夏目の日常

連鎖

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見えざる手

日常の変化②

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 海斗の手の平には、さっき出していた生暖かいザーメンがのっていた。

「ベタ。」「もおぉおカイトぉおお。またなのぉ?またぁあああ。」
「ベタ。アハハ。ぬりぬり。ベタ。ウフフ。あはは。うふふ。ベタベタ。」
「うぅうん。もぉおぉお。どうしてよぉお。はぁ~。なぜぇええ?」

 これも、最近になって始まった行為で、
 海斗は自分で出したザーメンを夏目の肌に直接塗っていた。

 その行為は、あの旅館で夏目に襲いかかっていた男達が、
 彼女にしていた行為を真似ているのか、
 それとも、オスが片足を上げて縄張りを主張している時と同じように、
 彼女が所有物だとマーキングしているのか、
 普通の女が与えられる行為としては、
 スグに彼がキライになって逃げ出すような事を夏目に行っていた。

「ハアハア。ハアハア。なつめぇえ。お前は、おれがぁあ。ペタペタ。
 俺の物ダァ。誰にも渡さねぇええ。俺んだアアアぁ。ペタペタ。」

(コレで夏目さんは、僕のものだァあ。コレでひとつにぃ。
 ここだって、ここも、ここだって。誰にも渡さない、この身体は。
 全部俺の。アイツラは、違う。俺のだ。俺んだぁああ。)

 あの旅行のことを覚えていない彼女は、
 なぜ彼がこの行為をしているのか理解できないし、
 普通の女の子を相手にしたら、彼が絶対に嫌われるような行為を、
 なぜ自分にしてくるのかもわからなかった。

 そんな彼女が心の奥で感じているのは、どういう気持ちなのだろうか、
 対応に困っているという素直な気持ちなのか、
 それとも、何か特別な感情が渦巻いているのか、
 夏目の顔は、とても穏やかな顔をして彼の行動を見つめていた。

「かいとぉお。ちょっと、カイトったら。カイトぉおお。」「ナツメぇ。」

 この行為を何回も見続けているうちに、今では落ち着いているのか、
 夏目は困った子供を見ているような顔で声をかけていたが、
 海斗の興奮は収まらないらしく、その行為を止めなかった。

「もぉおお。またあァ。」「ナツメぇええ。オマエワァア。」
「ハァ。。イイわね。ドカン。」「うぅぅぅ。ふぅうううう。ウゥうう。」

 夏目なら、海斗が出したザーメンを身体に塗られる行為だって、
 アナルを見ると、異常に興奮する反応だって、
 それ以上の行為が起こったとしても、全てを許す自信があった。

 しかし、自分はすべてを許してあげられるが、
 他の相手にしたらまずいと思ったらしく、
 腹筋が割れた彼のお腹を、軽く踵で押し上げていた。

「ちょっと、かいとったら。カイトぉおお。起きなさい。
 目を覚まして。また、変になっていたわよ!!!カイトォオオ。」
「うッ。。。ウゥう。」

「もぉお。正気に戻ってよぉおお。わ。。たしはぁああ、
 あ。な。。ただけの物なのよ。あなたの所有物よ!イイ?わかったぁ!」

 二人っきりなら何をされてもいいし、特別な行為であっても我慢するが、
 流石にエッチな行為に狂った彼を、
 このまま見続けるのは我慢できなかったらしく、
 少しだけ怒ったような顔をして、彼を睨みつけていた。

「イッツゥウウ。。あっ。。すみません。夏目さん。イテテテ。
 また。変になっていましたか?イテテテ。ウゥウウ。
 僕って、変になっていましたか?ご。ごめんなさい。夏目さん。」

 夏目が睨んでくるのは怖かったが、
 気を緩めていたせいで踵がみぞおちに入り、
 その痛みに思わず息を詰まらせて、うずくまろうとしていた。

「あなたは、普通よ。大丈夫。なんでも無いから、普通よ。
 大丈夫。あの時と一緒なだけ。さあぁ、続きをお願い。
 少し冷めたし、これから私を好きにしていいからね。うふふ。」

「また。夏目さんに変な事をしていましたか?また。変でしたか?」

(どうしてだろう。あの映像のせいなのか?あの行為が忘れられない?
 まさか、あれをもう一度?また。あんな行為をしたいのか?
 あんな事をしたのか?本当は?俺の気持は?オレって変なのか?)
 
 目の前で寝ているのは、全裸で寝ている夏目だけ、
 部屋にいるのも自分だけ、お尻や背中がヌラヌラと濡れた感じは、
 ローション以外に、明らかに違う物が混じっていた。

(あれ。あの映像って。。こんな感じ。。えっ。。これって?)

