35 / 55
みさき(運命)
バイト②
しおりを挟む
美咲は、白地に青い縁取りが施されたホルターネック風のトップスに、
スポーツタオルほどの長さしかない青いミニスカート、
履いているのはシルバーのハイヒールという姿だった。
その服装は、彼女の美しくくびれたウエストや、
大きく張り出したバストを惜しげなく際立たせ、
踵が上がったことで長い生脚が一層美しく引き立ち、
きれいなヒップが持ち上がって強調され、
短いスカートはショーツが見えそうで見えない絶妙な長さで、
身体に貼り付いていた。
そんな美咲が店を出ると、夜の繁華街はすでに酔いが回った人であふれ、
通りを行き交う人々のざわめきが彼女の耳に響いてくる。
彼女の姿は否応なしに目立ち、周りの視線が次々と向けられ、
美咲は集まってくる視線に負けないように胸を張り、
片手に束ねた「プレジャー」ビデオ店のティッシュを、
笑顔を浮かべながら、「どうぞ」と、通行人に渡そうと声をかけていた。
もちろん、背の高い彼女の前に普通の大人が立っても、
ほとんどの男が少し見上げるような格好になってしまい、
無意識に視線を送ってしまうのは、
身体に貼り付く短いスカートの裾から軽くはみ出る部分と、
食い込みチラつく黒い紐に、黒い三角の始まり、
目線を上げると、上着から覗く柔らかそうに歪んだ乳房だった。
「お疲れ様です!よろしければどうぞ!」
高いヒールがコンクリートの上で小気味よい音を立てるたび、
スカートの裾が持ち上がり、
それを片手で直す彼女の仕草が一段と視線を集め。
道行く人々の中には、こんな夜更けに彼女の目立つ服に興味を示し、
ちらりとこちらを見ながらティッシュを受け取る者もいれば、
何事もないかのように通り過ぎるが、視線だけは彼女に向けていた。
ビジネスマン風の男が立ち止まると、
美咲はいつものキャバ嬢としての営業スマイルを浮かべ、
「どうぞ」とティッシュを差し出す。
彼は美咲の姿を、性的な視線で見つめていたので、
「ごめんなさい」と慌てて謝った。
しかし、美咲が優しく「大丈夫ですよ」と微笑んでくれたので、
彼はその笑顔に少し照れくさそうに「はい、すみません」と、
ティッシュを受け取る。
その様子を見ていた人たちは、
彼女と話したり、近づいてじっくり楽しんでも大丈夫だと勘違いし、
断りもせずに無遠慮に覗き込んだり、
突然近寄って話しかけてくるようになった。
そんな彼らに、美咲が頭を下げてティッシュを渡すと、
前からは、胸元や谷間が覗けてしまい、
後ろからは、短いスカートから飛び出すお尻まで見える。
その姿は、まるで彼女が自ら見せているかのような、
彼女が見せているのだから、自分がという勝手な妄想を引き起こし、
美咲もそんな事を思われていると視線で気づいていたが、
心の中で「仕事よ。友達のために…」と自分を奮い立たせていた。
。
ふと視界の隅に、山田が店の奥からこちらを見守っているのが見え、
店の外に出てくる前に、中で起こった事を思い出した。
「すごく似合ってるよ、美咲ちゃん」
性的な感情をむき出しにして、今にも美咲を襲いそうな顔で喜ぶ山田。
「似合っていると言われると、とても嬉しいです」
心のなかでは別なのだろう、軽く軽蔑したような目で彼を見ていた。
「今回は店の宣伝用だから、まずは宣伝用の撮影をしよう」
「はい、わかりました」と、嬉しそうに答える美咲。
心の中では、
「キャンギャルの仕事だから、こんな格好は普通…普通なのよ」
と、美咲は無理矢理納得して撮影に付き合う。
「さあ、ポーズしてぇ。」と、カメラ越しなのに近づく山田。
彼はカメラの向こうで片手を振りながら、
「こっち。こっちに視線をちょうだい」と、何気なく言い放つ。
「はい、こんな感じですか?」と、ウンザリしているが相手をする。
「あと、美咲…絶対に、下着やその奥を見せちゃダメだよ。
お店が営業停止になっちゃうし、そんなお店だと思われたくないんだ。」
必至に覗いている男が言うような事では無いが、
困った声で言ってくる彼の、嬉しそうな顔が本音を物語っていた。
もちろん美咲は「お前が、それを言うか…」と思わず心で突っ込んだが、
声には出さずに「はい、気をつけます」と、愛想笑いを作る。
「スマイル、スマイルねぇ。」山田の指示に、。
「あはは…はい。」と緊張を隠せない笑顔で、ぎこちなく微笑み返す
美咲が視線を感じる場所は、どう考えても違うし、
「そこを撮影?このポーズって何よ!どうしてしゃがむの!
