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リリアンとクロ(正義の味方)

連絡①

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「ありがとう。チュッ。。おじいちゃん。行ってくるねぇえ。」
「あはは、気おつけるんだぞぉ。リリィ。。」

 今では、鈴木の事を素直におじいちゃんと呼べるし、
 スマフォを受け取った時には、そのまま鈴木の部屋に泊まっていた。

 最近では、鈴木の部屋に寄ってから学校に行くことも増えていた。

 そこまで行けば、素直に学校に行って、素直に就職して、素直に結婚。
 そして、出産に子育てをして、子供の成長を見ながら老後という、
 普通以上の幸せに、理々杏の手でも届くのだが、

(やっと。これでいいんでしょ。クロ。正義の味方。正義が待っている!)
(リリィ。だから、やめなよ。普通が一番だって!普通がいいよ。)

「0120。。。」「プルプル。。カチャ。。正義の味方会社です。」
「理々杏デス。新聞を見ました。新聞の社員募集です。。。」

「ピィっと鳴りましたら、ご要件。内容と、
 書かれた暗号を読み上げて下さい。。。。ピイィイイ。。」

「藤ヶ谷 理々杏 16歳の高校一年生 12月31日生まれです。
 新聞の。。。」

 録音された音声だと気づいた理々杏が、
 慌てて新聞に書かれていた暗号と、自己紹介を話していた。

「ピッ。。合否は別途連絡致します。連絡ありがとうございました。」

(いいのかなぁ。あはは、正義の味方。先輩。わたしも一緒にぃいい。
 せいぎぃ。正義の味方になりますよ。先輩、待ってて下さいね。)
(ハァァァ。リリ?普通がいいんだって、何でも普通がいいんだよ?)

 同居人の愚痴など少しも心が踊らない理々杏が、
 一歩づつでも目的の未来に近づいていく手応えに陶酔していた。

 。。

 あの不思議な録音をした後に、理々杏の部屋に男が現れていた。

「ピンポーン。。藤ヶ谷さん。ご在宅ですか?藤ヶ谷さん。宅急便です。」

(クロ。。大丈夫?)(普通に過ごしたいなら、無視するやつ。)
(ああ、あれね。うふふ。あはは。やったぁあああ。)

「はい、はぁあい。ガチャ。。」
「藤ヶ谷 理々杏さんで、間違いありませんか?
 この荷物は特別でして、何か身分を証明出来るものは持っていますか?」
「ああ、どうぞ。学生証です。」
「ふじ。。間違い無いですね。じゃあ、荷物をお受け取り下さい。」

「あっ。ああァ。。。ありがとう。。ブン。。。がっちゃやぁあん。」

 受け取った荷物が気に入らなかったのか、
 もしかすると、思ったより重くてビックリしたのか、
 男から受け取った荷物を、勢い良く床に叩きつけていた。

「えっ。。」
「ちゃんと、運んで貰えませんか!中の商品が壊れていますよ。」

「そ。。それは。。」
「あなたが割れ物なのに、チャント運ばなかったのよね!」

「ち。。ちが。。」
「言い訳ですか?今、言い訳を言おうとしましたね。そうでしょ!!」

「あ。あなたが、わ。割った。。貴方が。。キミ。ふうぅう。ふぅぅ。。」

(アンガーマネジメント。。アンガーマネジメント。だめだぞぉ。
 絶対にダメだぞぉお。アンガーマネジメントだからなぁあ。)

 子供のような女の子に、一方的に言われている事に戸惑っているし、
 荷物を床に叩きつけて、彼女が壊している事にも戸惑っていた。

 もちろん、荷物を自分で壊した癖に、
 一方的に運び方が悪いと言ってくる事に、怒りさえも感じていたが、
 必死に講習通りの対応をしようと、心を落ち着かせていた。

「お客に何を言っているの?あんたじゃダメよ!
 さっさと上司に連絡しなさい!わかったァ?
 あ。な。たが。割ったって、早く連絡しなさい!早くよ!!」

「はい、わかりました。少々お待ちください。」
「。。0。。ピッ。」「こちらは、クレーム対応センターです。」

「伝票番号〇〇〇〇の藤ヶ谷様です。
 すみません。商品の破損の件で対応をお願いします。」

 小さな女の子なので、冷静に見れば怒ることでも、
 怖いお兄さんでも無いのを思い出して、講習通りの対応をしていた。

「わかりました。それでは、お客様に変わって下さい。ピピピ。」
「すみません。連絡いたしましたので、続きはコチラでお話ください。」

 この会社では、全ての対応がマニュアル化されているらしく、
 クレームに対して謝るのでも無く、何かを約束するのでもなく、
 対応部署に連絡を入れて、全てを任せるようになっていた。

「貸して、もおぉお、あなたが割ったのにぃい。あなたが悪いのよぉお。」
「。。。」

「藤ヶ谷に変わりました。もぉお商品が。。商品がデスヨォオ。
 見たら壊れていたんですよォ。わかりますか?壊れていたんですよ!!」

「最終試験は、深夜1時に〇〇公園へ向かってください。
 現地に着くと、博士からの連絡が入りますので、
 あとは、彼の指示に従って試験を行って下さい。ピッ。。。」

「もお。わかったわよ。。わたしも悪かった。はい、すみません。
 もぉすみませんでしたぁ。ごめんなさいぃい。」

 勝手に荷物を床に叩きつけた彼女が悪いはずだが、
 電話先の相手は要件を言うと、すぐに電話を切ったので、
 何も言わない、何も聞かない相手に向かって、理々杏は謝っていた。

 そんな一人芝居が終わると直ぐに電話は返却され、
 何も無かったように、申し訳ない顔で理々杏が謝ってきた。

「ありがとう、聞いてもらったからいいわ。ごめんね。」「あっ。」

「荷物をありがとう。私の手が滑ったみたい。はぁ。ダメねぇ。」

 配達先に変な人が多い事を知っているこの配達員でも、
 目の前で荷物を壊してクレームを言う女の子には戸惑っていたし、
 その事で少しは嫌味を言いたくなっていたが、

「えっ。。あ、はい。。ありがとうございました。」

 電話を取った途端に謝り始めた女の子に何か言っても、
 リスクばかりが多そうなので、素直に謝罪を受け入れていた。

 。

 もちろん理々杏は部屋に戻ると、
 すぐに壊れた音がした荷物を開けていた。

「ガサガサ。ゴソゴソ。。バツン。バギ。ビリブリィイイ。。バビぃい。」

(荷物ってなんだろ。。クロぉお。変なものじゃないよねぇ。)
(まだ戻って来れると思うけど?早く普通。。)(そうじゃない!私。)
(だからさぁ。正義っていうのはね。。)(せいぎぃいい。正義よォ。)

 そのダンボールを開けている理々杏の顔は、
 大好きな物を取り出す時のように、狂気まで混じった笑みを浮かべ、
 カッターやハサミを使わずに、指先をダンボールに突き刺し、
 そのまま力任せに、その網目の入った厚めの紙を引き裂いていた。


 連絡①
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