夏目の日常

連鎖

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見えざる手

弁当屋③

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 家に帰ってきた夏目は、なにかを飲んできたように顔が赤らみ、
 日に焼けて少し火照って赤らんだ身体で、
 いつもより遅い時間に帰ってきた。

「ガチャ。た。だいまぁぁああ。ハァアアア。今日も熱かったわぁあ。」
「おかえりなさい。むうぅう。むうぅう。むむぅうう。」「ん?」
「むぅうう。むうむぅう。」「ちゅっ。」

「ただいま戻りました。夏目さん。」
「もおおぉ。逆なんだから、海斗くんからでいいのよ?
 はい、おかえりなさい。海斗くん。」

 珍しいというのか、最近は暇だと言うのか、
 今日は、海斗が部屋で夏目の帰りを待っていた。

 こうやって、少しだけ遅い時間に夏目が帰ってきたのも、
 海斗からの連絡があったので、すこし他の場所で時間を潰していた。

「ハァァ。疲れたわぁあ。ふぅう。
 遅く帰って来てって、カイトぉ何かあったあァ?」
「えっと、しょ。。。食事を作ったから、一緒に食べよう!」

「本当に?」「こ。。こっれ。。」

 海斗が出してきた料理は、一見すると簡単に作られたように見えるが、
 細部にまで気を配られていることに気づいたらしく、

「ぐい。ちゅうぅう。うれしぃい。本当だったのぉお。」

 自分のことを思って、一生懸命作ってくれたと感じたのか、
 すぐに抱きついて夏目はキスをしていた。

 。

 夏目が作っていた料理を置いている可愛らしい食卓の上には、
 海斗が手作りをした食事が置かれ、二人の夕食は楽しく終わっていた。

「カチャカチャ。海斗くんも、出来るようになったのね。すごいねぇ。」

 さすがに片付けはさせたくなかったらしく、夏目が食器を片付けていた。

「あ。。キョロキョロ。頑張ったんだよ。俺だって。できるんだっ。」

「じゃぁー。。シャジャァア。。。カチャカチャ。。凄いよカイトぉお。
 カッコイイのに、料理まで出来ちゃうなんて、
 お姉ちゃんも、惚れ直しちゃうよ。うふふ。チュ。」

「あァァァ。。アハハ。キョロキョロ。いやぁあぁああ。
 ううん。頑張ったんだ。頑張ったんだよ。あは。アハハハハ。」

(ししょぉおお。流石です。さすがは、ししょぉおお。最高ですぅ。)

 夏目の喜んでいる姿が嬉しいのと、
 やっぱり好きな人から褒められる言葉は、
 他の人から言われるのとは違って、とても嬉しかった。

 。

 夏目の店から逃げ帰る事が増えた海斗が、先輩に相談を始めていた。

「最近、夏目さんが、色々と、えろっぽいんですぅう。
 心配なんです。今も。。はぁああ。夏目さぁアン。まさかぁあ。フゥ。
 み。。見えちゃっています。あ。。新しい男が。あ。。近いイィ。」

 もちろん、夏目がアルバイトの日には、
 店のライブ映像を仕事中に見ているようなストーカーが呟いていた。

「奥様には、奥様の考えがあるんだよ。
 最近は暑いし、あの程度の服装なんてよく見る格好だ。
 気にしないでやらせてあげればいいと思うぞ。あはっ。あははは。」

「アレ?そういえば、師匠?あの。。シショォ?」「なっ。。なんだ?」

「最近は、ババアとか言わないんですね。
 ばばあとか、バアサンとかも。そういえば、言わなくなりましたよね?」
「はあっ?なぁああにを、言っている?奥様は、奥様だろォオオ!」

「オクサマ?そう言えば、言い方を変えたけど何かあったんですか?」

「別に変じゃないよなぁああ。アハハ。そうだろぉ。ばばあなんてなぁ。
 大事な後輩の奥様に、そういう言葉で呼ぶなんてオカシイだろぉ!」
「そう言われるのは嫌だったんで。。でも、何か変ですよ?」

「変じゃねえよ。いいか?ぜんっぜん。普通だからなぁ。」
「そう言えば最近ですよね。そうやって呼ぶようになったのって。」

「アハハハ。そうかぁ。。そうだよなぁ。じゃあ、ば。。ばあぁあ。
 バアサン。あっ、アハハハハ。そ。。そう呼ぼうかぁあ。あはは。」

「それは嫌です。困ります。それは、止めてください。」

「イヤ。。ダメだろぉお。あはは、ダメだ。それは出来ないなぁ。」
「ならイイですが、それ。。いつからだっけ。。うぅうん。いつ。。」

「バン。。それよりもだぁあ、奥様と何かあったのかぁああ?」
「先輩が、言い方をかえたのって。。」
「バンバン。よし、なんでも聞いてくれ。何でも相談に乗るぞ!
 よォおっし、何が聞きたいんだァ。アハハ。奥様が何かしたのかな?」

 。

 この前の残された映像を見せた時に、あの事もなんとか出来ないか、
 こういう映像や事件を見慣れた山崎に、海斗が相談をしていた。

(あれから、そう言えば、それから少し時間がたってから変わったっけ?)