何を撮影したの?本当に宣伝用なの!絶対に違う場所を撮ったよね!」
という怒りが彼女の心を満たすが、アルバイトをやめられない美咲は、
そのセクハラ撮影会を我慢して、山田が言う通りに続けていた。
ようやく撮影が終わったと言われ、彼女が肩の力を抜いた瞬間、
山田が意地悪そうに近づいてきた。
「美咲ちゃん、乳首も可愛いねぇ…やっぱり、僕の事が好きなんだね。
ほら、そこ、膨らんでるよ。ツン。ツン。」
「あっ…!」上着の上から膨らんだ突起を的確に押されて、
驚きと羞恥で顔が熱くなる。
しかし、山田は構わず笑みを浮かべて
「スマイル、スマイルだよ。お仕事だからね、美咲ちゃん。」
その場で反撃することもできず、押し寄せてくる怒りをぐっと堪え、
「アハハハ。もぉ。やめてくださいよ。山田さんたらぁ。アハハハ」
と、嬉しそうな顔で返す。
そういう事を二人っきりで行っていたが、
今も見てくる山田は、好奇心と別の感情が絡み合っているように見え、
その存在はますます重く感じられ、美咲は軽く視線をそらした。
その視線に気づいたのか、それとも近くで困った顔を見たくなったのか、
山田は笑顔というよりも、気に入った玩具を見せびらかすような、
得意げな表情を浮かべて歩いてきた。
美咲は、彼がこちらに向かってくるのを視界に捉え、
嫌な予感を感じながらも、
「山田さん。何か有りましたか?」と、無理に笑顔を作って聞く。
しかし山田は、美咲に軽く会釈するだけで、
そのまま彼女の横に立ち、通りに向かって大声を張り上げた。
「皆さーん、この子のDVDも店にありますよー!
ぜひ見ていってくださーい!購入も出来ますから、ゼヒぃいい。」
自分が映ったDVDを、通りを歩く人に売ろうとする山田に、
美咲は瞬間的に顔が赤く染まり、
内心では何も言わずに、店に引き返したい衝動に駆られた。
彼の声が周囲に響き渡り、通行人の視線がまたしても彼女に集中する。
DVDに映っているであろう派手な衣装をまとった美咲は、
その視線によって、購入した客全てに全身がさらされているように感じ、
思わず足元がふらつきそうになった。
「ちょ、ちょっと山田さん!やめてください!」
自分の映ったDVDを本気で売ろうとする山田に慌てた美咲は、
出来るだけ小さな声で、彼を制止しようとしたが、
その言葉に構うことなく、さらに声を大きくしていく。
「みなさん、この美咲ちゃん可愛いでしょぉお。
ぜひ覚えて帰ってくださいね!彼女のDVDも店で販売中ですよぉ!」
周囲の通行人たちは興味津々といった様子で美咲に視線を向け、
お互いに耳打ちをしながら通り過ぎていく。
そんな彼らの姿を見ながら、美咲は思わず泣きそうになり、
「どうして、こんなことになってしまったんだろう」
と、複雑な感情が心の中で渦巻いていた。
けれども今は、それを表に出すわけにはいかないので、
美咲は友達のためにと、ティッシュを配り続けるしかなかった。
「どうぞ」「ありがとうございます…」「これも、どうぞ」
美咲が笑顔を浮かべて仕事をするたびに、
冷たい夜風が肌に触れ、露出の多い衣装が体温を奪い、
視線が一段と強くなり体が火照り、内心の不安がさらに膨らんでいく。
やがて、山田の言葉を聞いた男たちが次々と店に入っていき、
店内で一通り商品を物色して出てくると、美咲に真っ直ぐ視線を向ける。
その視線が、まるで肌を直接触れてくるように感じられ、
美咲は気づかないふりをしながらもティッシュを配り続けたが、
彼らのじろじろとした視線と、
自分を品定めするように見つめる気配がどうしても気になった。
そんな視線にさらされている美咲は、今すぐに逃げ出したい気持ちだが、
店に戻った山田の声が背後から聞こえてきて、一段と鼓動が激しくなる。
「スペシャルはこっちだよぉ。ノーマルはこっち!