 目の前で海斗が見ている光景は、
 今となっては、二度と見ることのできない映像によく似ていて、
 その映像は、今でも心の奥で色褪せることなく残っていた。

 しかも、その悲惨な光景を、
 自分が再現しようとしているのではないか、もう一度見たいのかという、
 根拠のない焦りが海斗の胸を締め付けていた。

「別に襲ったっていいわよォオ。もちろん、犯してもいいわァ。
 だって、私のすべては。。あ。。な。。た。。の。。ものよ。
 ウフフフフ。ぜぇええんぶ、いいのよ。さあ、好きにしてぇええ。」

 最近の海斗は、性的に興奮すると、
 いや、あの旅行から、違う?この行為をするようになってから、
 それじゃなく、あの時から?なぜか暴走することが多くなっていた。

 もちろん、二人っきりの時に暴走するのなら問題ないかもしれないが、
 彼女としては嬉しいことなのだろうか、とても穏やかな顔をしているし、
 向きによっては、どこか嬉しそうに笑っているように見えた。

 。

 あの旅行から帰ってきた後で、海斗が先輩から言われていた。

「そうだなぁ。。まずは酒を克服しないとダメだぞ。」
「克服?こくふくって、どうしたらイイですか?」

「ババアも、お酒が飲めないって感じじゃないようだし、
 お酒が好きなんだろ?好きなら飲ませてヤレばイイ。
 沢山飲ませて、飲んでも正気が保てるようにしてやるんだよ。」
「だっ。。大丈夫でしょうか?」

「普通の女が逃げられないのは、酔って動けないからで、
 酔っていないのなら、あんな行為をされたら逃げたと思うぞ?」

「そうだ。そうですよね。シショォオオ。それなら、あの時だって。。
 バンバン。有難う御座います。ししょぉ。そうですよねぇええ。」

「イテテテ。痛えから殴るな!わかったな。ソノうでェエエ。」
「アハハハハ。バンバン。そうですよ。師匠。アハハハハ。バン。」

「ソレだよ。それえぇ。その手が痛いって言っってるんだろぉおお。」

 あの旅館で逃げられたかどうかは別として、
 お酒が入ると、誰かに抱きついてキスをするのは問題だし、
 酔って記憶をなくすのも状況によっては困るので、
 少しでもその癖を直してもらいたいと、昔から海斗も思っていた。

 その方法にもなると思い、多少お金はかかるが、
 先輩が言う通り、海斗は夏目に毎晩お酒を飲ませていた。

 そうして数日が過ぎて、少しづつ夏目の酔わない酒量が増えていくと、
 師匠が突然何かを渡してきた。

「ドン。。。で、これだよ!マスターからの差し入れだからなぁあ、
 大事に飲めよ!!スッゲエ高い酒だからな。はぁあああ。俺も一口。」
「ま。。マスターまでぇええ。ウゥウウ。ウウゥ。」

「でもなぁ。。チビチビ飲めよ。チビチビなぁあ。たっけえからなぁ。」
「これって。。。アレですよね。」

「ああ、あの酒だぞ。。知っているよな。たっけぇええのダカラな。
 これなら、少しだけ。ジワジワ増やせばいいし、口当たりもいい。
 悪酔いなどしないから、奥様とユックリ楽しんでくれ。」

「しっしょぉおおお。うぇぇん。。ガシッ。あ。ありがとうございます。」

「そ。。そういうのは、なあぁああ。。悪かった。お。俺も悪かったな。
 海斗。本当にすまなかった。オレも悪かった。本当にすまない。」

「有難う御座います。お酒って高いんですぅう。ウゥうぅうう。
 その事で、なっちゃんにも怒られていたんですぅう。ウゥうう。」

「ウゥウウ。許してくれえぇぇ。本当に悪かったぁああ。許してくれぇ。」
「シショォオ。ウゥウウ。あっ。有難う御座います。こ。これでぇええ。」

 山崎も嬉しさと感動で顔を真っ赤にしているらしく、
 泣きついてきた海斗の背中を叩いて、お互いに慰め合っていた。

 。

 いつものように部屋に入って挨拶を済ませ、その後の食事も終わった後、
 海斗は山崎から受け取ったお酒をテーブルの上に置いていた。

「夏目さーん。ドン。今日は、いいお酒を貰ってきたんですよ。えへへ。」
「へぇぇぇ。じゃあ、売ってきて。。これなら、生活費。。フゥ。家賃。」

「いや。そうじゃなくて。。これは、夏目さんのためにデス!」

「かいとぉお。これって売ればぁ、数万円位にはなるよねぇ。
 アレ?んっ。ぐい、それ以上の?エェエエエ。これってぇえ。」
「グイイ。夏目さん。ちょっと返して!」

「あっ。ああぁ。。今度は箱よ。。。箱。はこ。。はこよ。
 それも貰ってきてね。今度は箱も貰ってくるのよ。ハコヨ。
 箱付きならァ。アハハハ。いいわァ。それならぁ。貯金もぉ。アハ。」