 海斗が最初気になったのは、夏目の事を「ババア。」とは呼ばなくなり、
 奥様や夏目さんという呼び名になり、
 気が緩んだ時なのか、それとも、色々な事を考えていたのか、
 夏目様と呼んでいた時には、流石に海斗でもドン引きしていた。

 あのいつも自信たっぷりで、ふざけた顔をしている先輩が、
 顔面蒼白になって、何かに焦っているのか、突然饒舌に話だし、
「俺の最近行ってる店の、夏目女王様の事だ!」という、
 絶対に知られたくない秘密を大声で暴露していた。

(それが理由だから、なっちゃんの事を「バアサン。」「ババア。」
 と言えなくなったのはイイけど、師匠の趣味。ハァ。いいかぁ。

 色々あるよなぁ。師匠は、もっと強い男だと思っていたんだけどさぁ。

 女王様。アレ?女王様って。。うぅうん。)

 もちろん、相談の結果は、事件には出来るが、
 夏目さんへの負担が重いので、本人が気づいていないのなら、
 全て海斗がしていたと、腹を括って受け止めろという答えだった。

 そのことに関しては、海斗としても反論できなかったので、
 素直に山崎の提案を受け入れていた。

 。

「九月下旬なのに、まだ暑い日が続いていると言ってもでスよぉおお。」
「ああ、たしかに暑いよなぁ。まだ暑いよなぁ。あっついなぁあ。」

「それでもデスよぉ。ほら、見てください。
 コレ。。コレですって!この格好で外を出歩くンですよ。
 どうして、あんな格好をするんですかぁあ?」

 今も覗いているスマホのライブ映像を拡大して、山崎に見せていた。

「そぉおかぁ?普通に見る格好だろ?
 それよりも、お前が、あんな変態衣装を着させて、
 楽しむのが、いけないんじゃないのぉお?全部お前が原因ダロォ?」

「あ。。あれは、しっ。。。。しいしょうとぉお。
 マスターに、アイコさんまで、了承したんですよ。違いますかぁあ?」

「あはは、あれは悪かったが、普通の格好も入っていたよな?」
「ちっ。。違います。ありませんでした。何も無かったですぅ。」

 海斗の目が色々と踊っているので、
 どっちが嘘を言っているのかはわかりやすいが、

「それは悪かったから、落ち着けって、
 そろそろ寒くなるから、別にほっとけばいいって、
 奥様が機嫌が悪くなるのもイヤだろ?違うか?嫌だよな?」

 大人の師匠が素直に謝り、自分の話題から上手く逃げていた。

「ぼ。。ぼくは、しっ。。心配なんです。心配なんです。
 あの可愛い夏目さんが、はぁああ。夏目さんがぁあ。もしかしてぇ。」

 もちろん、海斗の頭の中でぐるぐる回っているのは、
 夏目が犯され、壊され、何度も汚されていたあの映像に、
 泣き喚き、悲鳴を上げ、止めてくれと叫んでいる、
 美しい彼女の泣き顔と声の記憶だったらしく、

 そんな記憶と同じように、
 今も目を離した隙に、誰かに拉致され、何処かに監禁されてしまい、
 奴隷や家畜のように、夏目が調教されている姿を妄想しているらしく、
 痛いぐらいに肉棒が膨らんでいるのが、ズボンの上からでもわかった。

「まあ、考えすぎだって、夏目さんが、どうにかなるわけないし、
 ここは日本だぞ?安全なぁ日本。わかってるか?カイト。」

「あ。。あんなに、ハァハァ。夏目さん。夏目さんがぁあ。
 いやぁ。ハアハア。もしかして、今だって。。そうですよ。今もぉ。
 この映像が全て録画映像でぇえ。い。。今もですってぇ。」

「そうだなぁ。そうかもしれないなぁ。」「は。早く。た。。助けに。」

「あっ。それよりも、お前のヤリチンを、治した方が良くないか?
 奥様が、ずっと好きでいてくれるってのも、甘い考えだと思うぞ?」

(ハァアアア。こういう格好いい顔で生まれたらぁ。
 もし、こういう身体で生きられたらぁあ。羨ましいよなぁ。)