多少高いけど、これがオススメだよぉお。どうだぁ?
さあ、サンプルを見てくれ!こんな彼女を部屋で独り占めに出来るぞぉ」
自分が映っているDVDが、売れていく声に冷や汗がにじみ、
美咲は膝を抱えてしゃがみ込み、少しでも視線から逃れようとしたが、
あの場所に向けられた視線が絡みつくし、
そんな格好を前続けていれば営業停止になりそうで、
すぐに背を伸ばして立ち上がり、ただひたすらティッシュを配り始めた。
「ご購入ありがとうございました。
皆さんも早く買わないと無くなりますよ。
早いものがちで、一般流通もされませんよぉお。」
山田が自分のDVDを嬉々として売り続ける声を聞くたび、
美咲は「どうぞ…」と、小さな声でティッシュを差し出す。
まるで孤立無援の戦場に立っているような気分だったが、味方はいない。
ただ通り過ぎる人々と、
自分をじっとりと見つめる男たちの視線にさらされる時間が、
どれだけ続いているのかも分からなくなっていた。
必死にティッシュを配る美咲の周りには、次第に通行人が集まり始め、
通りすがりの男性たちが興味津々の様子で声をかけてくる。
「お姉さん、めっちゃ派手だね!」「そんな恰好で恥ずかしくないの?」 「その衣装、よく似合ってるじゃん!」
昔からの知り合いのような冗談めかした声や態度に、
美咲は苦笑いを浮かべて対応するが、
内心では戸惑いや焦りが募るばかりだった。
さらに、写真を一緒に撮りたいと頼まれたり、
酔った男たちが無言でスマホを様々な角度から突き出し、
勝手に撮影する始末だった。
通行人から突然言われ「えっ、写真ですか…?」と驚き混じりに返すと、
男性たちは意に介さず、美咲の隣に立って肩を組んで撮影する。
「こっち見て、笑って笑って!」と、スマホを構えた男性が促してくる。
美咲は一瞬戸惑いながらも、
言われるままに顔を向けて微笑みを作った。
「ありがとうございます…どうぞ、こちらも…」
と差し出したティッシュを受け取った男性たちは、
「また来るね」と言いながら去っていくが、
振り返っては、何度も彼女の姿を目に焼き付けようとする。
「次は俺な。」「次、次。」「割り込むなよ。」「笑って!」
次々に声をかけられ、写真を求められるたびに、美咲は穏やかな顔で、
「喧嘩はしないでください。皆さん全員と一緒に撮影しますから…」
と応じるが、少しずつ疲労が募っていく。
もちろん、写真を撮られる時も笑顔を浮かべて対応したが、
嫌悪感や忌避感が膨れ上がり、逃げ出そうと何度も考えた。
それでも、「友達のために。絶対にダメ」と自分に言い聞かせ、
何をされても受け入れることにした。
そうやって笑顔を作るたびに、周りの視線がますます強くなり、
要求もエスカレートしているが、美咲は何も気にしていないふりをして、
ひたすらティッシュを配っていた。
バイト②
スポーツタオルほどの長さしかない青いミニスカート、
履いているのはシルバーのハイヒールという姿だった。
その服装は、彼女の美しくくびれたウエストや、
大きく張り出したバストを惜しげなく際立たせ、
踵が上がったことで長い生脚が一層美しく引き立ち、
きれいなヒップが持ち上がって強調され、
短いスカートはショーツが見えそうで見えない絶妙な長さで、
身体に貼り付いていた。
そんな美咲が店を出ると、夜の繁華街はすでに酔いが回った人であふれ、
通りを行き交う人々のざわめきが彼女の耳に響いてくる。
彼女の姿は否応なしに目立ち、周りの視線が次々と向けられ、
美咲は集まってくる視線に負けないように胸を張り、