「カシュ。。。ドン。。トクトク。ゴン。。。。さあ、コレを飲んで!」

 夏目が一目見ただけで高価だと気づいたお酒を、
 もっと調べようとスマホをかざすと、画面に表示された映像が、
 思っていた以上に高価で貴重なものであることに驚いていた。

 しかし、売るつもりなどなかった海斗は、
 もらったお酒の値段を確認して、喜んでいるだけの夏目に怒ったらしく、
 スグにお酒の封を開け、目の前にあったグラスに注いでいた。

「ちょっと、ちょっとォオオオ。どうして、開けるのよぉお。
 ハァ。かいとぉおお。知ってる?このお酒ってさぁ。コレよ。これぇ!」

「くっ。。。訓練です!チョット、夏目さん落ち着いてぇええ。」
「あぁ゙アアア?」

「夏目さんは、もっと、お酒に強くなって貰います!!(モット)です。」
「ジロッ。キッ。。」

「しっ。。仕方が無いんです。セッセンパイがァア。。です。
 先輩が、しろって。せ。せんぱいが。。です。お酒は、先輩が。。」

 海斗も、夏目に怒られる前から、
 このお酒が一杯で、給料の大半が飛ぶほどに高価なことは知っていたし、
 店の子がボーナスだと、喜んでいる姿を何度も見て値段を知っていたが、
 今回は、夏目の癖を少しでも早く直せればいいと思っていた。

 しかし、さっきまでお酒を見て嬉しそうに笑っていた夏目が、
 険しい顔で自分を睨むように見つめてくるので、
 海斗は本気で怒っていないことを願って、先輩に謝っていた。

「山崎ね。。ふぅう。まあ、いいわぁ。。山崎が言ったのよね?」
「は。。ハイぃい。ハイはい。」

「まあ、いいわ。ジュル。。。うふっ。。コクコク。うぅぅぅ。
 ふぅう。オイっしぃいいい。アハハハ。うふふ。イイわぁあ。これぇ。」

 怒っていた彼女も、お酒が嫌いなわけではないし、
 高級なお酒の封を切ったら、その価値が瓶にしか無い事を知っていた。

 そんな夏目にとって、中身はむしろ邪魔でしかなく、
 高級酒特有の歴史や重みを味わうことも、
 口に含んだ時の余韻や膨らみを気にすることもせず、
 グラスを口に近づけると、やけ酒のように中身を一気にあおっていた。

 もちろん、ただでもらったお酒の瓶が高く売れるので嬉しかったが、
 それを彼に知られたら、今すぐ飲むのを止められてしまいそうなので、
 その気持ちを悟られないように注意しながら、
 怒ったような不満そうな顔で、美味しいお酒を楽しんでいた。

「夏目さんは、お酒に強くなって貰うために一杯だけ。。嫌で。。も?」

「ゴクゴク。。プはぁあああ。。くぅううう。おいっしぃいいいいいい。」

「ちょっと。。ちょっと、夏目さん?ユックリ。。高級な。。。
 ゆ。。ゆ。。っくり、の。。。。のん。飲んでもらえ。。。ますぅ?」
 
「ゴクん。うまいぃ。はぁ。。ゴン。次よ!つぎぃい。ゴクゴクゴク。」

「ちゃんと、ゆっくり。。。え?。。。えぇえええ!。なっちゃん!!」

 海斗は、高級酒をコップに一杯だけ用意していたが、
 それを夏目が、夏の暑い日に子供がジュースを飲むように、
 少しの罪悪感もなく、深い余韻を味わうこともなく、
 まるでビールを一気に飲みするかのように、飲む?味わう?
 流し込む彼女に戸惑っていた。

「(ウフフ)チュ。。。。。チュウうぅううう。フゥウウ。チュウうう。」
「ブブ。ブブブウゥ。ぶぶぅぅブブ。ブブゥウウ。」

 そんな彼の驚いた顔に何かを感じたのか、
 彼女は突然顔を近づけ、慌てた彼の唇に自分のを重ねると、
 口の中に溜めていた液体を、一気に流し込もうとしていた。

「ギュ。。」「ぶっぶぅううう。」「チュルン。じゅる。ぺちゃぺちゃ。」
「ふぅ。ゴクン。ふうふう。ゴクゴク。ふぅふうぅう。」「ジュルル。」

 もちろん海斗も、
 これ以上彼女を酔わせてはダメだと、口を閉じて抵抗していた。

 しかし、しっかりと抱き締められた身体は、
 何故か抵抗をやめて動かなくなり、
 その後、彼女の華奢な指先が自分の鼻を摘んできたので、
 思わず呼吸をしようと軽く口を開けてしまった。

