クロスオーバー

連鎖

文字の大きさ
上 下
28 / 51
あーちゃん(夏の海)

目覚め

しおりを挟む
 ファミレスを出た浅見ひかりは、
 背負っていた亮平を、フルフラットにした車内にそっと寝かせていた。

「私って?」亮平が心地よく寝ている姿を見ながら呟いていた。

 気持ちよく寝ている亮平を見ながら、
 車内が涼しくなったところでエンジンを切ると、静寂が広がっていた。

 もちろん、外は蒸し暑い真夏の夜で、
 湿気が肌にまとわりついたような気がしたが、
 彼女は疲れていたらしく、すぐに目を閉じていた。

 。

 どれくらい時間が経ったのか、ひかりはまだ寝付けず、
 何度も寝返りを打ちながら横になり、額に手を当てていた。

「フゥ、やっぱり暑いなぁ」と、手のひらにうっすらと汗を感じたその時、
 ふと誰かに見られているような気配を感じた。

 もちろん、駐車場には誰もいないし、
 遠くの街灯がぼんやりと照らすだけの、静かな夜だった。

「フウフウ。。アツイアツイ。。」

 まるで夢の中にいるかのように、咲良の声が耳に蘇る。

「亮平をよろしくね。ひかりちゃんが大好きらしいのよ。」

 ひかりは、眠れない意味に気づき、仰向きになって目を閉じた。

 亮平が自分を女として好きなのか、
 ただ母親の代わりとして寂しさを紛らわしているだけなのか、
 その違いが分からなかった。

 だが、亮平が甘えてくれるたびに、
 自分の中の孤独が、少しずつ癒されていくのを感じていた。

「亮平は、ひかりが好きでご飯来たよ。」

 ボブとの食事中に、彼もそう言っていた。

 こんなに年が離れた自分をどうして好きになれるのか、分からなかった。

 ボブのように気持ちをぶつけてくれれば、判断できるのだろうか?

 それとも自分自身、恋愛について何も分かっていないのかも?

「ひかちゃん、男ってのは年は関係ないんだよ。」

 けんちゃんに撮影されている時も、そんなことを言われたっけ。

 映画の主人公みたいな大げさなことを言われても、現実味がなかった。

 だが今は、彼らが何を言いたかったのか、少しだけ理解できる気がした。

「いいって。。」「イキオイよ。。」「自分の気持を。。」

 激しい熱にうなされながら、
 三人の笑い声が頭の中をぐるぐる回り、その声はどんどん大きくなり、
 やがて身体の奥で、何かが爆発するかのような熱がこみあがってきた。

 そして突然、視界が真っ白に閃き、

「イッ。。」

 その衝撃に驚いたひかりが目を開けると、
 車内に街灯の薄明かりが差し込んでいるだけで、
 辺りは静まり返っていた。

「ひかり?」「亮平?」

 しかし、びっくりしたような亮平の顔が目の前にあり、
 彼もまた、ひかりの表情に何かを感じ取ったようだった。

「おいで、亮平。。」「ひかり。。」

 車内の狭さが、二人の距離をさらに縮めていた。

 エンジンを切ったままの車内は、蒸し暑さを閉じ込めた箱のように、
 二人の息遣いでさらに熱を帯びていく。

 波の音が遠くにかすかに響き、車の外では誰もいない静かな夜だった。

 ひかりはシートに沈み込みながら、目の前にいる亮平の顔を見つめると、
 彼の瞳は真剣で、普段のあどけない表情とは違った顔をしていた。

 ひかりは少しだけためらったが、彼の手が自分の頬に触れた瞬間、
 その戸惑いは一瞬で消えていた。

「ひかり。。」亮平の小さな声が囁くように響く。

 ひかりは彼の名前を呼び返すことなく、その手を取った。

 そして、二人はゆっくりと近づき、お互いの身体が触れ合うと、
 体温が重なり合い、汗がじわじわと滲んでいた。

 触れるだけで我慢できなくなった彼の手が、
 ひかりの身体を撫でるたびに、彼女の心は微かに震えていた。

 亮平の幼さが、その動きに残っているのが分かるが、
 それでも、彼の気持ちが痛いほどひかりに伝わってきた。

「大丈夫。」ひかりが優しく囁くと、
 亮平は緊張をほどくように、深く息をつき二人は唇を重ね、
 車内の空気はますます熱くなっていき、
 彼の指先がひかりの髪を梳き、ゆっくりと彼女の体を辿っていく。

 波の音が遠くから響き、車内にこもる熱は、
 二人の動きに合わせて、さらに濃密なものになっていった。

 ひかりの胸が激しく上下し、彼女の手が亮平の背中に回る。
 二人の呼吸が重なり合い、ひかりはもう何も考えられなくなっていた。

「ひかり。。好きだよ。。」亮平が途切れ途切れに囁く。
 彼の言葉は、ただの子供の告白ではなく、大人びたものに聞こえた。

 ひかりは、その言葉に何かを感じつつも、
 ただ彼の気持ちを受け入れるだけだった。

 二人は互いに求め合い、熱を分かち合いながら何度も身体を重ね、
 そのたびに車内に漂う甘く切ない香りが濃くなり、
 彼らの想いを永遠に刻んでいくようだった。

 外の波の音は、二人を優しく包み込むように、
 ゆっくりと静かに響き続けていた。


 目覚め
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

処理中です...