片手に束ねた「プレジャー」ビデオ店のティッシュを、
笑顔を浮かべながら、「どうぞ」と、通行人に渡そうと声をかけていた。
もちろん、背の高い彼女の前に普通の大人が立っても、
ほとんどの男が少し見上げるような格好になってしまい、
無意識に視線を送ってしまうのは、
身体に貼り付く短いスカートの裾から軽くはみ出る部分と、
食い込みチラつく黒い紐に、黒い三角の始まり、
目線を上げると、上着から覗く柔らかそうに歪んだ乳房だった。
「お疲れ様です!よろしければどうぞ!」
高いヒールがコンクリートの上で小気味よい音を立てるたび、
スカートの裾が持ち上がり、
それを片手で直す彼女の仕草が一段と視線を集め。
道行く人々の中には、こんな夜更けに彼女の目立つ服に興味を示し、
ちらりとこちらを見ながらティッシュを受け取る者もいれば、
何事もないかのように通り過ぎるが、視線だけは彼女に向けていた。
ビジネスマン風の男が立ち止まると、
美咲はいつものキャバ嬢としての営業スマイルを浮かべ、
「どうぞ」とティッシュを差し出す。
彼は美咲の姿を、性的な視線で見つめていたので、
「ごめんなさい」と慌てて謝った。
しかし、美咲が優しく「大丈夫ですよ」と微笑んでくれたので、
彼はその笑顔に少し照れくさそうに「はい、すみません」と、
ティッシュを受け取る。
その様子を見ていた人たちは、
彼女と話したり、近づいてじっくり楽しんでも大丈夫だと勘違いし、
断りもせずに無遠慮に覗き込んだり、
突然近寄って話しかけてくるようになった。
そんな彼らに、美咲が頭を下げてティッシュを渡すと、
前からは、胸元や谷間が覗けてしまい、
後ろからは、短いスカートから飛び出すお尻まで見える。
その姿は、まるで彼女が自ら見せているかのような、
彼女が見せているのだから、自分がという勝手な妄想を引き起こし、
美咲もそんな事を思われていると視線で気づいていたが、
心の中で「仕事よ。友達のために…」と自分を奮い立たせていた。
。
ふと視界の隅に、山田が店の奥からこちらを見守っているのが見え、
店の外に出てくる前に、中で起こった事を思い出した。
「すごく似合ってるよ、美咲ちゃん」
性的な感情をむき出しにして、今にも美咲を襲いそうな顔で喜ぶ山田。
「似合っていると言われると、とても嬉しいです」
心のなかでは別なのだろう、軽く軽蔑したような目で彼を見ていた。
「今回は店の宣伝用だから、まずは宣伝用の撮影をしよう」
「はい、わかりました」と、嬉しそうに答える美咲。
心の中では、
「キャンギャルの仕事だから、こんな格好は普通…普通なのよ」
と、美咲は無理矢理納得して撮影に付き合う。
「さあ、ポーズしてぇ。」と、カメラ越しなのに近づく山田。
彼はカメラの向こうで片手を振りながら、
「こっち。こっちに視線をちょうだい」と、何気なく言い放つ。
「はい、こんな感じですか?」と、ウンザリしているが相手をする。
「あと、美咲…絶対に、下着やその奥を見せちゃダメだよ。
お店が営業停止になっちゃうし、そんなお店だと思われたくないんだ。」
必至に覗いている男が言うような事では無いが、
困った声で言ってくる彼の、嬉しそうな顔が本音を物語っていた。
もちろん美咲は「お前が、それを言うか…」と思わず心で突っ込んだが、
声には出さずに「はい、気をつけます」と、愛想笑いを作る。
「スマイル、スマイルねぇ。」山田の指示に、。
「あはは…はい。」と緊張を隠せない笑顔で、ぎこちなく微笑み返す
美咲が視線を感じる場所は、どう考えても違うし、
「そこを撮影?このポーズって何よ!どうしてしゃがむの!