 その瞬間、夏目の舌が海斗の口内に滑り込み、
 口の中を、まるでひとつの生き物のように這い回ってくると、
 耐えきれなかった彼の身体が自然に反応し、
 舌を絡ませ、唾液を交換し、そうやって熟成された液体を、
 次々と注がれてくる甘美な液体を、彼は何度も飲み干していた。

 。

 流し込まれた液体を飲んだ後、海斗は酔っ払ったようで、
 寝ているのか起きているのかもわからなくなり、
 不思議と心地よかったが、今思い返すとその記憶は曖昧になっていた。

「こうでしょぉ。おかいとぉおお!。ウフフフフ。あなたってぇえ。
 こうよねぇ。ココが好きなんでしょぉおお。アハハハハ。」
「ハアハア。な。。なつめさん。。フウフウ。ちょっと。。なっっつ!」

 彼が見ているのは、高級なお酒の影響なのか、
 それとも旅行の映像が、心の中で混ざっているのかは分からないが、
 ボストンバッグに入っていた衣装を着て、手には鞭や紐、玩具を持ち、
 自分に罰を与えてくれる夏目が目の前に立っていた。

 。

 さっきの夢は願望なのか、それとも救いの記憶なのか、
 その先も続いていた。

「今日わァ。。皆でタップリ楽しみましょぉ。ねぇ。。カイトオオォぉ。」
「。。。は。。っ。。はいっ。。」「いいへんじねぇ。。さァ。おいで。」

 この時の夏目は、まるで何もかもを知っているかのような目をしていた。

 もちろん、あの旅行で起こった悲劇の理由を、
 全て彼女に押し付けようとしていることや、
 この苦しみから救ってほしいと、自分勝手に願っていることが、
 彼女にはすべて伝わっているように感じられた。

 しかし、そんな身勝手な海斗は、突然歓喜の涙を流していた。

 それは、目の前にいる女神のような夏目に懺悔したことで、
 彼女が分け隔てなく救いの手を差し伸べ、
 穏やかな笑みを浮かべて彼を見つめてくれたからだった。

 その優しく包み込むような笑顔は、海斗の心を解き放ち、
 全てを許されたような気持ちにさせ、彼の壊れた心を癒してくれていた。

「はい。」
「全て。ほらほらぁ。いいのよ。私が全部受け取ってあげる。
 海斗は全てを吐き出したらいいの。ワタシが受け止めて上げるからね。」
「お。。お願いします。」
「いいわぁ。スリスリ。とぉおおっても。熱い。ここも救ってアゲル。」

 彼女の指先が身体に触れるだけで、全身が震えるように歓喜し、
 敏感な場所に近づいてくる指先が、自分の心を的確に刺激していた。

 。

(そういえば、これ以降。。そういえば、あの夢を見てから何故か。。)

 夢の中で海斗が思い出しているのは、
 映像の中の夏目と同じようになっている自分と師匠の姿、
 そして、椅子に座っている夏目の前で土下座をしている全裸の女だった。

 その女は、嬉しそうに歪んだ顔で夏目の生足を舐め回していたし、
 夢の中では、その女が自分になっている場面まであった。

 残された一人は、夏目の隣に立っている自分と似た格好の男で、
 自分よりも引き締まった身体を持ち、
 彼女の番人のように、女神の横で微動だにせず立っていた。

 。

 夢なので、自分を俯瞰して見ている事まであるのか、
 今はカメラを覗いて何かを撮影していた。

「アハハハハ。ほらほらぁあ。もっとしなさいよォ。ウフフフフ。
 さあ、もっと楽しい時間を過ごしましょぉお。アハハハハ。ウフフ。」

 自分を罰する為に舞い降りた女神の笑い声がして、
 その対象に嫉妬まで感じているが、
 そのことでさえも、ご褒美に感じている自分がいた。

(じゅり。。ハアハア。。あのおしり。ハァハァハァ。あのご褒美ィイ。
 夏目様。なつめ様ぁあ。今度は、この豚に。哀れな豚にぃい。)

「ブヒブヒぃいぃい。ブヒヒぃいぃい。ブヒィいいいい。」

 この夢があの旅行の続きなのか、
 それとも自分が作った懺悔の記憶なのかわからないが、
 夏目を愛している気持に少しの陰りも無かった。


 日常の変化②
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