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あーちゃん(夏の海)

帰宅

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 日が昇り始め、日差しも強くなり、早朝から遊んでいた二人の時間も、
 そろそろ終わりに近づいていた。

「疲れたよぉ、お姉ちゃん。」

「もう少しで海の家が開くから、シャワーを浴びてから帰ろう。
 あとちょっとだけ頑張って、亮平くん。」

 最初は優しく声をかけていたひかりだったが、次第に顔が曇り始めた。

「喉が乾いたぁ。」 
「さっきから文句ばっかり!海の水でも飲んだら?さぁ、泳ぐの!」

 とうとう怒ったように、ひかりが声を上げていた。

 その様子に驚いた亮平は、
 慌ててクロールのようにバシャバシャと必死に水をかき始めた。

 。

 このように二人がなった理由は、
 彼が「泳ぎたいなぁ。」と浮き輪につかまって漂いながら、
 ぼそりとつぶやいたのがきっかけだった。

「まずは水に慣れよう!」ひかりは嬉しそうに水中眼鏡を手渡した。

「ブクブク、ザバーン。見てたでしょ?亮平もやって!」

 風呂でよくやっているから簡単だと思った亮平は、
「ブクブク、プハァ。」と水に頭を沈めてから浮かび上がった。

「すごい、水が怖くないの?さすが亮平ぇえ!」

 彼女が喜ぶ声に嬉しくなった亮平は、足がつかない沖でも、
「ブクブクウウ。。ブッフぁぁ!どう?できるでしょ!」と、
 自慢げにひかりに笑いかけた。

「さすが!じゃあ次はバタ足ね。見てて、バシャン、バシャン!」

 ひかりが海に軽く浮かびながら、両脚を一度ずつ蹴ってみせた。

「バチャバチャ、バチャバチャ!」

「いい感じよ!じゃあ今度は腕も使って!
 いい、見てて。スウゥ。。バシャン、スウゥ。。バシャン。」

 そう言いながら、ひかりは優雅に腕と脚を動かし、
 綺麗なフォームで泳ぐ姿を見せていた。

「ブク。。ボブウ。。ブク。」

 すでに潜れる亮平は、海の中からその姿を必死に追いかけていた。

 。

「バシャッ、バシャッ!」

 亮平は必死に泳ごうとするが、どうしても沈んでしまう。

 腕を動かせば浮くと言われたが、
 そうすると息継ぎや手足の使い方がよくわからなくなった。

「もっと早く腕を動かして!あと、さっさと身体を捻れば浮くの!」

 ひかりの声に焦りながら、亮平は手足をバシャバシャと動かし、
 いつの間にか、少しは形になってきたが、
 彼自身は、どう見えているかなんて気にしていなかった。

 。

 ようやく帰る時間になり、二人は沖から戻ってきたが、
 彼女の股下ほどの浅瀬に差し掛かると、
 亮平は突然「ジャボン!」と海に潜り、彼女の視界から姿を消した。

 後ろを歩いていた亮平が、その音と一緒に消えて焦ったひかりは、
「亮平?どこにいるの?」と、不安そうに声をかけながら探していたが、

 突然、亮平の腕が膝に絡みついてきて、彼女はバランスを崩してしまい、

「バッチャァアン!」

 大きな水しぶきとともに勢いよく海に倒れ込み、
 周囲の視線が二人に集まっていた。

「もぉ、亮平!」と水浸しのひかりが立ち上がると、
 亮平は「アハハ、ごめんね!」と笑いながら謝っていた。

 二人で楽しそうに話しているが、
 ひかりの姿は、濡れたビキニがぴったりと身体に張り付いているし、
 倒れた時に紐が緩んで布が外れたらしく、
 それを恥ずかしそうに直していた。

「本当にびっくりしたんだから!」
「本当にごめんね。」

 ひかりが真剣に怒っているのか、笑っているのか、
 亮平にはわからなかったが、
 いたずらが成功したことに満足げな笑みを浮かべていた。

「でも、すごくかっこよく泳げるね。オレももっと上手くなりたいなぁ。」

 その言葉に、ひかりは優しく亮平の頭を撫でながら微笑んだ。

「大丈夫、何度も練習すれば、もっと上手くなるよ。」

 そうやって、二人の海での経験は終わった。

 。

 海の家が開く時間が来て、二人はそこに向かい、

「まだ砂が残ってるって!」「もういいよ。もう落ちたから。」
「こっちも。」「お姉ちゃんだって、そこに砂が残ってるって。」

 一緒にシャワーを浴びながら、ふざけながら身体を洗いあっていた。

「そろそろ帰るよ。亮平、準備できた?」

 亮平は、少し名残惜しそうにうなずく。

「うん、でも楽しかった。また来ようね、お姉ちゃん。」

 車に戻ると、二人は笑いながら狭い車内で身体を見せ合いながら着替え、
 エンジンがかかると涼しい風が吹き込んできた。

 亮平は海を見つめながら、今日までの出来事を振り返えった。

 ひかりとの二日間は、亮平にとって特別な時間だった。

「今日も楽しかったね、亮平。」 「うん、また絶対来ようね。」

 二人は笑顔で、車を走らせていった。


 帰宅
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