何を撮影したの?本当に宣伝用なの!絶対に違う場所を撮ったよね!」
という怒りが彼女の心を満たすが、アルバイトをやめられない美咲は、
そのセクハラ撮影会を我慢して、山田が言う通りに続けていた。
ようやく撮影が終わったと言われ、彼女が肩の力を抜いた瞬間、
山田が意地悪そうに近づいてきた。
「美咲ちゃん、乳首も可愛いねぇ…やっぱり、僕の事が好きなんだね。
ほら、そこ、膨らんでるよ。ツン。ツン。」
「あっ…!」上着の上から膨らんだ突起を的確に押されて、
驚きと羞恥で顔が熱くなる。
しかし、山田は構わず笑みを浮かべて
「スマイル、スマイルだよ。お仕事だからね、美咲ちゃん。」
その場で反撃することもできず、押し寄せてくる怒りをぐっと堪え、
「アハハハ。もぉ。やめてくださいよ。山田さんたらぁ。アハハハ」
と、嬉しそうな顔で返す。
そういう事を二人っきりで行っていたが、
今も見てくる山田は、好奇心と別の感情が絡み合っているように見え、
その存在はますます重く感じられ、美咲は軽く視線をそらした。
その視線に気づいたのか、それとも近くで困った顔を見たくなったのか、
山田は笑顔というよりも、気に入った玩具を見せびらかすような、
得意げな表情を浮かべて歩いてきた。
美咲は、彼がこちらに向かってくるのを視界に捉え、
嫌な予感を感じながらも、
「山田さん。何か有りましたか?」と、無理に笑顔を作って聞く。
しかし山田は、美咲に軽く会釈するだけで、
そのまま彼女の横に立ち、通りに向かって大声を張り上げた。
「皆さーん、この子のDVDも店にありますよー!
ぜひ見ていってくださーい!購入も出来ますから、ゼヒぃいい。」
自分が映ったDVDを、通りを歩く人に売ろうとする山田に、
美咲は瞬間的に顔が赤く染まり、
内心では何も言わずに、店に引き返したい衝動に駆られた。
彼の声が周囲に響き渡り、通行人の視線がまたしても彼女に集中する。
DVDに映っているであろう派手な衣装をまとった美咲は、
その視線によって、購入した客全てに全身がさらされているように感じ、
思わず足元がふらつきそうになった。
「ちょ、ちょっと山田さん!やめてください!」
自分の映ったDVDを本気で売ろうとする山田に慌てた美咲は、
出来るだけ小さな声で、彼を制止しようとしたが、
その言葉に構うことなく、さらに声を大きくしていく。
「みなさん、この美咲ちゃん可愛いでしょぉお。
ぜひ覚えて帰ってくださいね!彼女のDVDも店で販売中ですよぉ!」
周囲の通行人たちは興味津々といった様子で美咲に視線を向け、
お互いに耳打ちをしながら通り過ぎていく。
そんな彼らの姿を見ながら、美咲は思わず泣きそうになり、
「どうして、こんなことになってしまったんだろう」
と、複雑な感情が心の中で渦巻いていた。
けれども今は、それを表に出すわけにはいかないので、
美咲は友達のためにと、ティッシュを配り続けるしかなかった。
「どうぞ」「ありがとうございます…」「これも、どうぞ」
美咲が笑顔を浮かべて仕事をするたびに、
冷たい夜風が肌に触れ、露出の多い衣装が体温を奪い、
視線が一段と強くなり体が火照り、内心の不安がさらに膨らんでいく。
やがて、山田の言葉を聞いた男たちが次々と店に入っていき、
店内で一通り商品を物色して出てくると、美咲に真っ直ぐ視線を向ける。
その視線が、まるで肌を直接触れてくるように感じられ、
美咲は気づかないふりをしながらもティッシュを配り続けたが、
彼らのじろじろとした視線と、
自分を品定めするように見つめる気配がどうしても気になった。
そんな視線にさらされている美咲は、今すぐに逃げ出したい気持ちだが、
店に戻った山田の声が背後から聞こえてきて、一段と鼓動が激しくなる。
「スペシャルはこっちだよぉ。ノーマルはこっち!
