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あーちゃん(夏の海)

ファミレス

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 車内で休憩しているうちに、周囲の車はすっかり消え、

「うぅん。。。?」

 駐車場には街灯の明かりだけが、ぽつりぽつりと光る夜が訪れていた。

 浅見ひかりは、車内に差し込む微かな光で周りを確認すると、
「あちゃー。。。」と心の中で叫んでいた。

 彼女も休憩前の記憶はあるのだが、亮平の顔が自分の胸に埋もれて、
 苦しそうに寝息を立てているのを見て、焦りが一気にこみ上げてきた。

「はぁ。またやっちゃった?またなのねぇ。ハァ。亮平ゴメンナサイぃ。」

 そうやって心の中でつぶやいているのだが、
 いつもお酒を飲んだ後には、よく見る光景だったらしく、
 急いで腕を緩めると、亮平は小さく寝返りを打って離れていった。

「暑いわねぇ。。ふぅ。ごめんね。亮平。」とため息をつき、
 ひかりは申し訳なさそうに、彼の背中を見つめていた。

 流石にエンジンを止めていた車内はすっかり蒸し暑くなって、
 全身が汗のような物で、べたついていることに気づくと、
 まだ酔いが残っているのか、ひかりはふと笑みを浮かべ、

「大丈夫、大丈夫、夜だし、誰も見てないよねぇ。。アハハハハ。」

 そんな風に自分に言い聞かせながら、濡れた全身をタオルで拭き、
 汚れた下着は諦めて、Tシャツとホットパンツだけを身に纏っていた。

「リョウちゃん、起きてってば!」ひかりが軽く亮平を揺すっていた。

「お姉ちゃん。。何?」とまだ寝ぼけ眼で答える彼に、
「近くにファミレスあるの。閉まる前に行かなきゃ!」と急かしていた。

「帰るんじゃないの?」亮平が不安そうに尋ねると、

 ひかりはにっこり笑って、

「車中泊よ、言ったでしょ? 
 明日、海の家が開いたらシャワーを浴びて帰るって!
 マサカ覚えていないの?」

 亮平はすっかり聞き流していたようだが、
 まだ酔っているような感じがするひかりに反論することもできず、
 渋々起き上がっていた。

「ごめんね、お姉ちゃん。。」と謝る亮平に、

 ひかりは楽しげに笑いながら、

「アハハ、いいのよ、リョウちゃん。何も気にしていないよ。
 お姉ちゃんが、全部許してあげるからね! チュッ。」

 と頬に軽くキスをしていた。

 旅行中のハイテンションになったひかりに戸惑いながらも、
 亮平は素直に「ありがとう、お姉ちゃん。」とお礼を言っていた。

「これからも何でも許してあげるから、何でも言ってね。」「アレ?」
「気づいちゃった?ちょっと目が痛くてね。」「んっ。うん。」

 眼鏡姿のひかりを、久しぶりに見たような気がしたのか、
 亮平は何度も彼女の全身を見続けていた。

 そうやって見てくる亮平の視線が気になったらしく、

「グイッ。早くご飯に行こう。リョウチャン。」「ハイ。」

 嬉しそうに笑っているひかりが、手を強く引いてきたので、
 顔を真赤にしている亮平が、ファミレスに向かって歩き出していた。

 外に出ると、夜の風が心地よく感じられ、
 ひかりは亮平の小さな手を引きながら、
 ファミレスに向かって歩き出していた。

 しかし、昼間にたっぷり遊んで疲れた亮平は、
 車の中で寝たという疲れや、暗い夜道を歩いている不安感で、

「痛っ。。」「いいのよ。おいで。」

 とうとう彼の体が悲鳴を上げたらしく、
 それに気づいたひかりは、亮平を背負っていた。

「ごめんね。。お姉ちゃん。。」亮平は申し訳なさそうに言ったが、

 ひかりは、優しく微笑んで答えた。

「いいのよ。大きくなったら、今度はお姉ちゃんを助けてね。」

 背中越しに感じる亮平の体温が、ひかりの心に温かく響いていた。

 亮平は少し恥ずかしそうに「でも。ひかり、おんぶは、恥ずかしいよ。」
 とつぶやいたが、

 ひかりは楽しそうに笑いながら、

「リョウちゃん、もっと甘えていいのよ!」と、しっかり背負っていた。

 。

 ようやく、ファミレスの明かりが見えたときには、
 流石にひかりでもほっとしたらしく、

「ハァ。ハアハア。ふぅう。遠かったぁ。アハハハハ。」

 そう思っていたが、亮平に気づかれないように彼をユックリ降ろすと、
 その扉を開けていた。

 明るい店内は、土曜の夜ということもあって賑わっていたが、
 若い女の子と小さな子供という、目立つ二人を気にする人は少なかった。

「コチラのテーブルへどうぞ。ご注文が決まりましたら、
 ボタンを押してくださいね。」と店員に案内され、席に着いていた。

「お姉ちゃん、何でも食べていいんだよね?」
 亮平が嬉しそうに聞いてきた。

「いいけど、ちゃんと考えなさいよ!」
 と、少しお姉さんらしく答えるひかり。

「じゃあ、チーズインハンバーグとドリンクバーそれとデザート。」と、
 一生懸命メニューを見ている亮平を見ているだけで、
 ひかりの心は穏やかになっていた。

「お姉ちゃんは?」と亮平が気遣うように尋ねてきた。

 その言葉に嬉しくなり「ペスカトーレにビール。」

「お姉ちゃんドリンクバーは?」

「じゃあ、ドリンクバーもつけようかしらね。」と、自然に答えていた。

 ボタンを押して、けたたましいチャイム音を聞いたあとは、
 呼んだ店員に注文をすると、

「コッチだよ。お姉ちゃん。」亮平がスグにひかりの手を取ってくるので、
「行くから。ちょっとリョウヘイ。」と、慌てて彼について行った。

「こうなんだよ。知ってる?」「こうやるんだぁ。リョウちゃん。」

 嬉しそうに大声で説明してくる亮平を、見ているだけで嬉しくなり、
 興味深そうに自分の全身を見てくる視線など、少しも気にならなかった。

 食事を楽しんだ後は、二人ともトイレを済ませてから帰ったが、
 再び帰り道で亮平を背負うことになっていた。

 もちろん、最初は「帰りは頑張るよ!」と亮平は真剣な顔で言っていた。

「本当?」とひかりがイタズラっぽく聞き返すと、
 亮平は自信満々に「今度は大丈夫だよ!」と答えていた。

 しかし、歩き始めてしばらくすると、
 亮平は徐々に眠くなったらしく、フラフラと目を閉じて歩いていたので、
 ひかりが彼を背負ってあげていた。

 もちろん、ひかりに背負って貰えて安心した亮平はすぐに寝始めて、
 ダラリと伸びた手が、彼女の肩から前へと垂れ下がっていた。

「やっぱり無理だった。」と、ひかりは心の中で苦笑いを浮かべながら、
 重くなった亮平の体を嬉しく感じていると、
 彼は夢を見ているらしく、「お母さん。むにゃむにゃ。お母さん。」
 と、甘えるように寝言をつぶやいていた。

 亮平が母親を求める寝言を耳にして、ひかりは小さく微笑み、
 彼の体温を感じながら、しっかりと支えて静かな夜道を歩き続けていた。


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