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あーちゃん(夏の海)

相談

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 知り合いの子どもとはいえ、どう扱っていいのか分からず、
 なんとなくけんちゃんの店を訪れていた。

 もちろん、いつもと同じく彼が選んでくれた服や下着に着替え、
 けんちゃんの趣味であるカメラの前で、
 プレゼントのお礼として、軽い撮影に今回も応じていた。

「ひかちゃん、その下着どう?」
「うん、いい感じかなぁ。締め付けが無いよね。」
「そりゃそうだろぉお!サイズを測ったプロが選んだんだぞ!」

「色々とあるんだね。私も知らなかった。」
「もっと動きやすいのも探しておくよ。」

「でもさぁ、高校生じゃないんだから、
 こんなに短いのを履いて、外での撮影なんて無理だって!」
「そうなの?最近は地上波でも見かけるけど?」

 店の奥に仕舞ってあった商品らしく、個別包装もなく、
 タグも外されたミニワンピースを着て、今回は部屋で撮影をしていた。

 最初は、膝下でも短いとひかりは嫌がっていたが、
 こうやって撮影される度に、色々と慣れたらしく、
 今では下着が見えそうな長さのスカートでも、
 少し嫌そうな顔をするだけで、撮影をさせていた。

「それよりさぁ、聞いてよ。」

「どうしたんだい?今日は何か悩んでる顔をしているな。
 おっ、いいねぇ。そのポーズ、セクシーでいいよ、ひかちゃん。」

 相変わらずのラフな口調で話しかけてくれた。

「実は週末、海に行くことになったの。
 前に話した藤間さんの息子、亮平くんのことなんだけど。。
 なんだか気が進まなくて。というか、自信がなくって。。」

 けんちゃんは眉をひそめながらカメラを置き、興味深そうに聞いてきた。

「ふぅん、子どものおもりって、そんなに大変なのか?」

「いや、そういうことじゃなくて、単純に日焼けとか、
 着ていく服とかが気になるの。

 もう若くないし、肌とかちゃんと気をつけないとシミとか。。。
 はぁあ。それに、子どもと一緒に歩いても変じゃない服装とか、
 真夏でも浮かないって、そんな感じのがいいのかなぁって。

 それを漠然と考えているだけで、夜も寝れなくなるんですぅう!」

 自分で言いながら少し恥ずかしくなったけど、その気持ちは本物だった。

 都会の生活に慣れないまま、身だしなみにも自信が持てず、
 余計に日焼けや周りの流行が気になっていた。

「なんだ、そんなことか。アハハハ、ひかちゃん、そうかぁ。」

 けんちゃんはあっけらかんと笑い飛ばした。

「日焼けは残るんですよ、けんちゃん!」

「アハハハ、別に水着を着なくてもいいだろ?
 長袖シャツとかパーカーを羽織って、サングラスに帽子で十分だって!」

 その無邪気な笑いにつられて、私もため息混じりに笑ってしまった。

「はアアぁぁ、けんちゃん?まあ、それもそうなんだけどね。アハハ。
 でも、せっかくだからちゃんと楽しみたいのぉ。
 何か良いアイテムとか、服とか奥に無い?海に入らなくてもいいから。」

「おう、それなら俺に任せろ!特別に揃えてやるから、待っていろ!」

 けんちゃんは自信満々に言うと、店内と倉庫を物色し始めたが、
 残念そうな顔で奥から戻って来た。

「ひかちゃん、今すぐには無いや。後で揃えて準備しておくから。」
「ありがとう!けんちゃああん。それじゃあ、後はお願いねぇええ。」

「お礼なんだけどぉ?」

 最近は、けんちゃんの店にもよく寄っているので、
 相手が言ってくる事など簡単だと、ひかりは笑って答えていた。

「ハイハイ、わかりましたぁあ。
 撮影会でしょぉお。さっき言ってたのもしてあげるから、ヨロシクね。」

「そうだ。今度、おいしいお酒も手に入りそうだし、一緒に飲むか?」

「じゃあ、その時に一緒にお願いねぇえ。
 もちろん、海に行ったお土産も持ってくるから、その時にネェ。」
「おう。楽しみにしてるよ。」

「美味しいお酒ね。あははは。じゃあ、また今度ねぇえ、けんちゃん。」

「ひかちゃんもねぇえ。もちろん、もう一緒に住んじゃおうか?」
「アハハハハ。考えておきますぅう。」

 けんちゃんとのやり取りはいつも心地よかった。
 年齢の離れた彼の気さくな態度には、祖父に似た温かさを感じていたし、

 私の相談にも軽口を交えながら真剣に乗ってくれる彼の姿勢が、
 都会に一人で出てきて寂しい私には救いだった。

 週末が近づき、けんちゃんが送ってくれたアイテムを家で眺めながら、
 私はどうやって、亮平くんとの旅行を楽しもうかと考え込んでいた。


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