多少高いけど、これがオススメだよぉお。どうだぁ?
さあ、サンプルを見てくれ!こんな彼女を部屋で独り占めに出来るぞぉ」
自分が映っているDVDが、売れていく声に冷や汗がにじみ、
美咲は膝を抱えてしゃがみ込み、少しでも視線から逃れようとしたが、
あの場所に向けられた視線が絡みつくし、
そんな格好を前続けていれば営業停止になりそうで、
すぐに背を伸ばして立ち上がり、ただひたすらティッシュを配り始めた。
「ご購入ありがとうございました。
皆さんも早く買わないと無くなりますよ。
早いものがちで、一般流通もされませんよぉお。」
山田が自分のDVDを嬉々として売り続ける声を聞くたび、
美咲は「どうぞ…」と、小さな声でティッシュを差し出す。
まるで孤立無援の戦場に立っているような気分だったが、味方はいない。
ただ通り過ぎる人々と、
自分をじっとりと見つめる男たちの視線にさらされる時間が、
どれだけ続いているのかも分からなくなっていた。
必死にティッシュを配る美咲の周りには、次第に通行人が集まり始め、
通りすがりの男性たちが興味津々の様子で声をかけてくる。
「お姉さん、めっちゃ派手だね!」「そんな恰好で恥ずかしくないの?」 「その衣装、よく似合ってるじゃん!」
昔からの知り合いのような冗談めかした声や態度に、
美咲は苦笑いを浮かべて対応するが、
内心では戸惑いや焦りが募るばかりだった。
さらに、写真を一緒に撮りたいと頼まれたり、
酔った男たちが無言でスマホを様々な角度から突き出し、
勝手に撮影する始末だった。
通行人から突然言われ「えっ、写真ですか…?」と驚き混じりに返すと、
男性たちは意に介さず、美咲の隣に立って肩を組んで撮影する。
「こっち見て、笑って笑って!」と、スマホを構えた男性が促してくる。
美咲は一瞬戸惑いながらも、
言われるままに顔を向けて微笑みを作った。
「ありがとうございます…どうぞ、こちらも…」
と差し出したティッシュを受け取った男性たちは、
「また来るね」と言いながら去っていくが、
振り返っては、何度も彼女の姿を目に焼き付けようとする。
「次は俺な。」「次、次。」「割り込むなよ。」「笑って!」
次々に声をかけられ、写真を求められるたびに、美咲は穏やかな顔で、
「喧嘩はしないでください。皆さん全員と一緒に撮影しますから…」
と応じるが、少しずつ疲労が募っていく。
もちろん、写真を撮られる時も笑顔を浮かべて対応したが、
嫌悪感や忌避感が膨れ上がり、逃げ出そうと何度も考えた。
それでも、「友達のために。絶対にダメ」と自分に言い聞かせ、
何をされても受け入れることにした。
そうやって笑顔を作るたびに、周りの視線がますます強くなり、
要求もエスカレートしているが、美咲は何も気にしていないふりをして、
ひたすらティッシュを配っていた。
バイト②
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。



とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる