰も迎えにこないので、
「どうぞ、こちらに入って来てください」というを扉を開ける。
美咲が思った通りに、中は予想通りの古めかしい小さな事務所で、
壁際には年季の入ったファイルキャビネットが並び、
埃っぽい空気が漂って、しばらく掃除がされていないのに気づいた。
部屋に突然入ってきた美咲を気にする人はいなく、
何も言ってこないので、誰かいないかと、周りを見ていると、
一番手前のデスクに、年配の男が背を向けて座っていた。
その男は背中を丸めて動きもせずに、
まるでパソコンを眺めながらうたた寝しているかのように見え、
気持ちよさそうに寝ている彼の髪はほとんどなく、
代わりに無精ひげがびっしりと生えている。
そんな彼の仕事の邪魔をしないように、
美咲がそっと近づいて声をかけると、ようやく顔を上げてこちらを見た。
「…すみません、
こちらで秘書の仕事をするように言われた藤崎美咲です。」
一瞬、男の目が驚きに見開かれたが、すぐに何かを悟ったように、
嬉しそうに、イヤらしい山田と同じ笑みを浮かべた。
「ああ、お嬢さんが秘書か…遠くから来たんだってなぁあ。」「はい」
男の目が明らかに、自分を性的な感情で見ているのはわかったが、
すぐに、色々と探るような感情も加わっていき、
「まぁ、仕事はそこそこ、というか…」
美咲は、昨日と同じような視線を近くから味わっても、
免疫みたいなものなのか、「やっぱり…」という感想しか無かった。
「まぁ、イロイロと…あるんだが…、こっちで、ちょっと待っときな。」
そう言って、男は壁際の椅子を指さした。
美咲は、その古びたソファーを見つめ、
「そうよね、こういうことなんでしょう…」と、内心うんざりしながらも、
表情を変えずに、ゆっくりと腰を下ろしていた。
彼女が呆れた理由は、最初から椅子の座面が低くしかも安物で、
中のバネがヘタっているらしく、お尻の辺りが大きく凹んでいた。
もちろん、こんな椅子にビジネススーツのスカートを履いて座れば、
座っていても、裾が常時引き寄せられてしまうし、
慣れていない人が立ったり座ったりしたら、
どうしても両手で肘掛けを掴まないと出来ない。
「こういう人の秘書って…」と、ウンザリしていたが、
今日はデニムのマキシワンピースだったので安心できたし、
店の習慣で、上品に足を揃えてから軽く曲げて座るのも慣れていた。
。
少し待っていると、事務所の奥から足音が近づいてきた。
やがて現れたのは、
がっしりとした体格で工務店らしい作業服を着た「佐々木」。
丸顔に小さな目、どこか嫌味を含んだ笑みを浮かべたその顔つきは、
昨日のビデオショップで会った山田を思わせる嫌な雰囲気と、
見下す男が纏っている無言の威圧感を漂わせていた。
美咲は彼の表情や仕草に、「残念って顔…」と、呆れているし、
あの時以上に、嫌な予感を感じずにはいられなかった。
「お、君が今日から秘書さんか!」
佐々木は上機嫌で手を差し出し、握手を促してきた。
無遠慮な視線が、彼女の揃えていた脚に注がれるのを感じ、
美咲はわずかに苛立ったせいで遅れたが、表情を崩さずに立ち上がり、
彼の手を軽く握り返した。
佐々木の手はごつく、華奢な美咲の手をしっかりと包み込み、
相手を威圧するように固く握られ、「痛いって…」と身構える。
彼は親愛や労いなのか何時までも手を離さず、
しつこく胸元や腰や脚さえも見ているので、
「気持ちわるっ…」と気になったが、美咲は笑顔を保ち続ける。
「まぁ、ゆっくりしていってくれや。
ウチは小さい会社だけどな、今の時期は忙しくてさぁ。」
やっと手を離した佐々木は、
親しげに彼女の肩に手を置いて話そうとしたが、
気付いていた美咲は、さりげなく身を引いて避けた。
そういうパワハラ体質な男だと、美咲は呆れながらも気を取り直し、
「秘書という仕事は初めてなんですが、何をすればいいですか?」
と、さっきの避けた言い訳を聞かれる前に、こちらから尋ねた。
しかし、彼の返答は予想外で、
「まぁ、秘書の仕事は主に書類整理や電話対応がメインなんだけど、
君のその服装はちょっと…なぁ。秘書っていうのを知っているか?
あと、すごい匂いだな。本当に秘書になりたいのか?」
佐々木は微妙に唇を歪め、彼女をじろじろと見つめたあとに、
とても嬉しそうな顔で、美咲の匂いを嗅いでいた。
そんな態度をされても「…すみません」と、謝るしかない美咲。
「もう少し、ビジネス的な態度や格好が必要だと思うよ。」
美咲の心臓がドキリとする。
普段はキャバ嬢として魅せるための衣装を選んでいるが、
ここで求められるのは、全く違ったビジネススタイルだし、
三島に言われて焦ってしまい、慣れた香水をつけすぎたらしく、
その指摘に焦って、思わず言葉を失っていた。
彼女が着ていたのは、前ボタンのマキシワンピースに厚底のサンダル。
適当に整えたアッシュブラウンの髪も、
服装に合わせたカジュアルで落ち着きのないメイクも、
もちろん、大好きな香水に包まれているのだって、
秘書としては適さないと気がついた。
「やっぱり、こういう会社には、もうちょっと清楚な感じ…
いや、この男なら逆に、もっと過激な服装を…それ以上?」
と、美咲が自分の間違いに気づき考え込んでしまったのを、
佐々木は嬉しそうに見ながら、
「お客さんが来たときに、
その格好じゃ、色々と勘違いされるかもな。ここは会社だぞ!」
言っている事は正論だが、裏にある態度に気づいている美咲は、
昨日の山田と同じになると気づき、気持ち悪くなってきた。
しかし、そういう裏の気持ちに気づいていても、
美咲は「申し訳ございません」と、一方的に謝る事しか出来ない。
「それに、君が本当に秘書の仕事をしたいのなら、
服装もちゃんと考えないと…そう思うよね、美咲くん?」
佐々木は軽い調子で言い、美咲をじっと見つめ、
その視線には何か期待を含むようなニュアンスがあり、
彼女の胸の奥に、昨日と同じような嫌な予感が広がった。
「わ、わかりました…」と、焦りを隠せないまま言葉を濁す美咲は、
早くこの場所から逃げ出したかった。
秘書①
その会社は、ここからかなり遠い温泉街の一角にあり、
タクシーで住所を伝えればたどり着くはずだが、
こんな場所に会社があることがどうにも不自然に思えた。
それでも、彼女には今すぐ行かなければならないという焦り、
時計を見ると、急げば店の開店にギリギリ間に合うかもしれないが、
綺麗に着飾れば、今日仕事には確実に遅れる。
「また急に休むなんて…みんな、ごめんなさい」とため息をつきながら、
オーナーに休みの連絡を入れ、タクシーを手配した。
タクシーの運転手は、温泉旅行にしては身軽な荷物と、
場違いな服装の美咲を見て不思議そうにしていた。
「本当に大丈夫?」
「すみません、急いでるんです。できるだけ早くお願いします」
「高速を使うと、料金も上がるけどいいかい?」
「大丈夫です。急いでくれたら、色もつけます」
そう言って数枚の紙幣を差し出す美咲に驚いた様子の運転手も、
納得したように「じゃあ、急ぐぞ」と上機嫌で車を出した。
車内で、美咲は不安と好奇心が入り混じる気持ちを抱えながら、
「三葉建設工務店」のページを思い出していた。
検索には出てくるものの、
簡素な写真があるだけで、ホームページも口コミもなく、
ますます謎が深まるばかりだった。
その名刺に書かれていた温泉街近くの不思議な会社で、
自分が秘書としてどんな仕事をするのか、
今度は何を失ってしまうのかという不安と好奇心が入り混じる中、
車窓を眺めながら眠っていた。
次に気づけば、車は民家がまばらな濃い緑の山間部を走っていて、
その風景を目にするうちに、
美咲の胸には自然と、不安とざわめきが広がっていった。
特に代わり映えない田舎道に入り、街灯もほとんどない道を進んで、
「本当にこんな場所に会社がある?」という自然な疑念が浮かび、
何度もスマホで地図を確認しても、
画面にはひたすら山道が続いているだけだった。
そうやって走り続けるうちに、すれ違う車もほとんどなく、
タクシーの運転手も無口になったので、
いつもなら何かを話題にして場を和ませる美咲だが、
昨日のバイトのこともあり、
「温泉街」と「秘書」という言葉が頭に残り、
次に「コンパニオン」という不安を、払拭できないまま黙り込んでいた。
。
午後4時を少し過ぎた頃、ようやく目的地らしき場所にたどり着いた。
タクシーが停まった先に見えたのは、
まるで町工場のような小さな建物で、壁は赤茶けた古びたトタン、
正面には「三葉建設工務店」とだけ看板が掲げられていた。
見える駐車場も狭く、数台の車が停まっているが、
会社の窓からのぞく様子は雑然としていて活気も無く、
どう見ても、多くの人が働き秘書を必要としている会社には見えない。
タクシーが帰っていき一人になると、
静まり返った空気と自然の音が美咲を包み込み、
その感覚に一瞬息を飲み、都会の喧騒から遠く離れたこの場所で、
いったい自分に何をさせるつもりなのかと、
得体の知れない恐怖が背筋を冷たくさせる。
だが、それ以上に美咲の胸を締めつけたのは、
目前に立つ「三葉建設工務店」の古びた建物だった。
こんな場所で、まともな秘書の仕事をするとは到底思えなかったが、
昨日のビデオ店で、キャンギャルの恰好でティッシュを配った事と、
渡されたDVDに映っていた嬉しそうに笑った自分の記憶が蘇り、
ここでそれ以上の事をするのかと、ますます心がざわついていた。
意を決して建物の扉を開けると、古びたアルミドアがギシリと音を立て、
誰もいない玄関で待っていたが、誰も迎えにこないので、
「どうぞ、こちらに入って来てください」というを扉を開ける。
美咲が思った通りに、中は予想通りの古めかしい小さな事務所で、
壁際には年季の入ったファイルキャビネットが並び、
埃っぽい空気が漂って、しばらく掃除がされていないのに気づいた。
部屋に突然入ってきた美咲を気にする人はいなく、
何も言ってこないので、誰かいないかと、周りを見ていると、
一番手前のデスクに、年配の男が背を向けて座っていた。
その男は背中を丸めて動きもせずに、
まるでパソコンを眺めながらうたた寝しているかのように見え、
気持ちよさそうに寝ている彼の髪はほとんどなく、
代わりに無精ひげがびっしりと生えている。
そんな彼の仕事の邪魔をしないように、
美咲がそっと近づいて声をかけると、ようやく顔を上げてこちらを見た。
「…すみません、
こちらで秘書の仕事をするように言われた藤崎美咲です。」
一瞬、男の目が驚きに見開かれたが、すぐに何かを悟ったように、
嬉しそうに、イヤらしい山田と同じ笑みを浮かべた。
「ああ、お嬢さんが秘書か…遠くから来たんだってなぁあ。」「はい」
男の目が明らかに、自分を性的な感情で見ているのはわかったが、
すぐに、色々と探るような感情も加わっていき、
「まぁ、仕事はそこそこ、というか…」
美咲は、昨日と同じような視線を近くから味わっても、
免疫みたいなものなのか、「やっぱり…」という感想しか無かった。
「まぁ、イロイロと…あるんだが…、こっちで、ちょっと待っときな。」
そう言って、男は壁際の椅子を指さした。
美咲は、その古びたソファーを見つめ、
「そうよね、こういうことなんでしょう…」と、内心うんざりしながらも、
表情を変えずに、ゆっくりと腰を下ろしていた。
彼女が呆れた理由は、最初から椅子の座面が低くしかも安物で、
中のバネがヘタっているらしく、お尻の辺りが大きく凹んでいた。
もちろん、こんな椅子にビジネススーツのスカートを履いて座れば、
座っていても、裾が常時引き寄せられてしまうし、
慣れていない人が立ったり座ったりしたら、
どうしても両手で肘掛けを掴まないと出来ない。
「こういう人の秘書って…」と、ウンザリしていたが、
今日はデニムのマキシワンピースだったので安心できたし、
店の習慣で、上品に足を揃えてから軽く曲げて座るのも慣れていた。
。
少し待っていると、事務所の奥から足音が近づいてきた。
やがて現れたのは、
がっしりとした体格で工務店らしい作業服を着た「佐々木」。
丸顔に小さな目、どこか嫌味を含んだ笑みを浮かべたその顔つきは、
昨日のビデオショップで会った山田を思わせる嫌な雰囲気と、
見下す男が纏っている無言の威圧感を漂わせていた。
美咲は彼の表情や仕草に、「残念って顔…」と、呆れているし、
あの時以上に、嫌な予感を感じずにはいられなかった。
「お、君が今日から秘書さんか!」
佐々木は上機嫌で手を差し出し、握手を促してきた。
無遠慮な視線が、彼女の揃えていた脚に注がれるのを感じ、
美咲はわずかに苛立ったせいで遅れたが、表情を崩さずに立ち上がり、
彼の手を軽く握り返した。
佐々木の手はごつく、華奢な美咲の手をしっかりと包み込み、
相手を威圧するように固く握られ、「痛いって…」と身構える。
彼は親愛や労いなのか何時までも手を離さず、
しつこく胸元や腰や脚さえも見ているので、
「気持ちわるっ…」と気になったが、美咲は笑顔を保ち続ける。
「まぁ、ゆっくりしていってくれや。
ウチは小さい会社だけどな、今の時期は忙しくてさぁ。」
やっと手を離した佐々木は、
親しげに彼女の肩に手を置いて話そうとしたが、
気付いていた美咲は、さりげなく身を引いて避けた。
そういうパワハラ体質な男だと、美咲は呆れながらも気を取り直し、
「秘書という仕事は初めてなんですが、何をすればいいですか?」
と、さっきの避けた言い訳を聞かれる前に、こちらから尋ねた。
しかし、彼の返答は予想外で、
「まぁ、秘書の仕事は主に書類整理や電話対応がメインなんだけど、
君のその服装はちょっと…なぁ。秘書っていうのを知っているか?
あと、すごい匂いだな。本当に秘書になりたいのか?」
佐々木は微妙に唇を歪め、彼女をじろじろと見つめたあとに、
とても嬉しそうな顔で、美咲の匂いを嗅いでいた。
そんな態度をされても「…すみません」と、謝るしかない美咲。
「もう少し、ビジネス的な態度や格好が必要だと思うよ。」
美咲の心臓がドキリとする。
普段はキャバ嬢として魅せるための衣装を選んでいるが、
ここで求められるのは、全く違ったビジネススタイルだし、
三島に言われて焦ってしまい、慣れた香水をつけすぎたらしく、
その指摘に焦って、思わず言葉を失っていた。
彼女が着ていたのは、前ボタンのマキシワンピースに厚底のサンダル。
適当に整えたアッシュブラウンの髪も、
服装に合わせたカジュアルで落ち着きのないメイクも、
もちろん、大好きな香水に包まれているのだって、
秘書としては適さないと気がついた。
「やっぱり、こういう会社には、もうちょっと清楚な感じ…
いや、この男なら逆に、もっと過激な服装を…それ以上?」
と、美咲が自分の間違いに気づき考え込んでしまったのを、
佐々木は嬉しそうに見ながら、
「お客さんが来たときに、
その格好じゃ、色々と勘違いされるかもな。ここは会社だぞ!」
言っている事は正論だが、裏にある態度に気づいている美咲は、
昨日の山田と同じになると気づき、気持ち悪くなってきた。
しかし、そういう裏の気持ちに気づいていても、
美咲は「申し訳ございません」と、一方的に謝る事しか出来ない。
「それに、君が本当に秘書の仕事をしたいのなら、
服装もちゃんと考えないと…そう思うよね、美咲くん?」
佐々木は軽い調子で言い、美咲をじっと見つめ、
その視線には何か期待を含むようなニュアンスがあり、
彼女の胸の奥に、昨日と同じような嫌な予感が広がった。
「わ、わかりました…」と、焦りを隠せないまま言葉を濁す美咲は、
早くこの場所から逃げ出したかった。
秘書①
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