 海斗が何を考えているのかなんて、山崎としては丸わかりなので、
 相手への嫉妬もこもっている答えを素直に口に出していた。

「ぼ。。ぼくが。。うぇええ。びえぇええん。僕が捨てられるぅ?
 夏目さん。ぼ。。僕がぁああうぇぇっん。ぼくがぁあ。
 なあっちゃァあん。いやだァああ。ぜったい。絶対にいやらぁああ。」

 無自覚にナンパして、無自覚にエッチして、
 しかもトラブルという、トラブルが起こっていない海斗に、
 山崎が普通の一般家庭で発生する現実を話したダケだが、
 その事に気づいていなかった海斗が、喚き始めていた。

(まあ、ベタ惚れの奥様が、お前を嫌いになるとは思えないが、
 それでもなぁ。ハァアアア。何故か。イイ男ダヨナァ。あはは。)

「ぢッじょぉおお。ぼれ。。ぼれが、ぼぼぶればぁああ。イヤダァア。」

「抱きつくな。俺に、そういう趣味など無い。ぜんっぜん無い。
 まずは、泣くな!泣くのをやめろォオ。
 やめたら話してやる。だから離せぇええ。痛いって言ってるだろぉお。」

 確かに、山崎がホモの噂など、
 死ぬほどされた事はあるし、本当に無いと言いきれないが、
 カッコいい海斗の泣き顔に、ドキドキしているのは仕方が無いと、
 子供や家庭まで持っている男の常識は答えていた。

「ばびびばびバビばぁ。うぇええ。ぼぼ、ばいべべばべん。」

「あ゛ァァァ。面倒くさいなァあ。お前、見た目だけはいいんだから、
 何でも普通にやればいい、何でも普通にすれば女は喜ぶんだよ!」
「シショォオオ。なっ。。何をすれば、なっちゃんがァア?」

「ハァア。まあ、いい。簡単なのは料理でもしてやれ!」

 山崎は、よく見る地上波の時間稼ぎ映像や、
 暇を持て余したアイドルが話す趣味について、つい口を滑らせていた。

「包丁も触った事がありません。絶対に無理です。ムリィイイ。
 料理なんてできませぇえん。イッつも。なっちゃんガぁあ。」

「ハァ。まあ、普通は、そうだなぁ。。最初は料理教室でも。。。」

(マズイ。まずい。コレは、言ったらだめだったぁあ。あはは。ハァ。)

 料理教室で教わればいいと海斗に説明している途中で、
 自分が口にしたことの意味に気づき、
 突然焦った顔をして慌てて口を覆い、無理やり話の続きを止めていた。

「あっ。。そっかぁ。料理教室ですかぁあ?
 そうですよネェ、料理教室で。あはは。そうですよねぇ。師匠。」

「そうだよ。料理は、料理教室でな。。。アハハハハ。」

(あはは、そうなるよなぁ。はぁ。料理教室って、
 日中の昼間だと。ハァア。先生も。。違うだろ?違わねえなァ。
 年上。。いや、そうだよなぁ。もういい、もういいかぁ。)

 山崎がまずいと思ったより先に、海斗が食い気味で納得してしまい、
 教室の先生が、特殊な趣味がない同性であるといいな、
 教室に来る主婦も、枯れた女の子だけだといいなと、全てを諦めていた。

「それより海斗、今度の仕事に女手が必要なんだ。誰かに頼めないか?
 日雇い程度のバイト代は出すから、どうだ?」

「また。夏目さんですか?」

「別に、お前の知り合いなら、誰でもいいから連れてきてくれ。
 内容は、女子大学生と一緒に生活をしてくれて、
 何か変な事が起こらないかの確認だけだ。」

「確認だけで、いいのなら。。。」

(うぅうん、あの子。そうだ、あの子かなぁ。アッチがいいかぁ。
 最近ウルサイし、アレかなぁ。アレも暇だよなぁ。あれかなぁ。)

 こうやって、色んな女の事を考えているのが浮気だと、

(お前さぁ。どうして色々と考えられるんだよ。はぁああ。カイトぉ)

 指摘したい気持ちも山崎にもあるのだが、これが海斗だと諦めていた。

「少しだけ早いが、朝の六時から夜の九時までの拘束で◯万を出そう。
 そうそう、依頼人は、お前の後輩だぞ、サークルの後輩だってよ。
 俺とお前は、バックアップだ。変な事が起きれば助けるんだぞ。」

「たっかいですねぇ。はぁあああ。社長。
 時給を上げてくださいよォ。僕のお給料もぉお。お願いしますぅう。」

「高いんだよ。気にしちゃ駄目だ。若い女の時給は、ゲロ高いんだよ!」
「デモぉお。デモですよぉお。ジャア、ボーナスでもぉお。ボーナスぅ。」

「そうだなぁ。◯万は、お前の紹介料込でいいぞ。
 相手に渡す分はお前に任せる。好きにしてくれ!それでいいだろ?」


 弁当屋③
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